第9話 計画
太田晃一はふみ子の心配を解こうと自分の計画を話した。
写真やビデオだけでは言い逃れできる。以前に社内で問題になったとき、高田常務は女性のほうからアプローチされ、仕方なく相手しただけで、自分のほうが被害者だと言い切っていた。そこで、相田陽菜に盗聴させて、外で見張り、高田常務のほうからアプローチしたという証拠を入手したい。ふみ子が退職に追い込まれたとき、相田陽菜にメールアドレスを聞く際、理由をきかれ、高田常務を追い込む計画があると伝えたら、相田陽菜のほうからなにか手伝いたいと言い出した。さらに、ふみ子のメタチャットに太田晃一も参加し、フェイクニュースを流し、だれがふみ子のメタチャットにいるのか特定させ、高田常務の野望をくじこうというものだった。
「高田常務の野望?」
ふみ子は頬づえをついて、太田晃一の話にききいっていた。
「うん、高田常務は電子政府のコンサルタント会社を設立させようとしているんだけど、自分ひとりの人脈と金では無理だと判断して、社長に金をださせようとしているんだ。その前に高田常務を追い出そうと思っている」
ここまできいたふみ子は太田晃一の話に納得して覚悟をきめた。
「今、メタチャットは休止しているんですけど・・・わかりました。再開します」
「オフ会の案内もしてくれないかな」
「オフ会に高田常務は来ないんじゃないですか」
ふみ子は疑問をはさんだ。
「俺もそう思う。だから皆で高田常務を罠にかけよう」
「罠にかける?」
「フェイクニュースを流すんだ。だから、皆で力を合わせる必要がある。オフ会のときに計画をたてよう」
「皆、協力してくれるでしょうか?しばらく、休止していたし・・・」
「うん、だから俺も参加して盛り上げるよ。あ、ここでの話はチャットでは話さないようにね。俺の正体も秘密ね。じゃぁ、帰っていいよ。俺、高田常務が出てくるまで、待っているから」
「私も一緒に待ってます」
「夜道は女の子は危ないし、俺と一緒に帰るとまずいだろう。これは社長の命令でやっているから、俺のためでもある。帰れよ」
ふみ子は引き下がって帰ることにした。家に帰り、パソコンを開けて、太田晃一にメタチャットの招待メールを送り、ルーム再開のお知らせを掲示板にあげた。
白いマントのエスパー777、黒いスーツのスカイスナイパーは30分しないうちに参加し、青いぬいぐるみのブルーマウスがもうチャットは閉じようかと思っていた矢先に参加してくれた。
ふみ子、こと狐のお面に巫女すがたのアンドロメダは休止していたことをわびた。すると、アンドロメダの体調を気遣うメッセージが寄せられ、心が温まった。エスパー777とスカイスナイパーは相変わらず議論を戦わせ、ブルーマウスとアンドロメダは適当にあいずちを打ちながら聞き役に徹していた。ブルーマウスは不思議な人で、挨拶の他はきかれたことは答えるが、自分からは親しくなろうとはしなかった。好きなブランドはマイケルコースと自己紹介したことがあって、そのことからキャリアウーマンなんだろうとアンドロメダは推測していた。では、高田常務は誰なんだろう?
ブルーマウスのように会話に参加しなかった人かもしれない。それに、私に用がなくなった高田常務はチャットに参加するだろうか?太田晃一はその日のうちには参加しなかった。ふみ子は母との約束で12時に寝ることにしているので、ルームを閉じた。
次の日、太田晃一からメールが届き、今日からチャットに参加するから、オフ会よろしくと書かれてあった。ふみ子はルームは19時から開けますと送信し、掲示板にオフ会参加者募集とあげた。
19時にルームをあけると、大黒天のアバターが参加した。「俺だよ!俺!太田」とメインボードではなくアンドロメダのメッセージボックスにささやいた。巫女すがたのあんどろめだは親指をたてて、笑笑と大黒天のメッセージボックスにささやいた。
スカイスナイパー、エスパー777、ブルーマウスが次々とチャットに参加し、大黒天にお初メッセージをよせた。
「オフ会を開きます。参加する人はアンドロメダのメッセージボックスにささやいてください」
アンドロメダのメッセージボックスに大黒天、スカイスナイパー、エスパー777が参加すると意思表示した。ブルーマウスからは何もなかった。
大黒天が一週間後の土曜日の夕方はどうだろうかと提案したが、エスパー777は茨城なので早めに帰宅しないと終電に間に合わないと言い出し、結局、4時に京成上野の近くの喫茶店で待ち合わせをすることになった。
ふみ子は太田晃一から二人だけで話したいことがあるから、3時半に会おうとメールを受け取り、ふみ子は了解しましたと返信した。
その日の議題は賃金の上昇とリストラについてで、経済成長して賃金を上げる場合、スキルアップができない人はリストラするしかない。その防衛策として、ベーシックインカムが有効になるとエスパー777は持論を展開した。
ベーシックインカムが本当に防衛策になるのか、一億総乞食になるのがオチではないかとスカイスナイパーが反論した。
だからこそ、早く電子政府が必要になる。電子政府について協力してくれる官僚に知人がいる。その知人は電子政府で有名なスタンフォード大学のアンドリュースミス教授から直接指導を受け、電子政府により必要な人に必要な支援が届くようになり、電子政府が産業構造の転換につながり、次世代の勝ち組国家が決まっていく、と大黒天がまとめたところでルームを閉じた。
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