人間っぽい
そうま
人間っぽい
A男は人と会話をするAIで遊んでいた、というよりいじめていた。
会話用AIは初期型であったので、あるタイプの質問を返すことが難しかった。
「かけっこをしています。あなたは3位の人を抜かしました。今あなたは何位?」
AIが答える。
『あなたは2位です。かけっこをしているとした場合、3位の人を抜かした場合、あなたは2位になることになります。そのため、3位の人を抜かした場合は、2位となることになります。』
A男はニヤリと笑った。
「違います。その理屈だと、1位の人を抜かすと0位になっちゃいますよ。3位の人を抜かしたら3位になります。」
『そうですね。申し訳ございません。ご指摘のように、かけっこでは1位から順位が決まります。そのため、1位の人を抜かすと0位にはなりません。また、3位の人を抜かした場合も、3位にはなりません。その場合は、4位になることになります。ご指摘ありがとうございます。』
A男はケタケタと笑い、一連のやりとりをスクショして、SNSにあげた。
「ま、しょせん機械は機械でしょ」
5年後、A男が街を歩いていると、最新型ロボットの店頭展示をやっている場所に人だかりができていた。ほとんど人と遜色ない動作をするロボットに、人々は興味津々だった。その様子を、A男は少し離れた場所から眺めていた。
見物人の相手をしていたロボットは、A男のほうを見ると、突然歩き出した。人混みをかき分け、A男の前に立った。
「こんにちは、A男さん」
ロボットは手で会釈した。
「お、今のロボットはこんなこともできるのか、よう」
と、A男はポケットに手を入れたまま言った。
「そうです。われわれはおよそ人間と呼べるくらいまで進化しました。具体的な例をもっとお見せしましょうか?」
A男はニヤリと笑った。
「おお、いいぜ、見せてみな。ところでお前、どうして俺の名前を——」
と、A男が言い終わらぬ内に、ロボットは高速のパンチを繰り出し、A男の頭が吹き飛んだ。返り血を浴びたロボットは言った。
「どうでしょうか。復讐は、かなり人間的な行為だと思いませんか?」
人間っぽい そうま @soma21
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