14日目(日曜日 仮)薪ストーブの部屋の夜「黒い服の男の意思」
私の予想では、黒い服の男は、依頼主から頼まれた食材の運び屋で、その報酬の一環としてこの部屋で好きなだけビリヤードをしても良いことになっているのではないかと思っていた。しかし、そんな彼から「本を読め」という“彼の意思”が言葉として発せられたことがどうにも引っかかった。
頼まれ仕事を請け負うだけの男が、たかが本のこととはいえ、自分の考えを軽々しく言うものだろうか。いや、そんなことはないだろう。あれだけ、私がいろいろと尋ねても無視を通していたのに、本に関してだけ言葉を発したのだ。
いったい、黒い服の男の素姓は何だろう…
ここまで考えても、この部屋と白い部屋の意味や、自分が此処でなぜ暮らしているのかという疑問と同じく、答えなど出ない。
でも、少なくとも、今日、私は、この部屋に来て初めて他人と会話をした、という事実ができた。それは、とても喜ばしいことであり、これからの此処で過ごすにあたって数少ない期待感のようなものを持てたことがとても嬉しい。
日曜日の今日は残念ながらこれで終わるが、来週の日曜日が俄然、楽しみになった。来週、私は、黒い服の男にどんなことを話せばいいだろう。どんなことを尋ねれば、彼が答えてくれるだろう。
それを考え抜く一週間は、果たして、退屈な一週間になるのだろうか、それとも、焦燥感に包まれた一週間になるのだろうか。否、きっと、ワクワクした気持ちでいられる一週間になりそうな気がしている。
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