第6話 魔人との遭遇

 長い夜が過ぎ僕は目を覚ました。

 上半身を起こし体を伸ばして全身の筋肉を引き延ばす。周囲を見渡すと、既にメリナと兄さんは起きていて夕食の準備をしているが、アレスは豪快ないびきをかいて寝ている。こんな爆音が僕の隣で寝ていたのに起きなかったのは、我ながらすごく深い眠りだったんだろうなと思った。

 起きて一番のおはようをする前に、僕に気づいたメリナが先におはようを言ってきた。

 「おはようロードよく眠れた?」

 「うん眠れた。メリナは?」

 そう聞くとメリナの顔はすごく不機嫌になってアレスの方を睨んだ。

 「アレスのいびきがハエみたいに鬱陶しく鳴り響いていたから、時々目が覚めてしっかり眠れなかったのよ」とアレスのわき腹を足で何度も小突いていた。

 メリナは相当怒っているようだし、とばっちりを受けないようにこっそり離れた。

 続いて鍋で具材を煮込んでいる兄さんのもとへおはようを言いに行って、今日の朝食は何か尋ねた。

 「あんまりガッツリ食うと動けなくなるから今日の朝食は肉が入った卵雑炊だ。そろそろ出来上がるからアレスを起こしてくれ」

 「はーい」

 僕は無防備なアレスにいたずらをしているメリナのもとへ向かった。すでにメリナは怒ってなかったけど、「このでっかいハエに餌をあげるからそこら辺にいる虫を取って来てくれない?」と誘ってきて何の反応も示さないアレスをおもちゃにして楽しんでいる。

 「ダメだよそんなことしちゃ。早くアレスを起こしてみんなでご飯にしようよ」

 「いい子ねロードは。そのまま大人になりなさい、決してこんな大人になってはいけないわよ」

 そう言い終えると、メリナは立ち上がって靴で顔を踏んづけ始めてようやくアレスが眼を覚ました。

 「ようやくお目覚めかしら。寝ている最中も他人を不快にさせるのねアナタは」

 アレスは目を開けるとメリナの足を伝って暗くてよく見えないが、スカートの中まで目に入ってきた。

 アレスはじっとしたまま返事をしない。ただ一点を瞬きもせずにじーっと見ていると、「どうして何も返事をしないの?」と踏みつけているのに、アレスが抵抗をしないのをメリナは疑問に感じた。

 「高貴なストリップって初めて体験したけど、影が邪魔でよく見えねえし俺は好きじゃねえな。もっと激しく目が貼り付けになるぐらいじゃないと……」

 感想を言い終えたアレスに待っていたのは、強烈なメリナの右キックだった。

 「死になさい」と凍り付くトーンで言っているが、その足はアレスを殺してしまいそうな勢いで何度も彼の頭を蹴り上げる。

 蹴りと次の蹴りの間の隙を伺って窮地を脱したアレスは、立ち上がると右頬が腫れあがり、鼻血が口元まで垂れてくる。

 「おー痛ぇ、そっちから見せてきたのに逆ギレかよ。こりゃ慰謝料5000ルーン出してもらおうかな」

 「もう最悪ッ!! ロードぉ~アナタもあの変態に何か言ってやってよぉ~!」

 見られたことは許せないが、落ち度は自分にあることを認めたくないメリナは、卵雑炊を食べている僕めがけて勢いよく抱きついてきた。

 自身の顔を体に擦り付けて泣いているメリナに僕はご飯を食べるよう提案した。

 恥ずかしさから少しの時間顔を上げられないでいたメリナも、僕の言葉を聞いてから自分の分を鍋からよそって隣で黙々と食べ始めた。

 一方のアレスは、食事が口内の血のせいで味覚が血の味しか認識してなくて、こんなにおいしい卵雑炊も仏頂面で食べることしかできないのは見ていて辛そうだった。

 「おいメリナ、今は仲間だから大目に見てやるけど、そうじゃなかったら魔物の餌にしてやるところだぞ」

 ヒィッ、なんて怖いことを言うんだこの人は。怒ったとしてもここまで徹底してやり返そうとすることに僕は恐怖を覚えて少しだけ兄さんの方へと肩を寄せた。

 それに、兄さんもアレスの許容できない発言に、「本気で言ってるのかお前? それは認められない発言だぞ」と苦言を呈した。

 「ハハハ! 何マジになってんだよお前ら本気でそんなことするわけないだろ。それに本気で殺る気なら何も言わずにぶち殺すさ!」

 笑顔でそう言うもんだから僕たちはアレスが危険性を秘めた人物であると認識した。特に兄さんは僕をあまり近くに置かないようにしようかと考えてもいた。

 「それならいいが……もしこの中の誰かを襲おうとするなら俺がお前を殺すぞ、いいな?」

 「お…、おう」

 兄さんの殺害忠告はアレスの身を震わせたようで委縮して詰まった言葉で反応した。

 これでひとまず変な気は起こさないだろうと思った兄さんは、「そのケガじゃこれからの戦いの邪魔になるから俺が治してやる」と言って回復魔法でアレスの傷を跡形もなく治してあげた。

 その驚異的な回復魔法の治癒力にアレスとメリナは空いた口がふさがらないようだった。

 兄さんの扱う魔法の中でもズバ抜けて凄いのが回復魔法で、その威力は死んでいる人以外なら時間がもとに戻ったかのようにキレイさっぱり回復させることができる。この魔法のおかげで小さい頃はよく世話になっていたと子供の頃を振り返る。

 「すげぇ! 何も痛くねえ、元の完璧なアレス様に戻ってやがる!!」

 「へへへだって僕の兄さんなんだよ! アレスにはできないと思うけどこのくらいは兄さんにとっては朝飯前だよ!!」

 「お前は何もすごくないのに威張んなよ」

 僕の兄さんが褒められているのを見るのは弟の僕にとってはとても誇らしく感じる。だから、アレスが何と言おうとも兄さんが称賛されている間はネガティブなことも気にならない。

 するとその時、轟音が木霊して森中に鳴り響いた。音を聞いた者はすぐさま警戒モードに入るが、僕一人だけパニックになって近くにいたメリナの服を掴んだ。

 「何だ今の音は!? お前らも聞こえただろ、一体どこから聞こえた?」

 「分からない。でも音の大きさからかなり近い距離からだと思う」

 互いに背を向けて周囲を見渡すが、依然として音の正体は掴めないどころか、四方八方からの音でどの方向から聞こえてくるのかさえ分からずに焦りを感じてしまう。

 「ここは鬱蒼と茂る森の中だ。遠くからだと音は反響して音源が分かりにくく、近距離だと音の反響による影響は少ない。だから、音の主はここから遠い距離にいる」

 メリナは兄さんの言葉に反応したけど、僕とアレスは言葉の意味わからずに「え?、え?」と戸惑いを見せた。

 「要するにこの音の主はまだ遠くにいるから強襲に備えて心構えをしとけってことよ」

 「ああなるほど!」と納得した僕たちは、音の主がいる方向を僅かに聞き取ることができた兄さんの指示に従って音の主のもとへと急いだ。


 歩いていると、時折あのけたたましい轟音が鳴り響きそれはだんだんと大きくなっていく。

 距離が狭まったことで気が付いたことは、それは生き物の鳴き声だということ。しかし、これほど大きな声を出せる生物は僕たちが知っている中では存在しない。つまりそれは、魔物の可能性が高いということだ。

