悪役令嬢は芋を焼く〜今更婚約破棄が間違いだったと言われても無理です〜
島風
第1話悪役令嬢は芋を焼く〜今更婚約破棄が間違いだったと言われても無理です〜
火に懐かしい手紙をくべながら芋を焼く。彼からもらったたくさんの手紙……愛を綴り、綴られたたくさんの手紙。
もう1年になるのか?
私は元男爵家令嬢のアリス、修道院の片隅で芋を焼く。あれから1年、ようやく慣れない修道院の生活にも慣れて来た。
……私は何もしていない、なのに。
あれは去年の秋だった。魔法学園の庭先でのことだった。
「アリス・サフォーク!」
ベンチで読書をしていると、突然誰かが大声をあげるので顔を上げてみれば私の婚約者、子爵家のレオ様だった。一体どういうこと?
彼は同じ学園に通う青い瞳とサラサラのプラチナブロンド、端正な顔の造形は美男子と評して差し支えない私の婚約者。私には身分不相応とはわかってはいたが、愛していたし、家同士の決めた婚約者であった。
思わず見惚れてしまった私に彼が唐突に放った言葉は……。
「お前とは婚約破棄させてもらう! お前は、私の愛するオリビアに数々の嫌がらせを行った! 非道なる所業の数々目に余る! お前はユングリング家嫡男である私の婚約者にふさわしくない! お前の嫌がらせの処罰は近日中に申し渡す!」
「ち、違います! わ、私は!」
弁解もできず、たちどころに騎士達に連行されてしまった。そして裁判となり、身に覚えのない罪を着せられて気がついたらこの修道院に送られた。
実家も擁護してくれなかった。私はあまり大切にされていなかったのだ。私が子供の頃に母は亡くなり、その後3ヶ月もせずに後妻が入った。後妻には連れ子がいたが……明らかに父の子だった。私と同じ蒼い目、ストロベリーブロンドの髪。サフォーク家の血を私以上に色濃く受け継いでいた。父が浮気をしていたのは間違いない。果たして母の死は自然死だったのだろうか? 今となっては誰にもわからない。
実家に男の子は生まれなかった。当然、長女の私が婿養子を取る……のが普通、だが。
父は私に子爵家の嫡子との縁談を進めた。最初は自身の身の不幸を呪った。家ではあからさまに義母妹に差をつけられて育ってきた。まるで私が父の本当の子ではないかのように。
全ては継母の差金だろう。使用人も主の妻には逆らえない。
だが、私の婚約者は誠実な男だった。政略結婚と言っても月に一度で良い茶会なのに二度も三度も顔を出してくれた。そしてたくさんの贈り物。しがない男爵家の娘の上、継母に虐められていた私には貴族として満足な持ち物など買えなかった。なまじ男爵家とはいえ、そこそこ経済力のあった私は義妹と比べられるのが辛かった。自分より高価なものを身につける義妹、馬車で学園に通う彼女に対して歩いて通っていた私。
でも婚約者は義妹に負けない物を贈ってくれた。その上、毎日私を馬車で送ってくれた。
当然私と婚約者との距離は縮まり、政略結婚なんて名ばかりで、相思相愛のカップルになっていた。
結婚すればあの実家から解放されて幸せが待っていると信じて疑わなかった。
だけど、その義妹、オリビアが私の婚約者に接近して来た。オリビアには婚約者がいない。男爵家とはいえ、そこそこの財産がある実家の婿に相応しい者がなかなか決まらなかった。
しかし、男爵家とはいえ貴族の令嬢ともあろう者が婚約者のいる男性に接近している。
私は形ばかりの牽制をした。だが、誓って濡れ衣で着せられたような虐めは行っていない。
本当に義妹が虐められていたかどうかすら知らない。
義妹は典型的な尻軽女だった。彼女が接近していたのは私の婚約者レオ様だけではなかった。伯爵家のエリオット様も、公爵家のガブリエル様も、それだけでなく王子殿下の……。
私が知っているだけでも……あんなに私を愛してくれたレオ様は一体何処に行ってしまったのか? みんな、あんな尻軽女の一体どこが? 形の良い大きな胸? 派手な造形の顔?
