僕とカミサマの答え合わせ

「真面目に話しておるんじゃからちゃんと聞けっ!!」


そう僕を叱った時告様は投げた座布団を自分で回収して元の位置にぽすんと座った。


「しかしユキナよ、そなたは前世の記憶があるじゃろ?何でその辺の説明をしとらんのじゃ?」


不思議そうに尋ねる時告様のお言葉に僕たちは揃ってユキナを凝視する。

ユキナはそんな視線から逃れるようにすっと顔を背けわざとらしい口笛を吹いている。


「だ、だってぇ。いきなり前世の話なんてしてお兄ちゃんにイタい子扱いされたくなかったんだもん。

ユキナだって何で生まれ変わってるのか分からないし、他のみんながどこにいるのかもわからなかったんだもん。

気付いたらみんな揃ってたし、もうどうでもいいかなーって」


根負けしたユキナはそう弁明した。

まあ確かにいきなり前世がーなんて言われてもイタい子扱いしちゃうだろう。ユキナは僕のことよく分かっている。

しかし考えてみれば確かに以前不思議なことを言っていたし、僕が『義妹』を増やすことも確信をもっていた。

そこらの不可思議な言動は前世の記憶からきていたようだ。


「まあよかろう。はじめからきちんと説明してやるからよおく聞くんじゃぞ」


時告様は気を取り直して語りはじめた。


***


まずは『四季めぐる』という存在について話すかの。

ああ、そなたではない、本来の四季めぐるじゃ。

本来の四季めぐるは碌でもない家庭環境で育ったせいで両親を超えるあるてぃめっとクズへと成長しての。

親を亡くしてからはその遺産で犯罪組織を作って好き勝手やることになっておったんじゃ。

どうにも四季めぐるという存在がそういう気質を持ちやすい存在と定義されておるみたいでの。

どんな魂を四季めぐるとして生まれさせても、ギャングや人身売買組織、麻薬カルテルに武器の密造密輸と多少の違いはあれども必ず大犯罪者になる運命にあった。

この街を犯罪都市へと生まれ変わらせて好き勝手することになっておったのじゃ。


当然人身は乱れ土地は荒れる。

土地神である妾としてはそのような事態は許容出来ん。

なんとかこの四季めぐるの運命を打破できるような強い魂を欲しての。

じゃがそういう魂はなかなか見つからん。

より上位の神に願い出たところ随分と探し回ってくれてのぉ。

やっと見つけたのが別の世界におったそなたの魂じゃ。


その世界はとある創造神がドはまりしておるエロゲを再現した世界らしくての。

義妹ハーレムエロゲという奴じゃ。

丁度エンディングを終えたあとのそなたらが仲良く天寿を全うしたタイミングじゃったらしい。


『強い魂?いいよいいよー持ってってー!マジ俺の推しだから!すんげえつよつよの魂だから!義妹与えときゃなんとかなっちゃうから!

ついでに義妹ちゃんたちも持ってってー!!いやヒロインちゃんを兄から引きはがすとかマジでファン失格だからそこんとこシクヨロー!!』


交渉したら即決でそう言われたそうじゃぞ。

ちなみに原文ママじゃ。

その神にとっては推しエロゲの布教活動の一環らしいの。


そういう訳でそなたらはこの世界に転生することとなった。

ああ、エロゲ世界の再現とかは普通はやらんからの。

あの神がちょっと頭おかしいだけで、この世界は普通の世界じゃ。


さて転生させる段になって例の神が煩く言ってきおってのぉ。


『兄と義妹ちゃんたちはハーレム一択!個別エンドとか実質バッドエンドだから!ちゃんとハーレムできるようにしたげてちょんまげー!!』


そんな感じであまりにも煩くての、まあこちらもムリを言うた負い目もあることじゃし出会いと結ばれたあとぐらいは面倒見ると約束しての。

それで義妹たちの魂をうまいこと四季めぐると出会う可能性の高くてかつ魂と相性のよい人物へと転生させたのじゃ。

ああ、別に魂を引っこ抜いて入れ替えたりはしておらんぞ。

そなたらが生まれてくるよりずっと前に行う作業じゃからの。

そんで結ばれたあとに合法的にハーレムできるように適当にいい感じに作った『義妹』という概念を『四季めぐるの恋人』という概念とすり替えた訳じゃ。

概念のすり替えはそなたらが結ばれたときのみ起こるようにしておるから、誰彼構わず『義妹』になるというわけではないからの。


***


「そういう訳で今の状況が出来上がったという寸法よ。わかったかの?」


色々ツッコミたい。『あるてぃめっとクズ』のくだりとか創造神のキャラについてとか。

でも僕が今聞くべきは一つだけだ。


「彼女たちが今僕に抱いている感情は前世のものか、その『義妹』という概念で無理やり植え付けられたものなのか?」


いつだったかユキナにはユキナの気持ちを疑わないでなんて言われたが、やっぱりちょっと引っ掛かっている。

前世だの魂だの概念のすり替えだのなんて話が出たのだ。都合のいい感情を植え付けるくらいされててもおかしくはないだろう。

問えば時告様は実に神様らしい優しい笑みで僕に告げる。


「多少は前世の影響もあろうが、そなたらの思いはそなたらのものじゃよ」

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