第6話 夜の雪
昼寝ですっかり乾いた喉を潤しに、私はキッチンへと向かった。麦茶を飲み、キッチンから出ると、猫はいつの間にかテーブルの上に登っていて、テーブルの上にあるものをくんくんと嗅ぎながら物色しているようだった。
すると、猫はテーブルに転がっていた私のペンに恐る恐る前足を伸ばして、ちょんっと押してペンを落とし、ペンは落下音を鳴らした。その様子を猫はじーっ…と見つめていた。
私はテーブルに行き、ペンを拾って猫の元に置く。すると、今度は恐れることなくまたペンをちょんっと押して落とした。すかさず私はそのペンをキャッチして、猫の元へ置いた。私は、猫に楽しんでもらう一心でそれを繰り返した。
猫と戯れた後、私は録画していた映画を見ていた。映画を見ている中で時刻は夕方から夜へと変わっていき、寒さはよりいっそう深くなっていった。
つんと突き刺すような強い冷気が部屋の中を埋め尽くす頃、私は一旦映画を一時停止して暖房をつけた。
気がつけば、もう雨の音はしなくなっていた。なんだかいつもより寒い気がした私は、スマホで今の気温を確認した。すると、天気のアイコンが雪になっていた。私は急いでテレビの横にある窓のカーテンを開けて、外を確認した。
雨は、雪へと姿を変えていた。
静かな暗闇のなかで、ふかふかの真っ白な雪がしんしんと降り注いでいた。雪は雨と違って、音もなく、ただただ静かに、空からゆっくりと舞い落ちていた。その様子はまるで、真っ白な桜の花びらがひらひらと散っているかの様だった。
「雪だ…」
滅多に雪が降らない地域に住んでいる私は、おもわずそう呟いてしまった。雪は、真っ黒な寂しい夜の景色を華やかにしているように感じた。
私が雪を眺めていると、猫が静かな足音でやってきて窓枠に登ってきた。そして、雪が降る景色をとても不思議そうに見つめていた。
猫は上から下へと雪を目で追ったりしていて、せわしない様子だった。そういえば、私の猫が雪を見るのは初めてかもしれない。初めての雪を、猫はどのように感じているのだろうか。
雪と、それを見る猫を眺めていた私の心は、外がどんどんと寒くなっていく一方で、ぽかぽかと温まってゆくのであった。
その後、一時停止していた映画を見てから、夕食の準備に取り掛かった。
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