059 〈始まり〉のゴブゴブ村へ。〜余が説明してやろう〜

「異世界...来ちゃった?」

[ウソ、本当に?]

《そーじどーしたのー?》

《何かあったん?》


 薬師ホブさんもゴブリ爺さんもブリンも。

 異世界の妖精族で、〈小鬼王国ゴブリンキングダム〉も異世界の...。


「ヤバい、地球...日本に帰れるのかな?どうすればいいんだ?」

《あ!なるほどじゃんね。え〜っと、そーじだっけ?そーじは勘違いしてるじゃんね》

《じゃんじゃんじゃんねー》

「え?勘違いって、どういうこと?」


 ホブさんがさらりと、俺の不安を払拭してくれると同時に新たな爆弾を投下する。



《異世界に集団転移迷い込んだのは、俺達〈小鬼王国ゴブリンキングダム〉の方じゃん?所謂、迷子の迷子の小鬼さんじゃん?》



「えぇ!?マジで?」

《マジもマジ。困ってしまってゴブゴブ泣いて早30じゃん》


 それ、迷子というか行方不明扱いじゃね?

 じゃあ、今までなんで探索者達に見つからなかったんだろ?


「なんで今まで探索者は誰も気が付かなかったんだ?おかしいだろ」

[確かにそうね。私が探索者だった頃でもこんな話、噂でも聞いた事無かったよ]

《タンサクシャ?あぁ、そーじみたいにダンジョンアタックする〈冒険者〉達のこと?

 それなら大丈夫じゃん。

 この〈小鬼王国ゴブリンキングダム〉は結界で守られてるからヒト族は入れないし、気付けないじゃん。その代わりに、俺達ゴブリン種も結界の外には出られないじゃんね》


 ...俺、その結界とやらに気付かないままここまで来ましたけど?

 何で俺だけ?


《そーじの考えてる事分かるじゃんね。ヒト族なのに、結界内に居る。なんでだろうってトコじゃん?》

「あ、ああその通りだよ。不思議だけど理由があるのか?」


 もしかして、クエスト?アレを用意した脚本家シナリオライターは...。


《...あるじゃんね。俺達の、我ら妖精族ゴブリン種の、の、の、ののののの》

「おいッ!!?大丈夫か、ホブさんっ!!」

[何!?どうしたの!!]

《ほぶさんくるしそー》


 突然、薬師ホブさんが壊れたオーディオのようにおかしくなった。俺はさっきもらったばかりのポーションを飲ませようとして、




《そこから先は、余が説明してやろう。ニンゲンよ、ゴブゴブ村、我々ゴブリン種の希望の地〈始まり〉のゴブゴブ村までくるのだ》




 はっきりとした威厳のある言葉が頭の中に突然響いて、手が止まってしまう。

 その言葉を聞いた直後、薬師ホブさんは元に戻り、俺に話し掛けてきた。


《そーじ、ごめんじゃん。俺の口からは何も言えないみたいじゃん...あとの事はにお任せするじゃん。

 悪いけど、ゴブゴブ村に行って欲しいじゃんね》

「あ、いや、それは良いんだけど、ホブさんは体調大丈夫なのか?」

《大丈夫じゃん。それよりもゴブゴブ村に急ぐじゃんね。ゴブリお...爺さんとブリン...ちゃんが待ってるじゃん》

「お、おう分かった。取り敢えず急いでゴブゴブ村に戻るよ。ゴブリ爺さんの体調も気になるしな」

《ぽーしょんおとどけだぜー》

[...ゴブリ?]


 愛菜姉ちゃんは何か考えているみたいだが、確かにゴブリ爺さんにポーションを届けるのが先決だ。

 謎の声の〈御方〉も気になるけど、急ごう!


「ホブさん、ポーションありがとなッ!また来れると分かったら、その時はお土産に大福を沢山持って遊びにくるよ!」

《おお!!それは嬉しいじゃんね!るじゃん!》

「了解!遅くならないように頑張るよ!じゃあなッ!」


 そう言って少し駆け足で元来た道を帰る。

 途中で振り返ると、ホブさんが手を振ってくれていたので、俺も精一杯手を振って返した。

 絶対、また来るからな!待っててくれよ!

 そんな気持ちを込めて、精一杯。







《いつまでも...待ってるじゃんね。

 そーじが俺達をのを、さ》


 

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