でもそれだけ。継母と同じで見た目だけの中身が空っぽの馬鹿。学園を卒業するためにお父様はかなりのお金を学園に寄付している。
そんな子に私のレオ様が籠絡された? 信じられなかった。
だが、現実に私は断罪されて今、修道院にいる。
そんな時、カサリと落ち葉を踏む音が聞こえた。
「ア、アリス! 迎えに来たよ!」
「? レオ様?」
なんとそこにいたのは私を断罪し、貴族社会から追放してこの修道院に送った元婚約者のレオ様だった。
「君にはすまないことをした。でも、全ては殿下のためのカモフラージュだったんだ。僕は決して君がオリビア様を害したなんて思っていなかった。全ては殿下のご命令だったんだ」
レオ様は子爵家の嫡男、そして第一王子オスカー殿下の取り巻きだった。
「……今更」
「安心して。君は貴族に戻れる。無事にオスカー殿下と元婚約者のシャーロット様の婚約破棄が決まって、君の妹さんと殿下の婚約が決まったんだ」
「それで?」
そう、それがなんだと言うの?
「君が怒るのも無理もない。でも、全ては殿下のための芝居だったんだ。僕はいつも君のことが心配だったし、愛している。だから僕と王都へ戻るんだ。僕と結婚しよう」
「……」
私は無言で最後の手紙を火にくべた。
「私のアリスに何を言ってくれているのかね?」
突然大声で話に入ってきたのは……。
「君は誰だい? 僕達は大切な話をしてるんだ。邪魔しないでくれないかな?」
「邪魔なのはお前の方だろう? 今更アリスが迷惑そうだが?」
「僕が邪魔な訳がないだろう! 僕とアリスは愛し合ってるんだ!」
「愛している者を断罪しておいてか?」
「……そ、それは」
割って入って来たのはこの修道院に何度も慈善に来てくれる親切な方。恵まれない子供達を慰めるためにピエロに扮して子供達に笑いと温かい食事を与えてくださる。
今の私を支えてくれるのは子供達の笑顔とこの人だ。
「仕方がなかったんだ。僕の立場なら仕方がないじゃないか!」
「俺なら例えどのような状況でも自身が愛する者を断罪などしない。そんなことをする位なら、彼女を連れて二人で逃げる」
「そんな馬鹿なことができるか!」
「……馬鹿はどちらかな? そもそもアリスはどう思うんだ?」
急に振られても、私は……。まあ、答えは簡単だけど。
「レオ様……私、無理です。あなたの顔を見ると身体が震えます。恐怖で足が竦みます。できれば早く何処かに行って頂けませんか?」
「馬鹿な! 僕と結婚すれば君は貴族に戻れるんだよ! こんな小汚い修道院で暮らさなくてもいいんだよ!」
はあ、とため息が出る。どんな理由があろうとも、あんなことをしておいて許す女がいるとでも思うのか? 男というのはこんなに馬鹿なのか? それに何より小汚い? この修道院は立派な院長が務められていて、身寄りのない子供達を預かり育てる高貴な場所。
それを小汚い? 許せない!
「ここは小汚い場所なんかではありません! 私にとって大切な場所です! 馬鹿にするなんて許せません!」
「そ、そんな意味で言った訳じゃ……」
私への断罪が第一王子オスカー殿下のおかげかと知り、それにレオ様が巻き込まれたと言う。それもやっぱり義妹のせいで私が巻き込まれたかと思うと、つくづく私と継母、義妹とは前世からの因縁か何かだろうか?
「し、仕方がなかったんだ。殿下とオリビア様は愛を育まれていて、その……」
「情熱的なお二人のことですから、人知れず一線を超えて新たな命を……?」
「そ、その通りだ。だがそれに気がついたシャーロット様達がオリビア様に嫌がらせをして……それを止めるために……」
「見せしめのために王子に言われて自分の婚約者を断罪したのか? お前は一体どの面下げてここに来たんだ?」
「だから、僕だって仕方なく!」
「仕方ないで済むか! アリスはここでまさしく命を絶とうとしたんだぞ!」
「……そ、そんな」
元婚約者は私の気持ちがわからないのだろう。いつまでもすがるとでもと思っているの?
