大文字伝子が行く80

クライングフリーマン

大文字伝子が行く80

午後5時。大文字邸。DDメンバーが一堂に会している。DDとは、高遠が名付けた名前で『大文字ディテクティブ』、つまり、大文字探偵局なのだが、探偵局らしきことはやっていない。高遠は、今はDC、つまり、大文字コネクションの方がいいかな?と時々考えている。

いなり寿司と焼きそばが各膳に並んでいる。いなり寿司は、高峰くるみの勤めるスーパーから、焼きそばは、藤井と森と綾子が台所で焼いたものだ。

伝子が口火を切った。「山城。就職おめでとう。それと、婚約おめでとう。」

中山千春が、山城に「後でちゃんと採寸するから、今はこれで我慢してね。」と言ってゴムの指輪を渡した。

山城は自分の分を嵌めて、隣に座っている蘭にも嵌めた。

くるみが、「これ、店長から預かってきたの。ご祝儀よ。何で大量に、いなり寿司の注文が?って聞くから、つい就職祝いです、って言っちゃった。亡くなった大文字さんも草葉の陰で喜んでいるだろう、って言ってたわ。」と言った。

「世間では死んだことになっているからね。」と依田がニヤリと笑った。

「依田君。何であの時現れたの?私は後で聞いてびっくりしたわ。」と、あつこは言った。

「DDの代表代理に言われてね。『道具』が必要になるかも知れない、って。高遠は、俺の車にメンテ道具積んでいるのを知っているから。」

「ネットで調べたんだよ。」と、高遠はスマホの写真を見せた。

「あの銀行の写真?」と、祥子が尋ねた。

「トイレの窓、見えるでしょ。前の土地、更地になっているよね。家かビルか知らないが、前は目立たなかったんだ。」と高遠が説明すると、「嫌だあ。丸見えじゃない。」と、みちるが言った。

「私から支店長さんに言っておいた。防犯上、良くないって。我々より先に泥棒か強盗に目を付けられるよね。」と、あつこが言った。

「あ。そうだ。ご祝儀で思い出した。」と、伝子は山城に封筒を渡した。

「副島先輩からだ。開けてみなよ。」と促された山城が封筒を開けると、現金5万円と手紙が入っていた。

山城は手紙を読んだ。「大分苦労してきたようだな。就職おめでとう。後輩の後輩なら、私にとっても後輩だ。僅かだが、祝儀だ。それと、いつも大文字をフォローしてくれてありがとう。大文字は君たちの陰の力にいつも支えられている。副島はるか。」

「先輩・・・。」山城は涙ぐんだ。

「有り難く取っておけ。いつも副島先輩に言われているんだ。お前ほど先輩や後輩に恵まれた者はいない。感謝を忘れるな、って。改めて言おう。みんないつもありがとう。」と、伝子は頭を下げた。

伝子に続いて、藤井が「さあ、そろそろ食べ時じゃないかしら?」と言った。

「じゃあ、副部長。乾杯の音頭をお願いします。」と、福本が言った。

「あ。ずるい。それ、俺の台詞。」と、依田が言うので皆が笑った。

「じゃ、細かいことは飛ばして、山城氏の就職を祝して。そして、婚約を祝して。乾杯!」

皆、ジュースのグラスを掲げた。「乾杯!」

端に寄せたEITOのPCが起動し、画面に理事官が現れた。

「あ。もうやっているな。今回は那珂国マフィアと無関係だったが、結果オーライだ。防犯カメラの山城君の映像を観て、久保田管理官が感心していた。よく説得出来た、と。それと、仁礼海将が『滅多にない人材』とべた褒めしていた。図面を描ける人間はそうそういないそうだよ。ペーパーテストも面接も百点満点だった。しっかり仕事をしてくれたまえ。EITOも欲しい人材だが、あの写真を見て海自の方がいいと思って推薦して良かったよ。では。」

