032 言えなかった『お帰りなさい』、言いたかった『ただいま』。
想定外の情報過多の状況を、この度〈アドバイザー〉に就任したアナさんの、
しょうがないじゃん?逆らえない感じ...本能で理解したっていうかさ、なんかさ...。
「そう言えば、ここのダンジョンボスもスライム系だって話だった筈なんだけど、この間の時みたいに
[ピコン。可能性は限りなく少ないと思うわよ?スライムには〈怨み〉なんて感情があるなんて聞いた事無いし、同族意識も限りなく低いみたいよ。そういう意味では月はかなり特殊なスライムになるわね]
「...いやさ、アナさん。やっぱり口調変わり過ぎてない?もはや人格でしょ?俺思うんだけどさ、アナさんってーーー
愛菜姉ちゃん、
の友達の香織さんでしょ!俺の憧れの香織お姉様!」
[ピコン...この
そこは『愛菜姉ちゃん!会いたかった!』でしょうが!15年、15年振りの感動の再会シーンをぶち壊しやがって!泣かすぞこの野郎!
だいたいね、アンタ香織に告白して玉砕したじゃないの。え〜っと確か、『総司君はそんな風には見れないの。ごめんなさい』だったかしら?いつまでもフラれた相手を憧れとか言うな、良いオッサンがキモいわ!!
小さい頃は『ねぇね、ねぇね』とか『おとなになったらあいなねえちゃんとケッコンする』とか言ってた私の可愛い総司はどこにいったのかしら?それか「ねぇ?」...]
「やっぱり、愛菜姉ちゃんなんだね?」
[ピコン。...総司...うん、愛菜だよ]
「グスッ...会いたかったよ...。
この15年間、俺は、俺は愛菜姉ちゃんを忘れた事なんか無かった...なんで、なんで死んじゃったんだよ!?...なんで探索者なんて危ない事やってんだよ?
分かんのかよ、
悲しくて、
淋しくて、
悔しくて、
泣いて、
怒って、
また泣いた俺の気持ちがよ!!
勝手に死んでんじゃねぇよ、バカ愛菜姉ーー!!!」
[ピコン。......グスッ、ごめん、ごめんねぇ...グスッ...突然居なくなって、独りぼっちにしちゃって、ごめんねぇ...ぞゔじぃ...]
「グスッ...でも、ちゃんと帰って来てくれて、ありがとう、愛菜姉ちゃん。
だから、だからさ、
『お帰りなさい』
グスッ...大遅刻だよ。門限とっくに過ぎてるから施設だったらご飯抜きとトイレ掃除だよ?愛菜姉ちゃん」
[ピコン....うん。『ただいま』、総司。
うふふ...
「しょうがないから一緒に怒られてやるよ...ぷぷっ、あははは!」
俺は、泣き笑い顔でぐちゃぐちゃで、頬を伝う涙が口に入って塩っぱくても。
大きな、大きな声で笑った。
15年前に言えなかった『お帰りなさい』を、まさか自分自身があの時憎んだ探索者となり、
憎たらしくも、可笑しくて。
ほんの少しだけ切なくも、嬉しくて。
腹の底から大きな声を出して、悲しみがすっからかんになるまで、ぐちゃぐちゃに、笑った。
こんな
幾らでも、抱え込んでやるさ。
そんな事を世の中に吐き捨てながら。
[(言いたかった『ただいま』を15年も待っててくれた
再び
運命の悪戯だとか、神の思し召しだとか。
そんな
ーーー俺達は
、と。
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