あんなに酷い仕打ちをしておきながら? そう、私はここで死のうとした。
それを止めてくれたのがこの人、アーサー様だ。
今では死のうとした自分が恥ずかしい。こんな男の為に命を落とすなんてバカバカしい。
そして今更私の元に歩み寄ってくる元婚約者には軽蔑の念しかわかない。
だから無理だから。一度裏切った男を信用しろと? 理由があったから? 理由があったら裏切ってもいいと言うの?
「レオ様、私はここで死のうとしましたが、このアーサー様に止められて……死なないで良かったと思いました。あなたのために死ぬなんてまっぴらです」
「そ、そんな。だからやむを得ない事情があったんだ!」
「事情があれば裏切っても良いと? 私に子供の頃から付き従ってくれていた侍女のソフィアは最後まで私の味方でした。あの後、家でも断罪されて……庇ってくれたのは彼女ひとり! 私が止めても最後まで私のことを信じてくれて……彼女はサフォーク家を追放されました。そこまでして私を信じてくれた! 私のことを思ってくれた! なのにあなたを今更信じることができると? 一番信じなければならなかった人は誰ですか?」
息せき切ってレオ様を断罪する言葉が溢れて来る。
「僕に君に贖罪をする機会を与えてくれないか? 一生かけて君への罪を償う!」
「私も最初はレオ様のしたことが何かの間違いじゃないかと……レオ様が私を助けに来てくれるんじゃないかと思っていました」
「実際、助けに来たんだよ?」
「……あれから1年経ちました。最初にレオ様への愛情が消えて、思い出が色あせたものに変わって……レオ様にも事情があったのかもしれません。でも今更レオ様に心を戻すなんて無理なんです」
「だからあれは全部殿下が……」
「レオ様にとってはそれで全て片付いてしまうのかもしれませんが、レオ様への気持ちが冷め切るには十分な時間がありました」
レオ様は目に涙を浮かべている。以前なら心が揺れただろうが今はどうでもいい。無関心でしかいられない。聖女ならやり直し、彼に贖罪の機会を与えるべきなのかもしれないが、全くそんな気持ちは湧いてこない。
「お、お願いだ。私に贖罪の機会を与えてくれ。やり直すチャンスを与えて欲しい」
「レオ様……やっぱり無理です」
彼は男にも関わらず、大泣きに泣いた。以前ならこんな時には慰めの言葉をかけてあげただろうが、今は全くそんな感情が浮かんで来ない。
「な、なら、君を貴族籍に戻す手伝いをさせて欲しい。殿下の力を使えば! そのくらいの贖罪をさせて欲しい」
彼なりの誠実さのつもりなのだろうか? 私を貴族籍に戻すと言うのか? だが自分でしてしまった罪を元に戻して罪の意識を持ちたくないだけとしか思えなかった。
「-----そんなことは必要はない。お前はどうせ自分が可愛いだけだろう! お前は何もしないで二度と彼女の前に顔を出さないことだ。それがお前にできる最大で唯一の贖罪だ」
レオ様にズバリと私の望んでいたことを告げるアーサー様。そんなアーサー様に、
「さっきからお前は何なんだ? お前はアリスの何だ? 偉そうに子爵令息の私に向かって!」
アーサー様はかぶりを振って、レオ様にこう言った。
「俺はこの帝国の皇子、アーサーだ。何か問題があるか?」
「は?」
あっけにとられるレオ様。それはそうだろう、アーサー様はかなり地味な恰好をしてらっしゃる。そもそも皇子ともあろうものが修道院や孤児院に出入りしているなど王国の人たちは誰も信じないだろう。この帝国では有名な話なのだが。
「惚けていないでさっさと帰れ、お前がいていい場所じゃない」
「ならお前がアリスを貴族に戻すとでも言うのか? 皇子なら当然できるんだろ?」
アーサー様に対して敬語を使わないレオ様は信じていないのだろう。
「アリス! 君は騙されているんだ。僕が必ず君を貴族に戻してあげるから、だから」
「だから必要ない。お前はさっきから彼女が火を使っているところを見て何も気が付かないのか?」
「火? それが一体? え? あ……そ、そんな馬鹿な!」
彼が驚いているのは多分私が聖なる火で焼き芋を焼いていたからだろう、ついでに後生大事に持って来てしまった彼の手紙を焼いていたのだが……聖なる火は金色の粒子を巻きあげる。ただの火ではないことは誰でもわかるだろう。そして、聖なる火や魔法を使えるのは……。
「せ、聖女?」
そう、私は聖女だった。修道院で働いていたら聖なる魔法が使えるようになっていた。最初はたまたま怪我をした子供を癒したいと思った。そうしたら治癒魔法が使えた。
「お前達の王国はとんだ馬鹿だな。貴重な聖女を国外に追放するとは……おかげで我が国は聖女の恩恵にあやかれそうだ。お前達が愚かな追放劇をしてくれたおかげでだ」
「……そ、そんな」
彼は気が付いたのだろう。皇子のアーサー様は身分を隠して修道院や孤児院を慰問していた。それなのに何故私の前ではその正体を明かしていたのか?
