055 〈クエスト報酬〉と脚本家の存在。

[総司、そういえば最初のクエスト報酬を入手してたよ。収納に直接入ったみたいだから確認してみたら?次のクエストに関係しているかもよ?]


 ブリンに教えてもらった5階層へと続く道を進んでいると、愛菜姉ちゃんがクエスト報酬の有無を教えてくれた。

 因みに、ダンジョンの5階層と聞いた俺は勘違いをしていた。

 ブリンに教えてもらったのだが、階段で降りる階層ではなくこの森の中央を1階層として、2、3、4、5、6、7と円状にエリア分けされているらしい。中央に向かうにつれて上位種が住んでおり、ゴブゴブ村は7階層にあたるらしい。

 尚、中央エリアには城があり、王様、つまりゴブリンキングが居て〈小鬼王国ゴブリンキングダム〉と呼ばれるこの森を統治しているとの事。

 ...探索者協会、大丈夫か?F級ダンジョンにゴブリンの国が出来てるぞ?

 しかも、ゴブリンキングなんて単体でAランクの魔物だよな?統率された上位種の軍隊なんて、考えるのも恐ろしいんだけど...。


「了解。え〜っと、コレかな?」


 収納から見覚えの無い何かの果実を取り出す。

 パッと見ると、自宅マンションの近くにある田代お爺さんの家の庭先で良く見かけるアレだった。


「柿?いやまさかな...しかも渋柿っぽい。鑑定してみよ」


【ゴーブの実】・・・〈小鬼王国ゴブリンキングダム〉第7階層のゴブゴブ村でのみ収穫出来るといわれている果実。

 ダンジョン界一の渋さを誇るゴーブの実は、ゴブリン族の大好物。品質の高い物はゴブリンキングに献上される。

 品質〈秀〉。トレード可。

 ゴブリンの大好物かぁ...〈秀〉ってどのくらいなのかな?何か、みかんの箱を思い出さない?

 〈ダンジョン界一渋い〉って、フリよね?アンタは人間代表として食レポする義務があるわ!さぁ、パクッといっちゃいなっ!


「いかねーよッ!?そんな人間代表ゴメンだわ...トレード、出来るのか。よし、トレード!」


ーーーゴーブの実をトレードしますか?


1. skill ticket〈ランダム〉


2. ¥52


「えぇ!?まさかのスキルチケットぉ!?

 スゲェじゃんゴーブの実!ダンジョン界一は伊達じゃないな!」

[ウソ...スキルチケットなんて高rankダンジョンでしか手に入らないっていわれているのに...。

 もしかして、〈ランダム〉なのは品質が〈秀〉だから?]

「2番はあれか?ゴーブの実だから52ゴブ円とか?」


 トレード使ってて初めて1円単位見たわ。

 ていうか、王様の献上品やっすいなぁ...。


[総司、トレードする?スキルチケットは〈ランダム〉でも希少レアよ?]

「トレードしないよ?ゴブリンの大好物ならホブゴブリンとの交渉に使えそうだし。

 それに、俺にはトレードチートskillがあるしね」

[ふふふ。そうね、それが良いわ。総司らしい]


 今はポーションを手に入れるのが先決だからな。skillなんかは後から自分で頑張ればいいだけだし。


 それからも森の中を進む。

 途中、ギリギリ目視出来る距離の集落とそれに続く道を発見した。おそらくアレが第6階層の村だと思う。ブリンによると、第6、7階層はゴブリンの生産者達がそれぞれに集落を作って暮らしているので、その境目はあまりハッキリとはしていないようだ。

 遠くに見えているこの村は第6階層らしいので、目的地まであと少しだ。


 第6階層の村をスルーして、森の中を進む。

 気になる事と言えば、ここまで全く魔物と遭遇していない事。

 ゴブ爺さんの杖を持っていたゴブリンや、ゴブゴブ村で討伐した剣を持ったゴブリンは、明らかにダンジョンの魔物の雰囲気があった。

 でも、ブリンやゴブ爺さんは見た目はそう変わらないものの、雰囲気が全く異なっていたと感じたよな?

 ゲームでいうNPCみたいだった...。


 此処は一体どうなっているんだ?

 あの〈悪いゴブリン〉がダンジョン本来の魔物だとするのなら。

 〈小鬼王国ゴブリンキングダム〉と〈ダンジョンの意志〉は対立している?


 つまり、


 〈小鬼王国ゴブリンキングダム〉は、ダンジョンのシステムから生まれた魔物では無いってことか?



 俺がこのダンジョンに入ったタイミングで、態々クエストまで用意して。

あまりにもタイミングが良過ぎる。



 誰だ、俺を誘導したのは?



 何処のどいつだ、このクソったれなクエストの脚本家シナリオライターはよ。






 

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