 鳴き声の主が魔物であるという確信を得てからはより一層警戒を強くし、戦いに慣れていない僕とメリナは緊張と鼓動の高まりから息遣いが高くなる。

 「お前らただの獣にビビッてんのか? 情けないなぁ、そんなことでは兵士になったとしてやっていけないだろ」

 後方を守るアレスが後ろから僕たちの様子を楽しんでいるかのようにちょっかいをかけてくる。

 正直うんざりするほどウザイ。今から命を懸けた魔物との戦いなのに緊張感が全然ないアレスの言葉は、僕だけでなくメリナの士気も落としかけない。

 だから、なるべく反応しないようにだんまりを決め込んだんだけど、寂しがり屋のアレスは靴でかかとを踏んづけたりして注意を向けようと必死になろうとしているので、とうとう我慢の限界が来た。

 「うるさいッ! これから魔物との戦いだっていうのに遊んでいる暇なんてどこにもないんだから邪魔しないでよ!!」

 「そんなかっかすんなよ。もっと力抜いてリラックスぅリラックス~」

 屈んで肩を撫でてくる手を振り払っても、アレスは僕の体を親が子とじゃれ合う時のように執拗だ。

 兄さんにやられるならまだしも、僕をおちょくって馬鹿にした態度で接してくるアレスにしてやられるのはストレスがかかる。でも、兄さんもメリナも微笑ましい兄弟間の光景を見ているように穏やかな目で見守って間に入ろうとしない。

 「もうウザイからやめてよ~」

 「お前の緊張を削いでやってんだから気にすんな。それに急に魔物が飛び出してきても俺が何とかしてやるから」

 嘘だ、そんなこと信じられないと僕はアレスを見つめた。

 アレスの肉体は立派なもので背も大きいが、兄さんと比べたら一回り小さく感じる。これは別にアレスを卑下しているわけではなくて実力も経験も多い兄さんが警戒しているのに、この男は僕にかまって警戒のけの文字もない。

 そんな人に急に魔物が現れたとしても僕を守れるかが甚だ疑問である。

 しかし、僕の不安と期待は次の瞬間、同時に僕たちの目の前に飛び出してきた。

 歩みを進ませていた方向から魔物が飛び出して先頭にいる兄さんに襲いかかってきたのだ。

 「キシャアアアアアア!!」と耳をつんざく咆哮が僕たちに襲いかかる魔物であったが、兄さんが魔法で真横に投げ飛ばしたことで不意打ちを防いだ。

 「こんなに近くに来ていたのに気づかなかったぞ。……ふーむ、魔法で移動速度をあげているのか」

 魔物は大きく尖った角を持った魔物で、太い足の筋肉は力強さと速さを持ち味にしているのが見て取れる。

 大木に激突した魔物はすぐに僕たちを標的にしたようで、荒い息を立てながら後ろ足で地面を蹴ると足回りに緑色の突風ができた。

 「魔法だ……」と僕はその足を見て呆然と呟いた。

 魔物が魔法を使うことは知っていたけど、実際にこの目で見てみると、恐ろしくなって体が震えた。

 でも、僕はコリンのお墓の前で魔物と戦うって決めたんだ。こんなところで逃げるわけにはいかない。そう僕は心の中でかつて誓った誓いで闘志を燃え上がらせて、あの時と同じように右手に魔法陣を展開した。

