電子政府と恋の行方
第24話 畠山由紀の入社
「え?夕飯の用意はニンニンの分だけだけど・・・」
ふみ子は戸惑いを隠せなかった。
「ピザを買うから、俺の分は気にしなくてもいいよ」
太田晃一は食い下がった。
「俺も、説得に行く。俺が言い出しっぺだし。今日は遅くなっても大丈夫だから」
中川智之も食い下がって言い出したので、ふみ子は断るのをあきらめた。
結局、太田晃一も中川智之もふみ子の家に行って、畠山由紀を説得することになった。中川智之は車だったので、乗せてもらうことにした。男を二人も家に連れてきたので、母はおろおろするばかりだった。
畠山由紀が玄関に現れると、二人がいたので、怪訝そうな顔になった。
「ニンニン、今の会社辞めて、フミタンと一緒の会社に就職しないか」
中川智之はあいさつもそこそこに用件を切り出した。
「フミタン、入社するの?」
畠山由紀はふみ子の目をみて聞いた。
「うん。太田さんがニンニン仕事ができるから、頼りになるだろうって。中川さんもニンニンを誘えばいいだろうって。私も、ニンニンがいれば元気もらえる」
ふみ子はありのままの正直な気持ちを言って、畠山由紀を誘った。
「条件があれば、今、言え。なるべく要求を通りやすくするから」
太田晃一も援護した。
「僕、電子政府は反対だったけど、地域デジタル通貨に関しては賛成なんだ。フミタンとコウイチ、ダイコンと一緒なら楽しいかもな。条件はフミタンと同じでいい」
「お前は技術職だから、2割増しだ。受注ができて、利益が出れば、ボーナスもでる。当面は企画第2グループの所属で、受注が決まれば、新会社に移行するからな」
太田晃一は淡々と説明した。
「フミタン、僕のほうが給料よくても、不愉快じゃない?」
畠山由紀はふみ子の肩に手を置いて、探るようにふみ子の目をみた。
「ふ、不愉快じゃないよ。技術職のほうが給料いいのは知っているから。仕方ないよ。一緒に働けるだけでも私は嬉しいよ」
「じゃぁ、今の会社を無事退職できたら、ここへ電話してくれ」
太田晃一は連絡先を書いたメモを渡した。
「うん。来週、上司に相談して決めるよ」
畠山由紀は笑顔になり、うなづいた。その顔をみつめる中川智之の視線をふみ子は見逃さなかった。
「じゃぁ、ピザも食ったことだし、俺たち帰るよ。またな」
男たち二人は用事が済むと帰り支度をした。
畠山由紀も食事が済むと、おしゃべりもそこそこに帰っていった。
畠山由紀が帰ると、母がしつこく二人の男のなかで、どちらを気に入っているのかしつこくきかれたが、ふみ子は風呂場へ逃げた。
土日にチャットルームに入ると、いつものメンバーがいるが、スノーホワイトも常連になっていた。でも、なにか自分から話しかけるわけではなく、ただログを見ているだけのようだった。相変わらず、エスパーとスカイスナイパーは熱く議論を戦わせていたが、太田晃一とふみ子は聞き役で、たまに相槌を打つという展開である。
月曜日に会議室に出社すると、総務に呼ばれて、相田陽菜と共に入社の手続きをした。開発からも応援がきて、ふみ子は浮足立った。太田晃一はマネージャーに昇進したので、ふみ子の相手だけするとはいかず、話をする機会があまりなかったが、相田陽菜の存在がふみ子にとっては大きかった。
太田晃一は高木事業本部長と役所まわりをすることになった。太田晃一の想定よりも、役所の壁は高かったが、アポイントをとることには成功した。そこで、ライバル社がいることをきいた。不安になった太田晃一は、また探偵を雇って高田常務の身辺を探らせると、高田常務は奥さんのコネと留学時代に培った人脈で海外のファンドから資金を調達して、起業したという話をきいた。翌週には開発から応援にきたエース級の人材が引き抜かれてしまった。かわりに、来月から畠山由紀が入社することになった。
畠山由紀の想定では2か月後だったが、相談した上司に、辞めたいなら業務を引き継いですぐにでも辞めろと言われたので、来月から入社できるということになった。
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