僕と『義妹』と海

「「「「「海だ~~~~~っ!!」」」」」


季節は夏真っ盛り。

僕らは海へとやって来た。


正月坂家のプライベートビーチを借りることができたのだ。それも送迎の車付きで。

先日の訪問で迷惑を掛けた詫び代わりということで幾人かの使用人さんを付けてアレコレ準備してくれている。

あの日以来ぎこちないながらも親子の対話を何度も行っているのだとひまりが嬉しそうに言っていた。


「それじゃあ着替えてくるからね♪」


ということで海だ。

『義妹』たちは正月坂所有の海に面した小さな別荘で今日のために用意した水着に着替えている。

なお水着を買いに行ったときには僕はハブられていたので、彼女たちの水着がどんなものかはまだ知らない。


「お兄ちゃん、準備できたよ~♪」


さっさと海パンを履いて上にTシャツを着た僕にユキナが声を掛けてくる。

四人の『義妹』がバスタオルに身を包んだまま姿を現した。

どうやら水着のお披露目会がはじまるらしい。


「じゃあまずはユキナからいくねー。じゃじゃ~ん♪」


彼女が身に着けているのは淡いブルーのフリルつきのビキニ。

胸元は可愛らしく飾り付けられ、下はスカート状になっており清楚さを演出している。

ブロンドの髪をアップにしてバッチリとポーズを決めている。


「お兄ちゃん、どうかな?似合う?」

「ああ…………よく似合ってる。すんげえ可愛い」

「んふふ~♪」


喪失した語彙力でなんとかそれだけ言葉にすれば、お気に召してくれたのか満面の笑みでひまりと入れ替わる。


「次はわたくしですね……じゃ、じゃじゃ~ん」


少し恥ずかしがりながらひまりがタオルをはぎ取る。

彼女はなんとなくワンピースタイプを着てくると思っていたのだが、予想に反してシンプルな黒いビキニを着ていた。

白い肌と黒いビキニのコントラストがなんとも艶めかしい。

ラッシュガードを羽織っているのはビキニだけではさすがに恥ずかしかったのだろうか。

長い髪を頭の上で二つのお団子にしたひまりはいじらしくポーズを決めて僕に問いかける。


「少し頑張ってみたのですが……いかがでしょうか?」

「驚いた……よく似合ってるよ」

「ならばよかったです」


安堵した表情のひまりに代わってしずくがもったいぶらずにさっさと水着を披露する。


「じゃじゃ~ん」


彼女はピッチリとしたボーダー柄のタンキニ姿だった。

首元まで覆い隠すデザインのそれは露出は少ないのに却って彼女のスポーティな魅力を引き出し色っぽい。

シンプルに魅力的な姿だった。


「にぃに……どう?」

「凄く似合ってるよ。格好良くて色っぽい」

「ん……うれしい」


はにかむしずくと入れ替わって、最後はさくらだ。


「んじゃああーしが最後だねー。いくよー。じゃじゃ~ん」


さくらはその生意気そうな容姿で『理解らせ』たくなる女だが、同時にわかっている女でもあった。

南国風のイラストが描かれたブラは小さい布面積ながらもしっかりと彼女の生意気おっぱいを持ち上げて、

下は攻め攻めのデザインでしっかりと露出しておきながらパレオを巻いてその小さな布が簡単には見えぬようにともったいつけている。

とても僕の男心をくすぐる装いだった。


「どーよ?」

「くっそエロいな」

「何それー?あーしのことももっと褒めろよっ!」


素直すぎる感想はお気に召さなかったようだ。

ともあれ僕の感情は伝わっているのだろう、満更でもない表情を浮かべている。


「それじゃあ今日は一日目一杯楽しんじゃおー♪」


ユキナの号令で僕らは意気揚々と海へと繰り出す。

浜辺ではいつもの黒服姿の松本さんがビーチパラソルやらチェアやらを用意してくれていた。


「なんか色々お手間をかけてすみません」

「いえ、ひまり様の楽しそうな姿が見られますので、喜ばしいことです」


松本さんの視線の先にはただ日焼け止めを塗るだけのハズなのに随分とはしゃぐひまりの姿があった。


「お兄ちゃ~ん、背中塗って~」


どうやらお呼びがかかったようだ。

ユキナから受け取った日焼け止めを手に垂らし、温めるように揉み込んでからすべすべの背中に塗りたくる。

はて、これはサンオイルの塗り方だっただろうか……?

まあ楽しければなんでもいいのだ。


「前は塗らなくていいのか?」


くすぐったそうにするユキナについスケベ心を出して聞いてみる。


「前はもう塗ったも~ん」

「そりゃ残念だ」

「前まで塗ってもらったらえっちな気分になっちゃうから、ダ~メ♪」


そう言われて僕がえっちな気分になっちゃうのは、多分開放的な夏の照りつける日差しのせいだ。


「お兄様、わたくしもお願いします」

「私もやって」

「あーしもヨロシクねー」


『義妹』たちの綺麗な背中の感触を僕はたっぷりと堪能してしまった。


「じゃあ次はおにいだねー」

「いや、僕は自分で適当にするからいいよ」

「そう仰らずにお兄様、さあさあ」

「こらっ服を脱がすなっ!」

「ちゃんと塗るからお兄ちゃんは心配しないでね」

「その言い方がもう心配なんだけど」

「ここにも……たっぷり」

「こらしずく!海パンに手を突っ込むな!!」


バカみたいにはしゃぐ僕たちの海遊びはまだまだ始まったばかりだ。

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