 魔法陣を展開して備えは万全にした途端、魔物は僕たちにその恐ろしい角を向けて突進してきた。

 「は……」と魔物の脚力と風魔法が組み合わさった攻撃速度は、言葉を口にする前の段階で僕の脳裏に走馬灯を呼び起こさせるほどの速さだった。

 これは戦うというレベルではない。そもそも速すぎて 防御しようとしたら次の瞬間、僕はあの角の上で腹を貫かれているだろうし、受け止めようにも自信も力もない。

 戦いの間なのに力が抜けて体が地面に落ちていくのを感じながら僕は目を閉じてしまった。

 「調子に乗んなよクソ鹿が! 貫け!」

 僕の前に立ちふさがったアレスは、人差し指を上に挙げると魔物の地面から鋭く巨大な赤い氷の氷柱が現れて魔物を串刺しにした。

 「ぅらあッッ!!」と拳を横に振って雄叫びを上げるアレスを僕は尻もちの姿勢から見上げていた。

 魔法が消えるとズドーンと落ちた死体は凍っているようで血は凝固して体内から出てこない。

 「よくやったアレス。これで俺たちは兵士だ、町に行って軍に報告しよう」

 兄さんは死体を見やって確実に死んでいるか確かめている。

 「強い……口だけではないのね」

 「おう見たかメリナ? お前じゃ倒せないだろ、さっきも一歩も動けないでいたしな!」

 「初めてだったから緊張していただけよ。戦えないってわけではないわ!」

 「フーンそうか。でもな、一人だけ尻もちついてビビりまくっていた子供はだーれかな~?」

 アレスは尻もちをついて魔物の死体を見つめている僕の顔を覗き込んだ。

 唇を尖らせて目を見張らせ、両手で頬をスリスリしながら、「僕ちゃん今日は何しに来たのかな~? みんなにおんぶしてもらいに来たのかな~、ううん?」と腸煮えかえるような挑発を繰り返す。

 「むあああ!! これでもくらえぇえ!!」

 僕は人に使ってはいけないと、ここに来る時にキツく兄さんに言われていた僕唯一の魔法を使った。

 アレスは僕の拳を頬で受け止め何のダメージもないかのように振る舞っていたが、少ししたらアレスは突然の脱力感に襲われて僕から手を放した。

 「何だこれは、調子が悪いぞ。ロード、お前一体何をした?」

 よろめきながら近くにあった気にもたれかかったアレスは自分の身に起きていることが何であるか見当もつかなかった。

 「これが僕が一つだけの魔法だよ。僕が右手に力を入れるとこんな風に魔法陣が展開されて、この手で触れた相手の魔力を奪うことができるんだ! これを使えばアレスを戦えなくすることができるんだよ!!」

 「な、なんだと……? それなら早く俺の魔力を戻せ、気分が悪くて動きにくいんだ」

 息をきらして本当にしんどそうに見えるけど、今は僕を今までおちょくってきたアレスに仕返しする絶好の機会。簡単に魔力を戻してやるもんか。

 「ええーどうしようかな? 僕にごめんなさいと言うこととこれから一日僕の言うことを何でも聞いてくれたら返してあげるよ」

 これからアレスが僕に謝るのを想像するとニヤニヤして笑みがこぼれてしまう。最後の要件については言わずもがなではあるけど。

 「わかったわかった。今まで馬鹿にしてごめんなさい、これからは一人前の兵士として接するのでどうか許してください」

 少しは粘ると思っていたけど、アレスの願いは真に迫る様子で謝罪を畏まった表現でいつもと違って気味が悪い。だけど、約束は約束。僕は自分からした約束はキッチリ守る人間なのだ。