画面が消えた後、山城が「写真?」と首を傾げた。

「ごめんなさい、あなた。勝手に先輩に送って、EITOに就職できないか?って相談したの。気に入らなければ、幾らでもぶって下さい。」と蘭は言った。

「ぶつ訳ないよ。この前はぶってごめんね。危険な真似をした君に感動して、つい。」

「いいのよ。」

「何かあついなあ。高遠さん、暖房効き過ぎじゃないすか?」と愛宕が囃した。

「何か昔のメロドラマみたいだね。南原さんは、すぐに許したの?親代わりとして。」と高遠が尋ねると、「どうぞどうぞ。お中元とお歳暮と添えて差し上げます、って言いましたよ。」

南原の冗談に、「国語教師として、センス無いと思われるわよ。」と文子は言った。

「ウチはもっとセンス悪いから気にしないで。」と、慶子が同調した。

「そうそう。依田君は、おっちょこちょいだから。」と森が言った。

「おっちょこちょいだから。」と藤井が言った。

「おっちょこちょいだから。」と、綾子が言った。

「おっちょこちょいの輪唱か。悪くないね。」と服部が言うと、コウが「後で譜面に起してね。」と同調した。

「何か気分悪い。」と依田が拗ねた。「依田君は、やっぱりムードメーカーね。」と、物部の隣に座っている栞が言った。

「良かったね、伝子。幸せなカップルばかりで。」と高遠が言うと、「そいやあ、久保田さんは来ないの?あつこ。」と、伝子はあつこに尋ねた。

「あの犯人、相馬一郎の取り調べに付き合っているの。コロニーのお陰で会社の経営が苦しくなった一人だった。ヤケクソだったのね。所持金は50円。預金ゼロだった。山城さんの体験談は作り話じゃないって感じて、自分の行動を反省したって聞いているわ。」と、あつこは応えた。

「そうなんだ、警視。僕は実体験を語っただけ。5回もリストラされて、それぞれの会社でイジメにもあっていたなんて、なかなかないでしょ。」と、山城は言った。

「私は、そのリストラの話。前の日に聞いているの。痴漢騒ぎの後、彼の家で。だから、人質の中にいるのが心配で・・・。」と蘭が説明をした。

宴が1時間半続いた頃、EITO用のPCが起動した。画面には、なぎさが映っている。

「おねえさま。あつこ。お楽しみの所、事件よ。立てこもり事件。場所は五反田のアパート。近くの駐在所の巡査が拳銃を奪われて重傷。出動して!」

なぎさの言葉に、伝子とあつこは通路を走った。「みんなは続けてくれ。」と言い残す伝子に、物部は「後方支援要る時は連絡してくれ。」と怒鳴り、「分かった。物部。お前はいい奴だ!」と怒鳴り返しながら、伝子は走り去った。

「今時分、気が付いたのかよ。」と、物部は呟いた。

「そう言えば、この家、サンダーバードの基地だったのよね。」と、綾子が呟いた。

午後7時。五反田のアパート。中津警部補がメガホンで犯人に交渉をしている。

あつこが、そこにやって来た。捜査員のいる場所に中津健二がいた。

「中津さん、どうしてここへ?」「実は僕は目撃者なんです。あのアパートに浮気調査のお相手が住んでいるんですがね。奴さん、あのアパートに拳銃持って入って行ったんです。で、110番通報。」「ということは、あの部屋の住人は、犯人の顔見知り?」「さあ。警視、見取り図見ます?私の手書きですが。」「ありがとう。あ。まさか、依頼人のターゲットが住人?」「ピンポーン。」

中津警部補が交渉を中断して、「こっちには感心がないらしい。さて、どうするかな。」と言った。

「警部補。2軒隣の家なら、隣のアパートと接近していますね。」「やはり、その手で行きますか。その部屋の住人には了解を得て協力を約束して貰っています。詰まり、窓から入れます。ベランダの通路は繋がっていますから、後は・・・。」「簡単ね。失礼。」あつこはガラケーを取り出した。

