031 ◉善悪報応し、禍福相承く。〜縁なき衆生は度し難し〜
「あ〜あ、ダリぃよな〜まったく」
「マジでそれな。アイツがバカやらかしたおかげでよ〜」
「何捕まってやがんだよって感じだよな、蛭間のヤツ」
「顔は良いのにね〜蛭間っち」
「...」
男女5人がC級ダンジョンを探索しながら愚痴をこぼす。
この5人は元C級探索者の蛭間 隆也と一緒に探索していた連中で、金をもらってパワーレベリングを請け負っていたB級探索者チーム〈銀翼〉。
先程の会話の通り、これまでも金を持ってそうな新人に近づいてはパワーレベリングの話を持ち掛けて小遣い稼ぎをしてきた阿呆共だ。
蛭間がダン警に捕まった事により小遣い稼ぎが出来なくなってしまった為、仕方無くダンジョンを探索している最中だった。
「アイツ逃げた先でシャドウウルフに襲われるなんて運悪過ぎだよな」
「でもよ〜、なんでシャドウウルフの群れに襲われて生きてたんだろな?アイツの実力じゃ難しくね?」
「あー確かに。そんな実力無いわな、蛭間」
「ムリムリ。あたしでもしんどいもん」
「...死んでてもおかしくない」
『あははははは!!獣如きに譲る訳がなかろうが、阿呆共よ』
「「「「「ッ!!?」」」」」
突然現れた1人の壮年の探索者に驚き身構える〈銀翼〉の5人。今の今まで気配を全く感じ無かった、否、この見晴らしの良い荒野ダンジョンに突然現れたのだ、それも目の前に。
腐ってもB級、それなりの場数は踏んでいた事もあり、彼等は直ぐに意識を切り替えた。
「なんだテメェ!何処から現れた!」
「おいおい、オッサン!俺等が〈銀翼〉だと分かって言ってんのか?あぁん?」
「オッサン殺してやろうか?今機嫌が悪りぃんだよ俺等」
「ヤッちゃう?」
「...ダ、ダメ、に、逃げ、逃げなきゃ!」
「あぁ?どうしたんだよ可奈、こんなオッサンなんかにビビってんのか?」
「嬢ちゃん、心配せんでも良いぞ?貴様等は絶対に逃さんからな、私が」
「アーハッハッハ!聞いたかよ?このオッサンが『逃さない』だってよ?」
「アレ〜?馬鹿にされちゃってるのかな〜?マジで殺すぞ?」
「ホントにウザい。死ねよ!」
「ッ!!」
ーーーボトリ、ボトリ...
「ぎ、ギャァーーーッ!!?」
不意打ちを目論んだ
不思議な事に血が一切出ていない...。
「あゝ、逃さんぞ?無論、試すのは自由だがな」
泣き叫ぶ男以外の面子は一歩たりとも動く事が出来ず、また、一言も声を発せなかった。
目の前の壮年の男は武器を構えておらず腕を組んでいる。
腰には納刀されたままの黒塗りの刀を佩いていた。
「こんな阿呆共がB級だとは世も末だの。温い時代になりおったわ」
「だ、誰だよキサマッ!?こんな事してタダで済むと思ってんのかよ!協会が黙ってねェぞ!!」
「は、犯罪者よ!
ーーーゾワゾワゾワゾワ!!!!!
「仲間だと?弱き者を
ーーー【斬】
「仲間とは何だ?答えてみよ」
ーーー【斬】【斬】【斬】
「どうした?仲間とは何なのだと問うておろうが」
〈銀翼〉の周りの地面には、刀で斬ったとは思えない程の痕が次々とつけられていく。
「いィ、うぅ、腕がぁ...俺のウデガァ」
「な、仲間はた、助け合うモンだ!」
「い、一緒にい、いるチームで...」
「ヒッ、ヒィィ...ゆ、許して...」
「...仲間、は、信じ合う者達の、集まり...」
「成程成程、信じ合う者達が一緒に助け合う集まり、か」
ーーー【斬】【斬】【斬】【斬】【斬】
「では貴様等全員が同意の上で行っていた
〈銀翼〉の周りには、斬撃の痕が彼等を取り囲むように歪な円を描いていた。
「縁なき衆生は度し難し」
ーーーチンッ......
「...何、殺しはせんよ。
同日午後、〈第136C〉ダンジョンの1階層の
5人に目立った外傷は無く、ダン警によって無事保護され、直ぐに病院へと運ばれた。
調査関係者によると、〈銀翼〉と呼ばれていたチームのメンバーは、翌日の未明に意識を取り戻したが、事情を聴取したものの話す内容は支離滅裂であり、『俺の腕が』『仲間、なかま、ナカマ...』などと意味不明なモノであったという。
ただ、メンバーの1人、佐藤 可奈は比較的落ちついて話をする事が出来たのだが、その内容にダン警達は困惑を極める事となった。
『私達〈銀翼〉は低rank探索者をターゲットにして、パワーレベリングの見返りに金銭を要求する行為を行っていました』
それは、犯罪に該当する訳では無いが褒められた行為でも無い。
明確な
そもそも、そのような促成栽培でrankを上げたとしても、早い段階で命に関わる事態に陥る事は明らかだからだ。
ダンジョン探索は甘くないのだ。
この事態に探索者協会はパワーレベリングに関する取り決めと罰則を制定する事となった。
又、〈銀翼〉の5人には降格と罰金処分を課した。
だが、〈銀翼〉の面々は探索者証を返却し引退する事となった。それは贖罪の為などでは無く、彼等は利き腕が動かなくなっており、探索者を続ける事が不可能な状態だったからだ。
医師でも原因が分からず回復は絶望的と診断された彼等は、人目から逃れる様に姿を消したという。
その後〈
『我が同胞達と築き上げた
御方より【我々】に〈赦すな〉と断が下されたのだ』
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