第2話 『Spiritual』発売開始
それから春海が昏睡状態になって数日後、
春海の作ったゲーム『Spiritual』が発売された
『───ついに『Spiritual』発売です!
都内の店舗では長蛇の列が並び、
ソフトは即完売!ダウンロード版はアクセスが殺到しサーバーダウンするほどで───ピッ』
「春海が危ないってのに···」
俺は晴海の病室で見ていたテレビを消し、
リモコンを机の上に置いた
「姉さんは何があっても予定通り発売するようスポンサーの人達に言ってたみたい。
·····京志郎兄さんの誕生日に間に合うように」
春海の弟であり俺の従兄弟、秋也は
寝ている春海を見ながらそう言うが、
俺には納得出来なかった。
「だとしても、だ。
自分がどうなるのかわかってたみたいに···」
きっとそれは合ってるのだろう。
春海はその時、自分の意識がないだろうと
予想していた。
(···昔からそういう奴だったよ。全部わかってるみたいな顔して···本当にそうなんだけどな)
「まあまあ····。あっ姉さんからのプレゼント
開けてみようよ」
秋也は元々春海に言われていたかのように
机の下から包装された箱を俺に手渡す
箱には『京志郎へ』のカードが付いていた
「お前がグルだったのか···。まあいいか
春海とお前がせっかく用意してくれたしな」
プレゼントを開けてみると中には一通の手紙
そして····
「わあ!それって『LSL』に『Spiritual』の
ソフト?僕も姉さんに貰ったんだ!
これで『Spiritual』を一緒に遊べる····あれ?
でも兄さんのソフトはちょっと違うみたいだ」
「·········」
俺は驚いて声が出なかった。
箱の中にはテレビに映っていたような
VR型ゲーム機『LSL』と秋也のとは少し見た目が違う『Spiritual』のソフト。
が、今はそれはどうでもよかった
俺はただ黙って、手紙を開く
『京志郎へ 誕生日おめでとう。
プレゼントびっくりした?
このソフトを使えばSpiritualで限定アバターが使えるよ。あとSpiritualの中にまだプレゼントが隠してあるから良かったら探してみて。
今頃、このプレゼントをもらって京志郎は怒ってるんだろうね。でも秋也は責めないで
私が頼んだだけだから。
きっとまた会えるよ 京志郎次第だけどね
ハッピーバースデー 春海より』
「·····なんだよこれ、お前らしくない···」
秋也が心配そうに俺を見る
その顔はなぜかはっきり見えなかった
(なんでだ?なんでこんなに歪んで見え···)
気づけば、俺は泣いていた。
手紙に涙がこぼれないよう手でそれを拭う
「京志郎兄さん、大丈夫? ハンカチいる?」
秋也のハンカチを差し出す手を断り、
手で涙を拭いた
「ああ、大丈夫だ···」
落ち着いてからまた手紙を見た。
それは確かに春海の字だった
(『きっとまた会える』···か)
それがいつなのかはわからない。
····けど、『Spiritual』の中のプレゼントを
探せば春海に会えるかもしれない。
何も根拠は無い。だが、そんな淡い期待を抱き俺は『Spiritual』をやることを決めた
Spiritual Would @Narusawa_Yuki
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