このガラケーは、伝子の叔父が開発した『大文字システム』によって、警視庁とEITOに繋がっている。

「おねえさま。2軒隣の部屋に、隣のアパートから一旦侵入して。そこから、あの部屋に侵入する。私たちは表から、入るわ。10分後でいい?」「了解した。」ガラケーに伝子の返事が入った。

「聞いた通りよ、警部補。10分後に強行突破。」「了解。」と、中津警部補が応えた。

10分後。伝子達は窓から、あつこ達はピッキングしたドアから入った。

犯人は抵抗出来なかった。住人と死んでいたからである。あつこが時計の音に気づいた。

時限装置だ。「中津さん。皆に避難を!」伝子は叫んだ。

あつこが解体し、爆発は起きなかった。残りの時間は1分を切っていた。

午後8時半。大文字邸。「後は、あつこと警察陣に任せて帰ってきた。」と、伝子はドライカレーを食べながら、話した。DDメンバーは8時には帰宅したらしい。

「死体と共に謎は残ったか。『死の商人』に利用されたのかな?」と、高遠は腕組みをした。

「警察とEITOで懸命に調べている。蘭と山城は上手くいくかな?」「うん。お似合いだと思うよ。というか、皆の前で婚約しちゃったじゃない。破談になったら、大文字伝子がただじゃおかない、でしょ。」

「まあな。学。風呂入ったら、子作りしよう。」「何?蘭ちゃんに触発された?ああ。そうそう。蘭ちゃん、コンテスト優勝したんだって。またおめでたいことが増えたね。」

「二人とも、『結ばれた』ことで、運が向いた・・・やっぱり実力かな?」

夫婦のたわいも無い会話が続いた。

午後9時。依田の車の中。「意外な展開の事件だなあ。EITOの出番じゃなかった事件かな?」「そんなことはないでしょ。警視じゃなきゃ、皆巻き添えで死んでいるわよ。」

慶子と依田はラジオのニュースで、立てこもり事件が急展開したことを知った。

依田のマンション。ドアに手紙が挟んであった。2通ある。1通目は、「留守のようなので帰ります。」と書いてある。小田社長が来たようだ。

もう一通には、「留守のようなので、君たちの大事な人は預かったよ。自称死の商人の元締め。」と書いてあった。

二人は暫く呆然として、ドアの外で立っていた。

午後10時。大文字邸。

伝子が依田と話している。

「すぐに『やすらぎほのかホテル』と『やすらぎほのかホテル箱根』と『やすらぎほのかホテル伊豆』に連絡して、あつこ警視にも連絡しました。あ。久保田警部補が来られました。」依田は電話を切った。

「大変なことになりましたね。分かっていると思いますが、誘拐は48時間が勝負です。落ち着いた行動も必要です。ホテルには?」「本店支店共に連絡しました。」「そちらにも捜査員を送りましょう。まあ、手紙はここにあった訳ですから、こちらに身代金要求がある可能性が大きい。社長は、依田さんの奥様の慶子さんの叔父様でしたね、確か。」

「そうです。」「手紙は?」「これです。」と依田はビニール袋に入れた手紙を差し出した。

久保田警部補は慎重に手紙を取り出し、読んだ。「あまり、具体的な内容がありませんね。おい。」久保田は手紙を部下に渡した。「無駄かも知れないが、鑑識に調べて貰いましょう。」

先ほどとは違う部下が久保田に報告した。「警部補。逆探知準備出来ました。」「ご苦労様。ああ、そうだ。社長は依田さんや慶子さんのスマホの電話番号を知っていますよね。」「ええ。じゃあ、そちらにも録音設備を付けさせて下さい。大文字さんとは、私のスマホを使いましょう。」「分かりました。」

翌日。午前10時。大文字邸。

伝子のスマホに久保田から電話があった。「連絡ありましたか。」「ありましたが・・・困りました。普通は身代金を要求するものですが、資産が沢山ある社長の誘拐犯の要求は違いました。」「何です?要求は。」

「大文字さんの命です。社長の小田氏と大文字さんの命を交換だと言うのです。」「人質交換ですか。『死の商人の親玉』ですかね。」「そうでしょうね。大文字さんに相当恨みがあるでしょうから。交換した後でいたぶって殺す積もりかも知れませんね。」