 謝罪を受け入れた僕は、アレスに近づいて行って魔力を返そうと右手で彼の体に触れた。しかし、ここで思わぬ出来事が起こった。

 「あれ? これどうやって魔力を返すんだ?」

 「へ?」

 魔力を返してもらえると思っていたアレスの顔は、僕が戸惑いながら口の出した言葉を聞いて目が点となった。

 「おいおい冗談だろ。なあ、こんな時に冗談はきついって……」

 四苦八苦して魔力を返そうと努力するが、やはりできそうにない。

 「うーん……わかんない!」と手を開いてジェスチャーすると、アレスは僕の腹に強い蹴りを入れて大きく蹴飛ばした。

 「ふざけるな馬鹿!! 俺の大切な魔力をどうしてくれるんだ!? マジで魔物に食わせんぞ!」

 「ふええええん!! 痛いよぉおー」

 あまりの痛さに僕は腹を抱えたまま、地面に蹲るようにして泣き始めた。

 「ちょっとアレス! 子供を本気で蹴り飛ばすなんて頭どうかしてるわよ!! おーよしよし、痛かったわねぇ。ほうら、痛くなーい痛くなーい」

 メリナは僕の体を両手で自分の体に寄せて優しく患部を撫でてくれている。

 「泣きてえのはこっちだよ!! 今の俺じゃ自分の身だって守れるか分からねえんだぞッ!!」

 「いちいち喚くなみっともない。お前の魔力は俺が後で戻してやるから今は横になって静かにしてろ」

 「本当かリード、その言葉信じていいのか?」

 「ああ信じていい。さて、この死体どうしようか? 俺の空間に入れることもできるが、匂いがつくから嫌だな」

 兄さんはリードを納得させると、魔物の死体の運搬方法をどうしようか悩んでいた。

 空間魔法の中に入れれば人手も要らないため便利ではあるが、兄さんはその方法にはあまり気乗りしない様子だった。

 「なあ人間、これ俺にくれよ」

 見知らぬ声がこの場にいる全員の行動を制止させ、声の方へと振り向かせた。

 横たわった死体の上で大きな口を横に広げ、長く四本もある腕で獲物を取られないようにガッシリ掴んでいる魔物の姿があった。

 現れた魔物が喋ったことに戸惑い先手を打つことができない。

 メリナとアレスはコイツは昨晩兄さんが言っていた魔人に違いないと身と心を引き締めて敵の初撃を見定める。

 魔人は僕たちを舐めまわすかのように品定めした後、兄さんとアレスを指さして「お前たち嫌い」と次に僕とメリナの方へ指さして「お前たち大好き」と満面の笑みを浮かべた。

 その言葉に得も言われぬ恐怖を感じた僕は勝手に体が動いたような気がして立ち上がって魔人に対して叫んだ。

 「僕たちは舐めるのな!! お前なんてすぐにやっつけてやるッ!!」

 しかし、魔人は今日一番の戦いの意思を見せた僕を無視して、アレスへと襲い掛かった。

 不意を突かれたアレスは出しうる最大限の魔法を魔人に対して放つが、魔力の大半を僕に奪われた影響で本来の威力からはかけ離れたものであった。

 「はあ!? なんだこのクソみたいな魔法は!?」

 アレス自身も放った魔法の威力にツッコミをいれる他なかった。

 「やっぱりお前は好きな方の人間だったか」

 魔人はアレスの魔法を簡単に手で払いのけると、四本の腕でアレスに致命的なほどの拳を叩んだ後に勢いよく放り投げた。

 「アレスッ!!」と投げ跳ばされた方向へと見やってアレスの安否をすぐにでも確かめに行こうと僕とメリナは走ったが、魔人はそれを許そうとせず目の前に立ちふさがる。

 「逃がさせねえよ誰一人! 特にお前らは俺の大好きな弱い人間だからいたぶって殺してやる。その前にまず……後ろのでけえ人間、お前を殺す!」

 魔人は兄さんに狙いを定めて一直線に飛びかかっていった。

 木々にぶつかりながら遠くへ吹き飛ばされたアレスは木のふもとでようやく止まった。

 体に突き刺さった木片と青黒い痣がいたるところにできて瀕死の重傷であったが、アレスには辛うじてまだ息はあった。

 肺にたまった血液を外に出そうと何度も咳き込んで血の息を吐いた。態勢を起こそうと体に力を入れるが、手足は言うことを聞かず這いつくばって吐き出した血だまりを眺めるのがやっとだ。

 「ク、クソ……俺はここで死ぬのか? こんなところで復讐を果たせぬまま、、」

 かつて心に決めた復讐を達成できずに死ぬ口惜しさから目からは涙が溢れてきた。

 「クソ!クソ! 俺は死なない、あの九尾の男を殺すでは!」

 燃え上がる復讐心が体を呼び起こそうとさせるが、血が絶え間なく流れていく状況でアレスは意識を失いかけていた。

 朦朧とする意識の中、目に移りこんできたのはかつて故郷の村で過ごしていたありし日の光景。

 「ああ……愛する俺の家族……。みんなごめん、俺もう動けそうにないや」

 家族との思い出に浸りながらアレスは意識を失った。

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カオスの遺子 浜口耕平 @20020523

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