第6話 新條高校の野球部
結局、光太郎は3日ほど入院をしたのちに退院した。
特に体に異常があったわけではなかったのだが、病院へ運び込まれた時のケガがどうして回復したのかその原因を解明したかったのだ。だが検査をくり返しても結局なにも分からなかった。
担当した医師は、まだまだ人体には不思議なことが起こるもんだと判然としない気持ちでいたが、そばに居たベテラン看護師は「先生の適切な処置のおかげじゃないですか?」と、冗談めいた言い方で医師を持ち上げた。
一方の光太郎は、病院を出ていくところで、すこぶる気分がよかった。
なんだか何時もより体が軽い!
鼻歌でも歌いたい気分だったが、病室に付き添っていた母親は、とてもじゃないが体のことが心配で先生の言いつけ通り野球部の運動を一週間させないよう守らせることに躍起だった。
これについては光太郎も大人しく従うほかない。
自分自身でも全治6か月以上の大けがが、1日でどうやって治ったのか。
それは不思議でしょがない。
いくら猫の神様が出てくる夢を見たからといって、「はい。そういうことですね!」と簡単に納得できる話ではないのだ。
本当に自分の体は大丈夫なのか?何かの拍子にまたケガをしている状態に戻ったりしないか?気が気でないので、最低でも1週間は静かに過ごそうと光太郎もそう考えている。
しかし、光太郎は練習はできなくても野球部の様子は見にいこうと思っていた。
やはりこちらも気が気でないのだ。
最近の熱の入ってない練習も目に余るものがあったが、ただでさえ減っている部員からまたレギュラーの部員がまた一人抜けるらしい。
それが、田中真だ。
真は守備のキーになるショートというポジションでレギュラーだった選手だ。
だが最近は勉強に専念したいと練習への参加が減っていたのだが、ついには全く参加しなくなるらしいのだ。
問題は、代わりにショートというポジションを埋める選手がいないことだ…。
ショートの経験者がいない上に、これから練習をしようにもあと1か月もすれば大会が始まってしまう。この期間ではさすがに厳しいといえる。
光太郎は打撃成績は振るわないが大会に懸ける想いだけは人一倍だった。
光太郎はこのチームで、今の部員たちで、大会を勝ち上がりたいと思っていた。
だからこの真の離脱の話は残念だった。
何より今の全然盛り上がらないムードの野球部のことが、心配でしょうがないのだった…。
ねこ神様を助けた男子高校生と野球部員たちの一番暑かった夏 小説みーこ @Karen_Hayami
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