057 ホブさんと〈ポーションの対価〉。〜甘くて美味しくて食べた事ないもの〜
ホブゴブリンの集落、というよりは町、かな。
目の前の、丸太を地面にブッ刺して作ったであろう立派な防御壁。いやさ、この丸太何mあるのさ?見上げるだけで首が痛くなりそうな丸太を、重機もなしにどうやって地面に刺したのかなぁ、なんて。
そんなこと気にしている自分が馬鹿だなって思うくらいの筋骨隆々のホブなるゴブリンさん達に囲まれちゃった。
取り敢えず...俺の
「ホブホブホブ?」
「ホブ」
「ホブホブ...ホブ?」
「あ、やっぱり〈ホブ〉なんだ...ヤベッ」
ついつい、いやだって、絶対誰でも思う事だよな?
俺の
[総司!今こそ貴方の
だいたい、こんなに強そうなホブゴブリンなんて初めて見たわよ!普通はゴブリンよりちょっと大きいくらいなんだからっ!」
やっぱりそうなんだねー。ネット情報のホブゴブリンと目の前のホブさんじゃ全く別の生き物としか思えんわ。
《じゃじゃじゃーん!つきさんじょー!つきにまかせとけー!》
「ヤダッ!?月ったらカッコイイッ!」
[
愛菜姉ちゃん、うっせぇわ。
《...》
「ホブホブホブ?」
《...》
「ホブッ!?ホブホブ!」
《...》
「ホブ...ホブホブホブッ。ホブ」
なんか、ホブさん達のリアクションがやたらとデカいから、こんまい月との対比にビクビクするよ。大丈夫かな...なんか奥のホブさん拳を握りしめて怖いんだけど?
俺の頭くらいならリンゴみたいにグシャッていっちゃいそうな大きな手なんだよね、ホブさん。
《そーじ、とりあえずなかにはいればいいじゃんね、だってー》
「まさかの三河弁きた?急にフレンドリーさが増したじゃんね?」
[何おバカな事言ってるのよ。ホブさんの気が変わらない内に行くわよ]
「良し!それじゃ、いこまい!」
[それ、三河弁じゃなくて名古屋弁だから。三河と名古屋の人に謝って]
《どっげっざー!どっげっざー!》
危険じゃないと分かると、途端に元気になるよね。そうでもやってないと、魔物の町に足を踏み入れるなんて出来ないよ、まったく。
ホブゴブリンの町は、ゴブゴブ村とは違い、木造だが、しっかりとした家屋が建ち並んでいた。
魔物の進化は、知能や技術、生きていく為の欲求までもが向上する事があちらこちらに見受けられる。
女性や赤ちゃんのホブゴブリンも居て、本当に人間社会となんら変わり無い光景が、凄く印象的だ。
「ホブホブホブ」
《そーじ、このいえにはいってだってー》
「了解。では、お邪魔しまーすっと」
案内された家の中には、少し年老いているように見えるホブゴブリンがいて、カウンターの奥で何かの作業をしていた。
「ホブ?...ホブホブ。ホブ?」
《そーじ、ここはくすりやだよ、なんかようかい?って》
「お、いきなり目的地か。有り難いな」
「ホブ、ホブホブ?」
ホブさん達って、あんまり人間に対して忌避感を持ってないよな。門番のホブさんも最初から敵対するような感じは無かったし。
《そーじ、どーするのー?》
「ああ、ごめんごめん。月、ポーションっていうお薬が欲しいって伝えてくれる?」
《りー!》
《...》
「ホブホブ。ホブ...」
《そーじ、あるけど、ただでは...だって》
「それもそうだよな。お金は...日本円は流石に使え無いよな?」
[逆に使えたらビックリよね。対価になりそうなのは、ゴーブの実?それとも魔石とか?]
「月、何とポーションを交換してくれるか聞いてくれる?」
《らじゃー!》
《...》
「ホブ...!ホブホブホブホブ?」
ん?何か欲しい物があるのかな?
「月、ホブさんは何が欲しいって?」
《ん〜...あまくって、おいしくって、たべたことないもの?だってー。なにかな〜?》
甘くて美味しくてホブゴブリンはほぼ間違いなく食べた事ないであろう食べ物。
俺、持ってるじゃんね。
日本一美味しい(俺調べ)〈小柳和菓子店〉の大福。
あゝ、オバチャンの作った大福が一つの命を救うかも知れないわ。
いつもありがと、香澄さん。
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