何故レオ様が私を貴族籍に戻す必要がないのか?
「貴重な聖女との婚姻は我が皇室にとってかけがえのない機会だ。彼女はこの国の皇妃になる。つまり私の妻になる」
「アーサー様。私はまだ『はい』とは言っておりません」
思わず口をすぼめてアーサー様に不満を漏らした。
「俺が皇子だと告白するまではあんなに気を許してくれたじゃないか?」
「そんな簡単に皇子様の妻になる覚悟なんてできません。もう少しお時間を頂けませんか? というか毎日来てそんなに返事をせかされても……。」
「君もまんざらでもないように思えるが? 俺の自意識過剰でなければだが?」
「自意識過剰です! 私はそんなにチョロくありません!」
「チョロいのは俺の方だと思うが?」
「もう!」
いつものアーサー様とのちょっと頭の悪い会話。痴話げんかのようでバカっぷりを晒している自覚はあるが、何しろこのアーサー様は忙しい身にも関わらず、毎日私に会いに来てくれる。
一度はこの人に添い遂げようと決意したものの、実は皇子だなどとぬかすから意地悪をしたくなった。だけど、毎日来てくれるアーサー様を楽しみに待っている自分がちょっと悪い女だと反省はしている。私はとっくにこの人に惹かれているのだから。
「そんな、貴重な聖女をみすみす帝国に取られたというのか?」
まだいたのか? レオ様は?
「この事実をどうするかは問わん。だがさっさと王国に帰れ。お前にアリスにしてやれることは何もない。できることは二度と顔を出さないことだ。それがアリスにとって一番ありがたいことだと察しろ」
「わ、わかりました。アリス、本当にすまなかった」
そう言ってレオ様は帰って行った。
☆☆☆
「で? いつ『はい』と返事をしてくれるんだ?」
「そんな。私が『はい』という以外の返事をしないみたいに言わないでください」
「それではずるいではないか? 俺が皇子だと明かすまであんなに親しくしてくれたのに、今更態度を変えるなどあまりに酷いじゃないか? 俺の心を弄ばないでくれないか?」
「もう、私の心はアーサー様のものです。だけどアーサー様はもう少し乙女心を勉強した方が宜しいかと思えます」
「そうか? それは事実上『はい』と言ってくれたのだな?」
「だから、もうー」
全くアーサー様は皇子様という身分にも関わらず、まるで庶民のような気軽さと信じられないくらいの鈍感さだ。私が心を寄せていたのに3か月も放置した癖に、今更毎日告白に来るなんてほんとに鈍感な方だ。
それに婚約破棄された私なんかが皇子様と婚約していいのかとしり込みしてしまう。
「もう、アーサー様、アリス様、いつまでバカップルぶりを見せつけるおつもりですか? それにアリス様、いつまでも拗ねてないで『はい』と言ってしまいなさいまし。そんなバレバレで焦らしてるとか、バカップルぶりを強調しているだけですよ!」
唐突に声をかけてくれたのは私の元侍女のソフィアだった。彼女は修道院まで押しかけて私の元に来てくれた。
「ソフィアありがとう。あなたのおかげで私は元気になれたわ」
「そこに俺の力は入ってないのか?」
「アーサー様、拗ねないでください」
「俺だって、最初は王国の悪女を懲らしめてやろうかと思っていたけど、こんなに可憐で心優しい娘になんとか力になってやろうと思うのが普通だろ? 俺も力になったよな?」
「もう、アーサー様は子供みたいに拗ねないでくださいまし!」
はあッ、とソフィアはため息をつくと。
「私、決死の想いで実家を出てアリス様を追いかけてきましたけど肝心のアリス様がこんなお惚気を散々巻き散らす女性になるなんて……私、馬鹿みたいじゃありません?」
