1/4 シュールとは何か


 今回は、作品の宣伝から。


 「収穫する」

 →https://kakuyomu.jp/works/16817330651510426216


 毎週、色んな所のおいしいものを採ったり捕ったりする、昼の帯グルメ番組「とれたてな毎日」。その火曜日担当の新人リポーターである「私」は、物珍しい食材をとるために、崖のぼりに挑戦する。

 『日常キリトリ線』からの抜粋です。こちらを執筆したのは随分前のことですが、非常に難産だったのを覚えています。崖のぼりの描写が上手くいかなくて、一度寝かせたくらいでしたから。


 どこかでありそうな番組と、新人レポーターの奮闘を描いていますが、タグにあるように、「シュール」な話になっています。まあ、シュールと言いましても、ある一箇所だけが現実離れしています。

 本作を読んだ人が、その場面で非常にびっくりしたと感想を述べていました。短編集の一作だと、そう言うタグでの事前情報はありませんですからね。やったぜとガッツポーズしましたね。


 で、本題なのですが、「シュール」っていったいなんだろう? と考えてしまいます。まあ、結構使い勝手がいいものとして、利用しまくっといて何なんですが。

 ここでいう所の「シュール」は、訳すると「超現実主義」みたいな、芸術的な意味合いではなく、「あのアニメ、シュールだね」みたいな、もっと日常的に使われる感じのシュールです。


 私は、お笑いが好きだと思ったころから、あるある系のネタよりもシュール系のネタが好きでした。そう言うシュールネタで、一番好きなのはバカリズムさんでした。

 特に、都道府県を持つというネタには、最初、衝撃を受けましたね。普段見ていて、当たり前となっている都道府県の形、あの半島が持ちやすそうとか、あの湖にチェーンを点けられそうとか、思うわけないじゃないですか。世界がひっくり返る感覚でした。


 他に、ギャグマンガで言えば、あらゐけいいちさんの『日常』ですね。まず、一巻の表紙が、普通の授業中の教室の、ある机の上に鹿が立っている、というものですから。これでシュールを期待するなという方が無理ですよ。

 私が好きなエピソードでも、鹿が出てきます。主人公の女子高生、ゆっこが一人で廊下に立っていると、その外で、この学校の校長先生と野生の鹿が、熱戦を繰り広げているのを目撃してしまう、というものです。校長先生と鹿の戦いが泥臭いのも、ゆっこの反応や行動がリアルなのも、面白さに拍車をかけています。


 シュールな設定の小説と言えばなんでしょうか。個人的に思い付いたのは、森見登美彦さんの小説です。『夜は短し恋せよ乙女』は、天狗や古本市の神様など、メルヘンチックな存在が出てくるのですが、物語の中心は、主人公男子学生の、好きな子とお近づきになりたいという恋心なので、地に足が付いています。

 他には、伊坂幸太郎さんも思い出しますね。『ガソリン生活』という本の主人公は、なんと一般家庭の普通乗用車なんです。この車が、他の車と会話したり、自分を使っている家族の様子を見たりしながら、ご近所の不思議な事件を解き明かすというのが本筋です。


 こうして、私が思う「シュールな作品」を思い浮かべてみると、現実を少し斜めにずらす、という発想が元になっているような気がしますね。

 都道府県を持ってみたら? 校長先生と鹿が戦ったら? 身近に天狗がいたら? 車同士が実はおしゃべりしてたら? そんな発想からスタートしつつも、実は地盤は現実的である、だから、ファンタジーというよりもシュールという印象を受けるのかもしれません。


 さて、シュールが好きだから、シュールな話を書いてみようと思うのですが、これがなかなか難しい。こういう部分にこそ、創作者のセンスが色濃く出るのだと思います。下手にやると、面白くなくなりますし。

 私がよくやるのは、普通の状況にありえないものを出現させるというものです。ウケが良かったのは、『日常キリトリ線』の「三階駐車場が空いています」→https://kakuyomu.jp/works/1177354054881796766/episodes/1177354054882312639でしたね。まあ、この「ありえないもの」が何なのかも、結局センスになってしまうのですが、ここは自分の感性を磨いて、思い付けるようにするしかありません。




 今後の課題が分かったところで、今回はこの辺で。

 お疲れさまでした、また次回、お願いします。






























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