「具体的には?」「浦安の、廃工場跡の住宅予定地です。そこに来い、と。エマージェンシーガールズを連れて来てもいいそうです。」「ううむ。あ。時間は?」「今日の午後3時。EITOにも連絡を入れました。」「分かりました。私は取り敢えずEITOに向かいます。誘拐班は解散して下さい。」

午前11時。EITOベースゼロ。

「大文字君をおびき寄せる為に、いや、EITOに挑戦する為に罠を仕掛けたか。」と、理事官は唸った。

午後3時。廃工場跡の住宅予定地。

住宅予定地北側の方に50人はいるだろう、一団がいた。皆、エマージェンシーガールズ姿だ。銃を持っている。

住宅予定地南側の一角に、椅子に座らされ縛られている小田社長の姿が見える。側に覆面をした男女がいる。他のエマージェンシーガールズと共にやって来た、なぎさが声を上げる。

「まずは人質を解放しろ。」男女の女の方が応えた。「大文字伝子はどいつだ。一歩前へ出ろ。」

伝子は、一歩前へ出た。「こっちへ来い。社長は、そこの自動機関銃が狙っている。変な真似をしないことだ。」男女の男の方が小田社長のロープを解いた。伝子がやってくると、男は社長を突き飛ばし、伝子を縛り付けた。

東側の入り口付近で、愛宕がパトカーの前で手招きをしているのを見て、社長は走った。社長がパトカーに到着するのを見て、女は自動機関銃のタイマーをセットした。

「30分後が楽しみだな。」と女は笑った。

「さあ。お祭りだ。みんな、やっておしまい!」女は那珂国語でも叫んだ。

その時、空から人が降ってきた。パラシュートを操作しながら降りて来たエマージェンシーガールは、女に馬乗りになる形で着地し、女は気絶した。襲いかかろうとした男をエマージェンシーガールは、男をグーパンチで倒し、「エマージェンシーガールズ、前へ!!」と叫んだ。

拳銃や機関銃で身構えた北側住宅予定地のエマージェンシーガールズに向かって、『本物の』エマージェンシーガールズはフードを被り、ブーメランやシューターを投げ、拳銃や機関銃を叩き落として行く。

弓矢隊が到着し、後方支援をする。ジープから次々と陸自の隊員から矢を渡された、副島、田坂、安藤は矢を放つ。一ノ瀬一佐もバットマンの格好をして、ボウガンで支援する。

南側の伝子達の元に、井関五郎が駆けつけ、時限装置の解体を始めた。

北側に向かって走り出した、一時人質になった伝子に、バイクで走ってきた筒井が剣を渡した。天童が預かっていた、特殊な剣で、刃がないが威力のある『たけみつ』である。

「日向(ひなた)一佐、これを!」と筒井は叫び、去って行った。

ひなたと呼ばれたエマージェンシーガールと、先ほど敵の親玉を倒したエマージェンシーガールはフードを被り、再び走った。

フードの無いエマージェンシーガールズとフードを被ったエマージェンシーガールズの闘いは約30分近く続いた。

本物のエマージェンシーガールズはブーメラン、シューターでけん制しながら、ある者は三節棍、ある者はトンファー、ある者はヌンチャク、ある者は竹光で闘った。

やはり、本物が偽物を凌駕し、勝利した。井関の解体は間に合った。

EITOベースゼロ。藤井、森、綾子がいる。

「間に合いましたよ、ご婦人方。」と、理事官は3人に頭を下げた。エマージェンシーガールズの衣装に急いでフードを縫い付けたのだ。高遠が『偽物』登場を予測していた為のアイディアだった。