「だからアリス、さっさと『はい』と?」
「だから言ったも同然ではないですか?」
「少しは私の話を聞いてくださいまし!」
☆☆☆
それからしばらくして私はとうとうアーサー様に『はい』と言わされた。
それで盛大な婚約の祝賀会が開かれて、私が聖女であることがお披露目された。
王国にこれまで私が聖女だという話は出て来なかった。どこまでも保身しか考えることができないレオ様が隠したのか、殿下に口を封じられていたのか全くそんな話題はなかった。
だが、私と帝国皇子アーサー様との婚約が発表されて聖女であることが披露されると私の素性も知れて王国では上を下への大騒ぎになったようだ。
国王陛下は事態を深刻なものと捉えて私の断罪劇への再調査を命じた。聖女は貴重であり、最近王国では瘴気が濃くなっている。瘴気を放置すればそこから魔獣が生まれ、人を襲い、喰らい、甚大な被害をもたらす。その瘴気を払うには聖女の祈りしか道がない。
だが、その聖女を追放してしまったことは王国にとって深刻な事態だった。聖女に対して遺恨を残せば最悪王国の瘴気は払ってもらえないと考えたのだろう。聖女は数百年にひとりしか生まれない。そして聖女は清らかな心の持ち主にしかその力は現れないと言われている。
つまり、私の追放劇が冤罪だったと証明されたのだ。
そして最初は元婚約者レオ様が追及されて保身しか考えない彼は容易にオスカー殿下の関与を白状したらしい。
それだけでこの醜聞は収まらなかった。オスカー殿下と婚姻を果たした義妹のオリビアの生んだ子は赤い目と青い目の両目で色の違うオッドアイの子だった。だが、王室には赤い目の血筋はない。流石に殿下も不信に思ったのだろう、魔法鑑定を行い、その子が公爵家のガブリエル様の子だと判明した。
結果ガブリエル様の公爵家はおとり潰し、オリビアは公開処刑となり、実家の者も皆、毒杯を賜った。そしてオスカー殿下は今回の責任を追及されて廃嫡、一人辺境で自身の子でも無い子を育てている。
レオ様は……やはり廃嫡になり、多分平民として暮らしているか? 正直どうでもいい。
そんな中で私とアーサー様とソフィアとで今日も芋を焼く。
「アリスの焼いた芋は美味いな」
「それは聖なる火で焼いたお芋ですから」
「こんな貴重な火でお芋なんて焼いていいのでしょうか?」
「あら、毎日一番たくさんお芋を食べてるソフィアがそう言います?」
「アリス様、酷いです! それじゃ私が一番食いしん坊みたいではないですか?」
三人で笑いあう。だがそれも後1年位だろうか? 私とアーサー様は正式に式を挙げる。ソフィアは侯爵家の三男との婚約が決まっている。アーサー様の差し金だろう。ちなみにバカップルぶりは私達以上だ。彼女の両親が掌を返したように修道院に頻繁に来るようになったのは笑える。確か勘当されたと言っていたが、ソフィアは勘当を解いてもらう気はないようだ。
だが、私の方から許してあげるように言おうと思う。彼女の両親は私の親ほど冷たい人達ではない。本気で心配したが故のことだと思う。
それにソフィアには幸せになって欲しい。親友の幸せを願わない者がいるだろうか?
私には叶わない両親との和解は彼女にだけはして欲しい。
私は幸せを噛みしめていた。それにしてもと私はしみじみと思う……なんて焼き芋は美味しいんだろうか。
悪役令嬢は芋を焼く〜今更婚約破棄が間違いだったと言われても無理です〜 島風 @lafite
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます