第12話

また、4人で旅をするために。

この獣人と人間の差別を止めるために。

探しに行こうと決めたものの、情報が少なく僕ら2人は苦戦していた。

「〜〜っ! マジで朝顔ないじゃん…」

ここ数日の疲労のせいか、黒花の顔は少し青白かった。

もっとも、鏡を見ると僕の顔も相当血色の悪い色になっているのだが。

その疲労と取り換えに手に入れた情報は朝顔はかなりの希少種または存在しないということしか得られなかった。

きっとこの程度の情報ならカノンがいたらすぐにわかっていたことだろう。


「直生ー! マジで情報ないよどうする!? 」

こっちの世界『アポトール』はカノンたちがいる世界『アヴェーヌマン』とは違い、スマートフォンなどの電子機器があまり普及していない。というか開発されてすらいない。

簡単に言うと、アポトールは中世ヨーロッパ。その戦争が獣人と人間の間に起こっていることを除けば、8割型一致している。

アヴェーヌマンは現在日本と変わらない。スマートフォンやパソコンなども定着し快適な生活を送ることができる。

しかし、それは人間側の生活だけだ。

アヴェーヌマンには3つの柵が存在する。

1つは上流階級と庶民を分ける柵。この間は人間間でのいざこざがよく起きるが、人間だから良いという理由で収められることが多い。

もう1つは庶民と獣人…獣人の中でも比較的人間の血が濃いものが住んでいる。

最後の1つはお察しの通り獣の住居だ。獣人の違い濃いもの、罪人などが追いやられる場所。

カノンたちがいるのはこの最後の柵の部分。

我々とは違い、命を落とす可能性が圧倒的に大きい。

アポトールの方が情報収集は難しいが、安全といえば安全だろう。

アポトールは獣人が人間を滅ぼそうとしているが、無闇に捜索を行ったりはしない。

見つけたら殺す、捜索は禁ず。

だがそのせいか、余り発展の傾向が見られない。

人間の知識とは恐ろしいものだ。

人々との交流を断ち切ったため、文明の発展は大きく遅れていると言える。中世ヨーロッパ並みに発展できたのも、獣人が人間に惚れ、その人間が生み出したものが流通したからだ。


(ふふ…いっそのこと獣人の嫁にでもなってしまおうか)

ふと思いついた冗談。それは悪い案ではなかった。

よく考えてみれば意外と現実的な案ではある。

「…………」

「黒花、僕に案が1つある」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヴィンデ にゃんな @nyannnyann

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