048 1つ目は、小鬼《ゴブリン》ダンジョン。
〈第338F〉ダンジョンにある探索者協会出張所に足を踏み入れる。
昨日の楽しかった歓迎会の後、月が寝てから近場のダンジョンの情報を集めた。
やはりF級ダンジョンは多く、出現する魔物や階層数は似たり寄ったりだった。スラⅡダンジョンのように特化したダンジョンも幾つかあったものの、カード集めより探索者rank上げを目標にしているので、踏破重視で探した。
検索バーに【F級ダンジョン 狭いNG 近場 推奨Lv10前後 駅近】と打ち込んで絞る。ちょっとグルメサイトで飲食店探しをしているようで、去年末の会社の部署忘年会の店探しを押し付けられた記憶が脳裏をよぎった。
幾つかの候補を見ながら、夫々の特徴を確認していると、愛菜姉ちゃんからアドバイスが飛ぶ。
[ピコン。総司は人型の魔物と戦った事無いよね?rankが上がると〈人狼〉みたいに二足歩行で人間と同じ動きをする魔物が出るダンジョンもあるから、慣れていた方が良いと思うよ。
魔物と分かっていても躊躇してしまう事もあるし、その隙を突かれて大怪我しちゃ大変だから、ちゃんと戦って止めを刺す事を経験した方が良い]
流石アドバイザー。仰る通りです、と絞ったダンジョンの中から該当するものを選び、情報を集めてから就寝した。
このダンジョンは通称〈
但し、F級に分類される通り上位種は殆ど出会わないらしい。仮に出会ったとしてもゴブリンソルジャーという剣を使うヤツと、ゴブリンマジシャンという魔法を1種類だけ使えるヤツだけ。
ボスはゴブリンナイトという騎士のように剣と盾を使う上位種と、取り巻きのゴブリン×チーム人数らしい。月はカウントされないと思うので2対1だろうと思っている。
出張所内の探索者の人数は疎らで、事前情報通り不人気なダンジョンなんだな。
準備は整えて来たので、そのまま転移陣へと向かって歩く。
このゴブリンダンジョンは3階層あり、3階層を抜けた先にボス部屋がある。先に進むにつれて出現する魔物の数が増える。
「さてと。頑張りますか」
今日は月に探索者御用達ブランド【
昨晩ネット注文したのだが、今朝には近くのコンビニで受け取る事が出来たのは、世の中がダンジョン中心だからだろうな。
skill収納+αの隠れ蓑としても良いかな、というのと何時迄も市販のリュックはかえって目立つからな。
《そーじがんばってな〜》
「おうよ。頑張るわ!」
[総司、ゴブリンは雑魚ですが、油断しないようにしてね]
「ありがと。気をつけるよ」
愛菜姉ちゃんのいつもの[ピコン]音なんだが、今朝から消せるようになった。曰く、[アドバイザー
月との念話は外部から受け取る感じ、愛菜姉ちゃんのは、俺の頭の中、内部から直接伝わる感じ。愛菜姉ちゃん自信が[ピコン]音を嫌がっていたみたいなので、良かったのだろう。
確かに真面目なシーンでは無い方が良いかもね。
ゴブリンダンジョンは森林タイプで、ダンジョンでなければ森林浴を楽しみたくなるような穏やかな森。足元には可愛らしい花が咲いていたり。これで小川でも発見できれば昼休憩はピクニック気分になれるな。
和みそうな気分を抑えて、手頃な木にククリナイフで目印をつけ左方向に進む。
目視可能な範囲内で定期的に目印をつけながら進んでいると、前方の木陰から醜悪な顔をした1匹の緑色の肌をした二足歩行の生き物が飛び出してきた。
うわぁ...面と向かって見るとマジでないわ。
尖った耳に顔のサイズに合わない大きな鉤鼻、口から少しはみ出た牙が見える。
それほど強そうに見え無いのは、その体躯の小ささのせいだろう。身長180cmのおれの腰より少し高いくらいしかない。
先ずは鑑定眼を使う。これは決めていた事だ。だけどさ、先に一言だけ言わせてくれよ。
言葉なんて通じないかも知れないけど、言わせてくれ。
「なんで杖持ってんだよ!!」
十中八九、ゴブリンマジシャンだろお前。
殆ど出会わないヤツが初ゴブリンとか、嫌がらせとしか思えんわ!
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