014 一度は言ってみたいあのCMのキャッチコピー。そうだ、京都に行こ[駄目に決まってるでしょうが、このアホ!]ぉう!?
紫煙が薄く残り香を漂わせる喫茶店内の、少ししみったれてしまったこの場の雰囲気を明るくしようと、話題を変えることにする。
「時雨さん一つ聞いても良いですか?」
腹を割って話をし、マスターから『名前で呼んでください』と言われ、そういえば名前知らないなと気付いて今更ながら教えてもらった。
マスターの名前は〈
もし、この時俺に少しでも武術に造詣があったなら気付く事も出来たのだが、【御堂院】は国内でも有数の剣術の家元で〈御堂院流刀術〉を世に伝える名家の一つで、由緒正しい家柄だった。
だが、これまでの人生を
「何でしょう?」
「俺が今探索しているF級ダンジョンは、魔物が1匹ずつしか出ないんですけど、ダンジョンってそういう仕様なんですかね?」
「そんな事は無いですよ。2匹でも3匹でも、時によってはそれこそ数え切れない程の魔物と遭遇する事もあります」
「え!?そうなんですか?俺の探索してる所は必ず1匹ずつですよ?」
「...あぁ、そういう事ですか。それは
「超、初心者向け...という事はもしかしてF級ダンジョンでも他のダンジョンなら一度に複数の魔物とエンカウントしたりする、とか?」
「もちろん。よっぽど強い魔物以外は、むしろ1匹ずつの方が珍しいですね」
「...もしかして魔物の種類とかも偏ったりして?」
「有りますね。スライムしか出ない所や蟲系しか出ない所。獣系ダンジョンなんかも有りますね。厄介なのはアンデット系しか出ない所ですが、アレはC級からなんで総司君にはまだ早いです」
「おぉう...完全にやらかしてた...」
「だ、大丈夫ですか?」
この時点で、トレードスキルの事を、時雨さんだけには伝えようと決めていた。
「実は――」
「...なんですか、そのチートスキル...」
「あ、やっぱりそう思います?」
「それをチートと呼ばずに何をチートと呼ぶのです。
大体、魔物を倒したらカードが手に入るなんて聞いた事有りませんし、カードを集めてスキルと交換出来る?なんて末恐ろしい職業とスキルを持ってるんですか!」
「アハハハ....バ、バレたらヤバいですよね?」
「当たり前でしょう!口が裂けても言ったら駄目です。もしバレたら、必ずどっかの国に攫われて一生実験体ですよ?」
え、マ?
「お口チャック」
「...本当に理解してますか?」
「ゴメンなさい、気をつけていきます...でも、これなら
「総司君...分かりました。私も出来る限り協力します。探索者やダンジョンについての情報とかならお答え出来ますので、何時でも連絡して下さい...ただ、引退した身なので表立ってダンジョン探索には同行出来ないのですが」
「それは大丈夫ですよ、時雨さん。序盤からパ○スを連れたダンジョンはヌルゲーですから」
「??」
名家で育った時雨さんには、TVゲームを知らなかったみたいで通じなかったようだ。
ドラ◯エⅤは世代じゃ...無いわな。
「両親の件をどうこうするにも、先ずは俺自身が強くならなくちゃいかんので。頼りになる人達がいるだけで十分です」
「そういう事なら、しっかりと頑張って下さい」
「はい!」
時雨さんは、頼りにされる事に喜んでくれたのかな?
俺的にアナさんの事も含めてるんだけどね。
その後、スライムが沢山出るダンジョン、スライムしか出ないダンジョンと2つ教えてもらったんだが、『ちゃんと
気が付くと、それなりにいい時間になっていたのでお暇することに。
『そろそろ帰ります』と伝え、これからもちゃんと相談することを約束し喫茶店を出た。
「父ちゃんと母ちゃんの仲間、か...。
こんな偶然な出会いって、本当にあるんだな。
...両親が、いや」
◉喫茶店マスター・時雨
総司君の出て行った店内で、先程の言葉を思い返す。
――勝手に死んだ事にして悲しまないで下さいよ。
「やはり、
ふふふ、大福...美味しかったですね」
〜〈第1085F〉ダンジョン〜
時雨さんの喫茶店から帰りPCを使って、教えてもらったダンジョンの場所や特徴をしっかり下調べした。
その後はネット小説を読んだりとまったりして、早目に就寝してゆっくりと身体を休める。
そして、翌日。
朝から
「よーし!目標も決まった、目的地も教えてもらった。後は行動するだけ!....あ!スキルの成長に関して聞くんだった!という事で、教えて、アナさん!」
[ピコン。怒りますよ、総司?そういう時はどうしなさいと言いましたか?]
「うっ!...(しまった!忘れてた)あ、あはは〜」
[ピコン!忘れてましたね?顔に書いてありますよ]
「すいませんでした!!」
え、顔色まで分かるん?
[ピコン。全く、総司ときたら。ちゃんと鑑定眼を使っていくのでしょ?頑張って下さい]
「は〜い、メモメモっと。色んな物を鑑定してレベリングだな。
ついでにこのダンジョンを踏破しなきゃな。
勿体無いけど、ドロップしたカードは現金化一択だ」
アナさんには怒られたが、そんなことではへこたれないぜ。
鑑定を使いつつダンジョン踏破して、また美味い酒でも飲むぞ!と意気揚々に。
今日もダンジョンは
そうなると、中々魔物とエンカウントする機会が訪れない為、暇を持て余すこととなる。
「すんごいヒマ〜...昨日ウサピョンと死闘?を繰り広げたダンジョンと同じダンジョンとは思えないわ〜」
....ところで、周りに探索者が寄って来なかったのは何故かね?
「そういえばどうしようかな〜スライムが沢山いるダンジョンは、隣町で電車で5分、スライムしかいないダンジョンは...京都、かぁ」
教えてもらった2つのダンジョンは距離がかなり離れていた。
〈沢山〉なら電車で5分。うん、近いって素敵。
〈のみ〉なら県外で京都にある為、電車でも数時間が掛かるので、日帰りは到底無理。
だけど、〈のみ〉は正直なところスキル的にはもってこいだ。
悩んでいたが、取り敢えず、どうしても言いたいセリフがあった。
「そうだ、京都に行こう」
吾輩は、馬鹿である...名前は、総司。
そして、三度目の地雷を踏み抜いてしまった。
「やっぱり困った時は?教えて、アナさん!」
[ピコン...。総司、そこに正座]
「え!?でもココダンジョンで」
[ピコン。正座]
ジャンピング土下座ってさ、やってる本人は、無意識、なんだぜ?
[ピコン。言いましたよね?何でもかんでも聞きゃあいいってモンじゃ無い、と]
「...ハイ。オッシャッテマシタ」
[ピコン!何度も同じ事を言わせない!それに
「辛辣ゥ!?ヒドくない?そんなに怒んないでよ!」
[ピコン!だまらっしゃい!!]
ピシャリと叱られた。
「すいませんでした!!」
くどいかも知れないが、此処はダンジョンの中なんだよ。
アナさんとの会話は勿論、誰にも聞こえない...当たり前だよね。
つまり、
取り敢えず、周りの
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