第2話

待ちに待った放課後になり、3人は図書室へと向かった。

「みんな!来てくれてありがとう。今物語が変わってしまっているのは、桃太郎なんだ。」

「桃太郎ってあの、桃から生まれて戦って幸せになるってやつだよね?」

美音がざっくりとした流れを復習する。

「そうだよ、お婆さんが非協力的で桃太郎がこのままじゃ生まれないんだ。みんなにはストーリーの始まりから修正してほしい。さぁ、目を閉じて。今からこの世界に送り込むから。」

そう言われて目を閉じると、すとんと落ちていくような感覚に陥る。


「美音!大丈夫?」

透の声に目を覚ますと、古い家の前だった。

「本当に話の中に入ったみたいだな。」

東が座り込んだままの美音に手を差し出す。

その手を借りて美音は立ち上がる。

「へぇ!こんな感じなんだね。畑とかばっかだし、めっちゃ自然って感じ!」

すると家からお爺さんとお婆さんが出てくる。

「まだ桃太郎がいないみたいだし、冒頭に来れたみたいだな。」

東の一言に美音がうなづく。

「うんうん!これからって感じだね。お爺さんが山で、お婆さんが川だよね!」

「確かにそうだけど、お婆さんが非協力的らしいし、川に行くか心配だね。」

透が困ったように言うが、予想に反しお婆さんは川に向かうようだった。

「取り敢えず隠れて様子をみるぞ。」

東の提案で、しばらくは隠れて様子を見ているとお婆さんの元に桃が流れてきた。

だが、流れてくる桃に目もくれずお婆さんは家に帰ってしまったのだった。

(このままじゃ桃が流れていっちゃう!)

「2人とも!あたし達で桃を捕まえるよ!」

美音が言い残し、桃に向かって走り出す。

緩やかな川の流れということもあり、そう苦労することなく桃を回収する。


「はい!隊員集合!」

美音が手を上げて2人を呼ぶ。

「おい、隊員って僕たちのことか?」

呆れたように東が言う。

「まぁ、いいじゃない。美音がやるって言って俺たちも参加しているんだし。美音が隊長だよね。」

穏やかに透が言い、美音の話を促す。

「じゃあまずは、お婆さんがツンすぎてデレが全くない事件について話し合いまーす。」

「なんだその無駄に長い事件名は。」

「別にいいじゃん、東細かすぎー!」

むくれた美音を宥めつつ、透が本題へと話を戻す。

「確かに、このままじゃ冒頭で話が終わってしまうよね。まずはこの桃をお婆さんとお爺さんに渡さないと。」

「直接あげてこようよ、お婆さんに。」

「知らないやつから渡された桃を受け取らないだろ。非協力的なお婆さんじゃなくて、原作に忠実なお爺さんに行動してもらったほうがいい。お婆さんはまだ家に戻っていない、田舎だし鍵をかけていないから、家に直接置いてしまったほうがいい。」

「確かに!さすが東!早速置いてこよ。」

そうして、家に桃を置き待っているとお爺さんが帰ってくる。

その後に、お婆さんもすぐに帰ってきた。

思惑通りお爺さんが桃を切り、桃太郎が無事誕生したのだった。

その途端、ビデオの早送りのように物語が進みだしたのだった。

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我ら物語保護隊! 白宮 つき @shiromiya

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