第50話 [新たな仲間]

 ……腹が減った。なんだか猛烈に腹が減っている。ただ食べるだけじゃ満たされないような飢えがある。

 もう一回だけ……もう一回だけあの宝石の様な瞳を見られたら……。

 これって俺か? いや、俺じゃない。一体誰の――


「…………ん?」

「あ! 零太郎おはよ〜」

「……おはよう琴音」


 目を開けると、そこには琴音が俺の顔を笑顔で覗いていた。どうやら、また膝枕をさせてもらっているようだった。

 あれ、でも俺の滑舌がいつも通りだ。霊力を使い切ったら銀髪ショタになるはずじゃあ……。


「俺って確か零力全部使い果たしたはずなんだが……なんでまだ実体を保ててるんだ?」

『ワンッ!』

「え、な、なんだコイツ!!?」


 可愛げのある鳴き声をした方を見ると、そこには先ほど倒したはずの黒い獣の姿があった。……といっても、小型犬くらいまで縮小している。


「ど、どうなってるんだ!?」

「ん、お兄さん落ち着いて。わたしが説明する」

「あ、あぁ。よろしく頼む、封美ふみ


 フードを被っているトイレの花子さんこと封美に説明を求めた。


「確かにさっき、お兄さんは倒した。それで魂核も出た」

「そうだよな。あんなキャノン砲喰らわせたし……」

「で、その魂核をお兄さんに食べさせた」

「なぁあにやってんだぁあああ!?!?」

「そしたら小さいけど復活した」


 ね、寝ている間になんて……っ!

 というか、こんなにいっぱい食べていいのか? 一応封美の魂核も食べたし……。


「零太郎、君が人間に戻るための神々の残骸は結構破損が多いんだ。これは私の推測だけどねぇ、莫大な零力を取り込めば、破損した残骸も再生するんじゃあないか、ってね!」

「そうなのか……? まあ確かに、現に実体があって足も生えてるしな……」


 じゃあ良かった……のか? 色々と心残りがあるが、そういうことで片付けておこう。

 俺は膝枕から脱出し、小さくなった獣の前に座ってじーっと見つめる。


「……お手」

『ワゥッ!』

「おかわり」

『ワァッ!』

「よし」

『ガゥッ!』

「イヤアーーッ!!」


 お手とおかわりはできた。だが俺がよしと言った瞬間、俺の手を噛んできた。

 甲高い悲鳴が響き渡る。


「懐いてるみたいだな」

「噛み付かれてんだが!? 何が見えてる彗一けいいちには!!」

「ナバナバおもろすぎー☆」


 彗一と二重箱ふたえばこさんコンビはそんなのんきのことを言っていた。

 まぁ実際に腕が噛みちぎられることはない甘噛みだったが、懐いているのだろうか。懐いている相手に普通噛むか? 犬はよくわからん。


「よくわからないけど、レータローから出てきたならもうずっと一緒なのかな?」

「ん、もう離れられないと思う」

「本人の了承を得ずにするんじゃねぇ」


 クロエの質問に当たり前のことのように答えた封美。ほんと、なんで大事なことを眠っている間にしてしまったんだ。


「名前ねぇ……」

『ワゥ?』


 ガシッと両手で掴んで持ち上げると、少し首を傾げて長い尻尾をフリフリしている。

 頭蓋骨半分被ってて目が白色に光ってること以外はまあ可愛いか。……いや、どうだろう。


「んー……じゃあ〝神戸カミト〟」

『! ワンッ!!』

「お? 喜んでるんじゃないのか?」


 長い尻尾をブンブンと振り回している。


「なんでカミト?」

「なんとなく頭に思いついたやつだぜ。……ま、でもとりあえず終わったってことだな」


 無事に大太ひろたの呼び出したこの獣ことカミトを鎮圧して、神々の残骸の回復はしたかわからないが可能性がある。

 大太、自分の物にした獣を俺が寝取った形になってしまうのか? 寝取られ物は嫌いなんだがな……。


「やれやれ……。ま、これから琴音とおんなじ様に運命共同体みたいな感じか。精々なんかしら役に立ってくれよ、カミト」

『ワンッ!!』


 生きのいい返事が返ってきたので、充分に期待しておこう。新たな仲間として、よろしく頼もう。

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ロスト・ゴースト・リスタート 〜トラックに撥ねられて幽霊になった俺、美少女除霊師(落ちこぼれ)と最強を目指す〜 海夏世もみじ(カエデウマ) @Fut1

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