第11話

「直生…」

さっきの直生の一言にうちは圧倒された。

さっきまで響くように低く打っていた心音は高鳴り始め、頬が紅潮しているのが自分でもわかった。

(うちは…)

うちはなにを怖がっていたのだろう。どうして踏み出せなかったのだろう。


「まず黒花は元々そういうの考えるタイプじゃなかったじゃん。前は壊れてたって次元じゃないほどおかしかったし」と直生が言う。

思えばあの頃のうちは今のうちよりやばいことを平気でやっていたっけ。

怖いもの知らずだねってわらった日々。あの頃が1番楽しかった。

「…そうだね」

壊されたのは獣人のみんなを救った後の朝だけではない。

うちらそれぞれの生きる希望だった4人での旅を打ち消されたのだ。

黙っているわけには、いかない。


(そうだ。

 また4人で、一緒に…)

直生の呼びかけで膝下から上がっていた頭を、さらに空へと向ける。

「そうだね! そうだよ! 探しに行かなくちゃ…! 」


4人で旅するあの日々を取り戻すために。


そして、この差別を止めるために…





※すぐ立ち直ったみたいになってるけど1週間くらい立ってます※


◆◆◆

「黒花たち元気でしょうかね〜」

「さあね。アタシらには確かめる術がないからねぇ…」

「まったく不運なことです。あっち側には私たちの世界での出来事という手がかりがありますが、こっちには無い。あったとしても0に等しいものですし…」


マツと2人で泣き合い、励ましあった夜の次の日。

私たちは手がかりを見つけようとするものの、全くそれっぽいものがなかったので手がかりだけでなく戦意すら0へと一直線だった。

「こういう時我々大体貧乏くじ引きますよねぇ…」

「せめてサオさんの体だけでも残ってて欲しかった…」

サオさんはクラスター弾で自爆した後、体が空気中へと消え物質は気体へと化してしまった。


「そういえばヴィンデってなんでこの名前にしたんでしたっけ」

会話しかすることがないので、とりあえず頭に浮かんだ素朴な疑問を言葉で発する。

「ヴィンデは黒花が朝顔くらい綺麗な朝をみよー! とか言って…」

「朝顔ですか〜…」

((朝顔…))

その素朴な疑問は大きく事態を動かした。


「朝顔? 朝顔じゃないですか? 珍しい、この世界で発見されていない、豪運の黒花がつけた名前、サオさんの名前の字が入ってるとか色々ありますし」

そう。朝顔はこちらの世界の植物図鑑では確認できていない。

薬草などをよく使う職業病なのか、かなりマイナーな図鑑まで見てきたが、似たような花すら存在しなかった。

つまりはかなりの希少種、又は存在しないの2択になる。

そしてこの現象を解く花がありきたりな花な訳がなかった。

これらを考慮して6割型朝顔ということとする。

これをなぜ朝顔だと断言できるのか。

それは、黒花という豪運の持ち主が朝顔に向かうヒントとなる組織の名前をつけたという点だ。

黒花はとにかく運が良かった。

ブラックジャックをした時は最初で21になるしババ抜きなどは論外。宝くじを定期的にひいとけば一生の生活は安泰レベルで運がいい。


「マジかぁ、でも確認できてないんだったら探すのむずそう…」

「前向きにいえば珍しいから見たら忘れない。ということは絵を見せて回ればいけるってことですね」

(そう、つまり予想より遥かに早くにエンドロール回せるかもしれませんよ! )

「でもカノンもアタシも絵下手じゃん」

「…………」

貧乏くじを引くのは、やっぱり私達なのかもしれない。

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