住宅予定地北側。警官隊によって、偽物エマージェンシーガールズは逮捕連行されて行った。

目を覚ました女が、時分の舌を噛み切ろうとしたが、井関がハンカチを女の口に突っ込んだ。

久保田管理官が、部下と共にやって来た。「どうして?って顔をしているな。ウチのエーアイは頭がいいんだよ。」

みちるは、エマージェンシーガールズ姿で言った。「林の中で様子を見守っていた、鈴木校長のソックリさんも捕まえたわ。仙石諸島付近の那珂国の潜水艦は、海自がトマホークを撃ったら、逃げて帰った。津軽海峡付近の戦闘機には、ドローンで攪乱する電波を流したら逃げ帰ったそうよ。総力戦、こちらも覚悟して迎え撃った。あんたの上に何人いようと、私たちは闘うわ。命がけで。『テロは絶対許さない』、それがEITOよ。」

久保田管理官は言った。

「あのアパートの二人を殺したのもあんたらだな。拳銃を奪って立てこもりした筈の男が住人と一緒に殺されていた。住人だけじゃない。踏み込んだ者も吹き飛ばす予定が上手く行かなかった。お陰で断片的な証拠が残った。あの部屋も、あんたらの部屋も窓は施錠されていなかった。エマージェンシーガールズでなくても変だな、とは思う。お前の亭主役の部下も、あまり賢くなかったな。」

女はハンカチの下で何やら喚いていた。「後は、取り調べでじっくり聞こうか。」久保田管理官が顎をしゃくると、警察官達は犯人の男女を逮捕連行した。

「管理官。あの脅迫状?っていうか手紙。多分、指紋か掌紋ついていますよ。焦っていたようだから。」と、井関が言った。

住宅予定地北側の方で、本物のエマージェンシーガールズが集まっていた。みちるが走って来た。

副島、田坂、安藤、伝子、なぎさ、あつこ、みちる、あかり、結城、増田、金森、浜田、江南、早乙女、大町、馬越。そして、みちる。総勢17名のエマージェンシーガールズに伝子が紹介した。

「紹介しよう。私の分身、ひなたさやかだ。体型がそっくりなのは彼女だけだ。空自出身で、前田空将のお墨付きだ。」伝子はフードを外し、顔のマスクを外した。

皆もそれに習った。

「ああ?さやかさん、私より童顔だ。可愛い!!」あかりの言葉に皆は大笑いした。

「いい天気だ。野球でもやっていくか?」と伝子が言うと、「おねえさま。旦那の許可貰っていいですか?」となぎさが言い、「許可するよ。」と、一ノ瀬が並んだ。

時刻は午後4時を回っていた。どこかでチャイムが鳴っていた。

福本邸。福本と祥子が、犬のサチコと遊んでいた。

依田のマンション。電話を切った依田が笑顔で慶子に何やら報告をしている。

山城のアパート。山城は、設計図を見せて蘭に説明をしている。

南原の塾。生徒達を南原と文子は笑顔で見守っている。

副島の塾。副島の恩師が生徒達を指導している。

愛宕邸。署長が仏壇の前に座っている。

物部のマンション。留守番電話が作動している。

服部のアパート。小さなピアノをコウが弾き、服部が歌っている。

喫茶アテロゴ。物部と栞が客の注文を聞き、てんてこ舞いをしている自分たちを笑っている。

辰巳のアパート。辰巳は婚約者と指相撲をしている。

ひかるのマンション。赤木が彼女らしき女性を連れて来て、千春が目を丸くしている。

パトカーの中。愛宕が鼻歌を歌っている。

久保田邸。執事の指示でお手伝い達がディナーの準備をしている。

やすらぎほのかホテル。従業員達に、電話を切った副支配人が説明をしている。

高峰くるみのアパート。くるみが電話を舞子の耳にあてがっている。

新幹線の中。車両端から出た総子が電話を受けている。隣に南部がいる。

そして、大文字邸。リビングルーム。高遠が犬のジュンコと遊んでいる。

高遠のスマホが鳴る。「ああ、編集長。聞きました?じゃ、お聞かせしましょう。」

束の間の平和。それでもいい。前に進むしか無い。高遠は電話をしながら、ぼんやりと考えていた。

―完―








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大文字伝子が行く80 クライングフリーマン @dansan01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