024 スライム(カード)をもと......おや?...え!?
スライム狩り2日目。
俺は昨日と同じく朝一からスラⅡダンジョンのある出張所に来ていた。
「あ、おはようございます」
「おはようございます、折谷様。
連日での探索ご苦労様です。
朝も早いのに、真面目なんですね」
ん?俺って名乗ったっけ?...あぁ、受付機を使ったから履歴が残ったのかな。
それにしても、美人さんに面と向かって褒められると照れるわ。
「えぇ、いや、若く無いんで地道に頑張るしかないんですよ」
「ふふふ。ではそういう事にしておきますね」
「はい。では、行って来ます」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
多分、今の俺は顔が赤いと思う。恥ずかしさを隠すように急いでダンジョンに転移する。
[..........]
ダンジョンは相変わらず人気が無く、湿地帯に入り、昨日同様にスライム狩りを進めて行く。
順調に狩りを進め、休憩をとる為に腰を下ろせる場所を探していると、奇妙な光景が目に入ってきた。
ーーーポヨヨン!ポヨヨン!
ーーードンッ、コロコロ。
ーーーポヨヨン!
ーーーポヨン....。
4匹のスライムが1匹のひと回り小さなスライムを囲って攻撃していたのだ。
チビスライムは体当たりされてコロコロ転がってしまい、まるで泣いているかの様に小刻みに震えている。
その光景を見た瞬間、俺の中でスッと感情が抜け落ちるのが分かる。
ククリナイフをしっかりと握り締め、スライムの群れに近づき、勢いよく斬りかかる。
「死ね、屑共が」
ーーースパスパスパスパンッ!
流れるように囲んでいたスライム共を斬り刻む。
「ふぅ〜、イカンイカン。自然と手が出ちまった」
チビスライムに過去の自分に重ねてしまったのか、無意識のうちにチビスライムを助ける事になってしまったよ、クソったれが。
ていうか、魔物同士でも仲違いするんだな。
まるで、自我がしっかりとあるみたいな...
取り敢えず、理解出来る出来ないは置いといて、チビスライムに声をかける。
「あ〜何だ、その、魔物にこんな事言うのもなんかおかしいんだけどさ、そのうち良い事あるだろうからさ、その、笑って前を向きなよ」
俺はスライム相手に何言ってんだ、と背を向けて手を振りながら、休憩場所を探しに元の方向へと歩き出した。
少休憩を挟んでからもスライムを狩り続け、昼休憩、そして狩り。と順調にカードの枚数を増やしていく。
「順調!ちょー順調!他人の目が無いってサイコー!」
[ピコン。...総司、可哀想な子]
アナさんから憐れみを含んだ言葉を頂きつつも、狩り自体は順調そのものだった。
午後の休憩中、収納から取り出したチョコレートを食べていると、ソレは突然目の前に現れた。
ーーーポヨヨン!
「うわっ!?って...アレ?お前、もしかしてさっきのチビか?」
ーーーポヨン!ポヨン!
「喜んで...る?正解ってコトかな?取り敢えず襲って来る感じでは無いのは確かか...」
ーーポーヨン、コロコロ。
「ん?何か言いたげな感じだけど...?あ!鑑定すりゃ良いのか。鑑定!」
【バドスライム】・・・スライムの退化種。見た目は可愛いフォルムをしているが、その生態は何でも融解してしまう特性を持つ為、取り込まれると危険。衝撃耐性持ち。
スライムにある一定条件が揃うと、稀に退化可能となり、生まれるスライム。進化の起源となる種の為、様々な可能性を持つ。ただし、非常に弱い為中々生き残れない希少種。
ありゃ〜、コレまた珍しいのを見つけたわね〜。あれ?この子何か持ってない?
「へぇ〜。レアな魔物なんだな、お前...ん?何か持ってんの?」
ーーーポヨヨン!!
鑑定さんの言う通りバドスライムは何かを俺に渡そうとしているみたいだった。
「ん?コレを俺にくれんのか?って【おてつだいけん】!?」
バドスライムが渡してきたのは何と【
取り敢えずコレを鑑定してみるか...。
【おてつだいけん】・・・バドスライムからの助けてもらった感謝の気持ち。バドスライムが心から恩義を感じた際に渡される。
job〈トレーダー〉のみ扱えるアイテム。使用するとバドスライムと契約を結ぶ事が出来る特殊テイミングカード。1度使用すると消滅する。有効期限はバドスライムの気分次第。トレード不可。新発見の
...もうアンタしか見る事出来ないんじゃない?...初耳だわ....
「.....それな。まぁ、感謝してくれてんのは伝わったわ。でも良いのか?俺、魔物を狩る側だけど?」
[ピコン。大丈夫ですよ、総司。テイムされた魔物はキチンと魔物を敵と見做します。skill【テイム】も存在しています]
「あ、アナさんありがとう。そっか。じゃあ〈契約〉とか難しく考えないで友達になる感じでいっか」
[ピコン。ふふふ。良いと思いますよ♪バドスライムの気持ちが変わらない内に使ってみてはどうですか?]
「そうだね。じゃあ、【おてつだいけん】使わせてもらうよ」
そう言って俺は、バドスライムにカードを近づける。
カードを介して光る線が1人と1匹を結ぶ。
俺にバドスライムの名前を決める必要があるようだ。名前を呼んでパスが繋がるのが自然と理解出来たので、迷うことなく、名付けた。
「俺は総司。これから宜しくな、【
[ピコン!バドスライム〈個体名:月〉と特殊テイミングカード【おてつだいけん】を使用して《友達契約》を締結しました]
[ピコン!魔物をテイムした事によりskill【念話】を獲得しました]
《そーじよろしく〜》
「おぉ!?これが念話か...頭の中で会話する感じだな。おう!よろしくな月」
《うん!たすけてくれてありがと〜》
「どういたしましてだよ」
ポヨポヨ跳ねる月を微笑ましく眺めながら俺は、ある重大な事実に気が付いた。
新しく増えた友達の月、
謎の鑑定さん、
そしてアナさん。
「声出して喋るの俺だけ!?また〈変質者〉の危機じゃねーか!!」
[ピコン。総司、早くスライムを狩りなさい?]
《すらいむかろ〜ぜ〜》
「...................り」
折谷総司 ♂ age:30
Lv:13
rank:F
job:トレーダー:Lv2
skill:トレード:Lv2、鑑定眼:Lv2、脚力強化、収納+α、念話new!、変質者※使用不可能
title:×1、変質者、
friends:バドスライム〈月〉new!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます