僕と『義妹』と猫?カフェ
「『猫?カフェ四季』へようこそお客様」
自宅のリビングに顔を出すとそんなことを言われてしまったのだが、どうすればいいのだろう。
またぞろ『義妹』たちがおかしな遊びをはじめたらしい。
こういう時主導的立場になるのは大概さくらなんだが、どうやら今日はひまりがそうらしい。
カフェのマスターというよりはバーテンダーかカジノのディーラーっぽい服装のひまりが硬直する僕にニコリと笑いかける。
「ひまり……何やってるの?」
「『猫?カフェ四季』は本日だけの特別営業です」
『猫?』のところでいちいちコテンと首を傾げる姿はとても可愛いのだが。
僕の質問には一切合切答えてくれてないんだよなぁ。
「猫カフェ四季ってなにさ?どっかで猫拾ってきたの?」
「いいえ、お客様。当店は『猫カフェ』ではなく『猫?カフェ』でございます」
やっぱり『猫?』のところで首を傾げるひまりがかわいい。
「その『猫?カフェ』ってなにさ?」
「当店は『猫?』を愛でながらお茶やケーキを楽しんでいただく喫茶スペースとなっております」
『猫?』ねぇ……。
大体オチは読めているんだが、まあヒマだし付き合っておこう。
「その『猫?』の姿が見当たらないけど?」
「はい、お客様。『猫?』はお客様が席につきお茶とケーキを注文すれば自然と近づいて参ります」
「ふうん。じゃあ早速注文しようかな」
「ではお席へどうぞ。こちらメニューになります」
渡されたメニューとは名ばかりの紙にはでっかく『本日のおススメ』とだけ書かれていた。
つまりこれを注文しろということなのだろう。
「じゃあ、この『本日のおススメ』で」
「はい。ではこちらが『本日のおススメ』になります」
ノータイムで紅茶とケーキが出てきた。
凄く突っ込みたい。突っ込みたいけど、ニコニコしてるひまりを見るにここは突っ込み所ではないのだろう。
涙を呑んでスルーして僕はお茶とケーキに手をつける。
「ほらお客様、当店自慢の『猫?』がやってきましたよ」
そう言われて顔を上げると、そこにはブロンドヘアによく馴染む色合いの猫耳を付けたユキナがメイド服姿でかわいいポーズをとっていた。
「にゃんにゃん♪ご主人様、いらっしゃいなのにゃん♪」
猫耳メイドは卑怯だろうが……っ!!
これはよくない。僕に猫耳メイドさんは効きすぎる。
僕は気付けばユキナを膝に乗せて撫で繰り回していた。
「お客様、当店の『猫?』はまだまだいますよ?」
その声とともに二匹?目の『猫?』があらわれた。
黒い猫耳をつけたしずくはふわふわした生地のタンクトップとホットパンツ姿で手には肉球グローブ、足には肉球ブーツを装着していた。
「にゃー……にぃに、撫でて……にゃー」
声からは一切感じられない演技力を動作に関しては存分に発揮したしずくが、本物の猫のように猫パンチを繰り出しながら僕にじゃれついてくる。
は?クソほどかわいいんだが?
僕はかわいい『猫?』の要求に素直に応じる。
通常の猫でさえこうされてしまえば人間は従うしかできなくなるのだ。どうして『猫?』に従わずにいられようか。
「ほらお客様。最後の『猫?』がやってきましたよ」
現れたさくらは髪に合わせた茶色い猫耳で、なぜか猫の着ぐるみパジャマ姿だった。
「お前だけなんか違くない?」
「おにいは分かってないにゃー」
そう言いながら後ろから抱き着いてきて僕の耳に口を寄せ――――。
「この下は素っ裸にゃん♪」
囁くように妖しく、そう言った。
ムラっときたので遠慮なしにそのごわごわの生地を撫でまわす。
「こらっ!エッチな『猫?』にはお仕置きだ!!」
「にゃ~ん、おにいに叱られちゃったにゃ~ん」
「お兄ちゃん、ユキナも構ってほしいにゃん」
「にゃー……ケーキ食べたい……にゃー」
僕は『猫?』とじゃれ合いながら至福の時をすごした。
「ひまりはやらないのか?」
充分遊んで満足した僕は気になったことをひまりに尋ねる。
「わたくしの用意していたのですが……何か違うと言われまして」
「ふうん。一度見てみたいな」
「では少々失礼して……にゃんにゃん」
僕がリクエストすればひまりは懐から白い猫耳をとりだしてあざといポーズをとってくれる。
目茶苦茶カワイイのだが…………確かに何か違う気がする。
ひまりは猫というよりもむしろ――――。
「ひまり、お手!」
「にゃん!」
「おかわり!」
「にゃにゃん!」
「ふせ!!」
「にゃっ!!」
僕は答にたどり着いた。
「ひまりは犬だな」
この数日後、我が家で『犬?カフェ』が開催されたのはいうまでもない。
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