第3話父が他界した後、義母に「この家から出て行ってくれない」と言われた。 言われた通りに出て行ったらWWW

私は浦田トモコ24才

現在工場の事務をしている。


幼い頃に母が他界し

父と親子2人で暮らしてきた。


その父も亡くなり四十九日が過ぎ

私はかねてから決めていたことを

やろうと考えていた。


父は半年前にある女性と再婚した

父は私とは別の工場のベテラン工員だった。


その同じ工場の事務員の女性と

お互い娘がいることから親しくなり


それが付き合うきっかけとなった。

やがて二人は再婚へと発展したのだ。


そしていざ義母親子と同居してみると

最初は義母も当たりが柔らかったが


次第父の居ると居ない時で変わる様になった

父の夜勤の時は私だけ晩御飯がないとか

当たり前にしてくるのだ。


義妹は同居した時から私たち親子と

馴染もうとせず義母と話すか

それ以外はスマホを触っている。


それでも父が選んだ人だし

私の結婚するしないに関わらず


一人暮らしをするつもりだったから

気にしないようにした。


何より義母たちと折り合いが悪い事を

父に知られて心配させたくなかった。


私が何もいわなければ

表向きの平和は保たれ


私が家を出れば尚更うまく行くと

思っていた。


そんな事を考えていた矢先

父が仕事場で倒れ入院。


その父は意識がないまま

一週間待たずに亡くなった。


義母は家の勝手がわからないからと

一度も見舞いに来ず

葬儀もただ座っているだけだった。


そんな私たち親子に淡白な義母が

四十九日を終えるのを待っていたように

私に言った。


「悪いんだけど

 出て行ってくれない?


 ここ嫁として当然私の物になると思うのよ

 そうすると今となれば他人にみたいな


 あんたと暮らすのもね

 だから出て行ってくれない。」


義母の言葉に

そばにいる義妹が

スマホ見ながらニヤついている。


「元々そのつもりだったから

 構わないないわ。


 あなたと言い争ってまで

 取り戻したい家でもないから

 今週中には出れると思うので。」


本当は父と暮らした家だから執着はある。

けれど本当にこの人名義になっていたら

争うのもミジメだと思い、

出ることにした。


けれど家の登記書ってどこにあるのかしら?

まぁ、あの人が家中探して見つけるだろうけど。


私はその週の土日に引っ越しを終わらせた。

以前から不動産屋に手頃なアパートが空けば

知らせてほしいと言っておいた。


その連絡を保留していたが

今回出て行く事になり


急ぎ入居したいと頼んだら

あっさりと入居できた。


引っ越しの際あの親子は

相変わらずリビングでテレビを見て笑い

何事もないよう様子だ。


私は引っ越し作業を済ませ

そのまま何も言わずに出て行った。


両親の仏壇はあえて持たず

遺骨だけを宗派関係なく

納骨できるお寺に預けた。


部屋には二人の写真だけ飾り

毎日手を合わすつもりだ。


引っ越して少し落ち着いた頃に

父の妹であるヨシコ叔母さんから連絡がきた。


「元気?実わね

兄さんから頼まれていた事があったの。

明日休みでしょ?そっち行っていい?」


私は快諾して来るのを待った。


「その後どう?1人暮らしは?」

そう言って叔母が紅茶を一口する。


私は義母たちとの関係と

義母に言われたことを隠さずに話した。


叔母は話を聞いて頷いた。

「やっぱり兄さんの言っていた通りね。」


叔母の話では父の病室に見舞いに言った時に

色々と話をしたらしい。


父は再婚後のあの二人を見ていて

自分にはそつのない態度をしていたが

どこかよそよそしさを感じた。


最初はまだ今の生活に慣れていないからかなと

思っていたがどうやらそうでもない。


だからか父は私のことが

心配になったとも言っていたらしい。


自分の知らないところで私に

あの二人がどんな態度なのかが気になっていたという。


ある日夜勤明けで帰ってきて

二階の部屋で休んでいる時


トイレに行くのに1階に降りてきた際に

親子の話が聞こえてきたらしい。


それは義母は本来働く事が好きではない。


前の相手と離婚して仕方なく働いていたが

父と知り合って持ち家だし娘が成人して


早いうちには相手見つけて出ていくだろうから

それまでは大人しくしていなさいと

義母が義妹に話していたと。


それを聞いて父は随分と落胆したそうだが

自分が決めて再婚した相手だから

それを聞いてすぐに離婚とは決めらない。


どうしたものかと思っていた時に自分の体が

病におかされて余命は短いと自覚した。


そうなると気がかりなのは私のことだけだと。


だから急いで知り合いの

弁護士さんに相談し


家の名義を私に変えていると

叔母が私にその証書を差し出した。


「兄さんはあの親子には

 自分が病気になったことで


 気持ちを入れ替えてくれないか

 それでトモコと上手くやってくれないかって

 かすかな期待をしていたみたいなの。


 だから私も少し様子をみようと

 トモコに声をかけるのを待っていたの。


 でも、あの人たちは相変わらずだと

 今聞いた話でわかったからね。

 兄さんに言われたことを伝えるね」


そう言って通帳を1つ出した。

それは私名義の口座のものだった。


「トモコには言ってなかったけど

 葬儀の後、

兄さん名義の通帳はあの人に渡したの。


 相手の気持が分かっていても

 自分と結婚をして仕事を辞めたわけで


 やはり生活の事もあるだろうから

 自分が死んだらすぐに渡してほしいと。


 でないとトモコに何かしら

言ってきたら嫌だからってね。


 自分の口座から入院費や葬儀代を引いても

 それなりの金額が残るから

渡してほしいと言われて渡しておいたわ。」


私は父さんらしいなと思った。


叔母は話を続ける。

「それでこちらはトモコのためだけに

 将来を考えて貯めてくれていたものよ。


 兄さん名義よりもかなりあるからね

 これでこの先のことも考えてくれたらいいわ。

 それと。」


そう言って叔母が1枚の名刺を私は渡した。


「これは兄が色々とお世話になっていた

 弁護士さんなの。


 この人に色々相談してくれたらいいよ。


 それであの親子どうする?

 トモコ名義の家にいつまでも住まわせるのものね。」


私は自然と苦い表情になり叔母に答える。


「そうだね

 同居している頃から

色々言われていたのもあるけど


父さんの病室に一度も見舞いも来ることなく

葬儀でも何することもなくの人達だったからね。


 正直あの人たちに何も感情はないの

 だから出て行ってもらうことにする。」


叔母に教えてもらった弁護士さんに話すと

あの親子への対応は


自分の方で全て済ませるので

何も気にしなくて良いと言われた。


その言葉にお任せして

私自身はもう関わりたくもないので

携帯も着信拒否にして二度と合わないと決めた。


その後弁護士さんから聞いた話では

あの義母がかなりゴネたらしい。


でも登記書の名義人が私である以上は

出ていくしかなくなった。


仕方なく引っ越し先のアパートを探し

新しく清掃業の仕事に就き働き始めるようだ。


人がいなくなった家については

1人で住むには広すぎるし


家の維持も大変になってくるので

手放すことにした。


思い出は多いけれど


「あの家に執着せずお金に変えて

 これからのトモコの新しい人生のために

 よくよく考えて使いなさい」


と叔母から聞いた父さんの助言もあり

売却してこれからの新たな生活のために

使うことに決めた。


1人になった以上

思い出は胸の中に収めて

前に進んで行こうと思う。








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