僕の『義妹』の実家
それからユキナの部屋の準備に奔走しつつ、二人でいちゃつきつつ過ごした。
一緒に入浴するのは阻止したが、夜は同じベッドで寝ている。
ただし手は出していない。
僕の部屋の隣をユキナの部屋として片付けて、家具類は全て新しく買いそろえることにした。
家に使っていない家具は余っているのだが、ユキナのイメージと合わないものだし、何よりクソ両親が使っていたものをユキナに使わせることを僕が嫌がったからだ。
なにせクソ両親の遺産を親父の元秘書の的場さんと相談しながら少しづつ自分でも増やしているのだ。金は有り余ってる。
そういう訳でユキナの好みに合わせて丸っと一部屋分用意した。
配送から家具の配置まで店側が全部やってくれたので翌日には住める状態になっていた。
物置同然だった部屋も今では年頃の女性らしい可愛い部屋に様変わりしていた。
そして今日、ユキナに連れられ僕は彼女の実家である冬木家にやってきている。
ちなみにここに来る前に役所に寄って戸籍を確認してみたのだが、ユキナはしっかり僕の義妹になっていた。どうやらマジでカミサマ的なサムシングの仕業っぽい。
「お母さんただいまー、ほらお兄ちゃんも入って入ってー」
「お邪魔します」
「ユキナおかえりー。あなたが四季めぐる君ね。さぁ、上がって頂戴」
出迎えてくれたのはユキナのお母さん。
なんとなくユキナをそのまま大人っぽくしたイメージを抱いていたが、ユキナとは髪と目の色以外はあまり似ていなかった。
ユキナが天使のようなカワイイ系美少女ならお母さんはハリウッド女優にいそうなゴージャス系美人だった。
通された部屋には冬木ファミリーが勢ぞろいで待ち構えていた。
「はじめまして、四季めぐると言います。ユキナさんには大変お世話になっております。これ、つまらないものですがよろしければ」
なるべくハキハキと無難な挨拶とともに持ってきた菓子折りを差し出すと、お父さんがにこやかに受け取って握手を求めてきた。
「はじめまして、そんなに硬くならなくていいよ。なにせユキナの兄になったんだから、僕たちのことも家族と思ってくれていいんだからね。
僕がユキナの父の冬木龍斗だ、レストランのオーナーシェフをやってます。よろしくね。それでこっちが妻のレナ。
そっちの生意気そうなのがユキナの弟の健斗で、もう一人の天使が妹のミラだ。仲良くしてやってくれ」
「よろしくね、めぐる君」
「あー、健斗っス」
「ミラです。よろしくお願いします。えっと……おにいさん?」
垂れ目でどこか愛嬌のあるイケメンお父さん――ユキナの可愛らしさは中性的なこの人の遺伝なのだろう――龍斗さんの紹介にあわせてそれぞれ挨拶してくれる。
健斗君は両親のいいとこどりをしたイケメンのサッカー少年で現在中三だそうだ。学校ではさぞもてることだろう。
ミラちゃんはお母さんの髪色をそのまま黒にしたような美少女で現在小六にして既にユキナと同じくらいの伸長とプロポーションを獲得している末恐ろしい少女だ。
彼女に『おにいさん』とよばれて頬が緩んでしまったのは仕方なかろう。だからユキナさんや、膨れっ面でこちらを睨むの止めてもらえませんかね。
若干一名膨れっ面の天使さまを除いて、思いのほか歓迎してくれているムードに正直少し驚いている。
「さあさあお昼用意してるから先に食べちゃいましょ」
昼食は本格自家製イタリアンピッツァだった。
驚くべきことに生地もソースもシェフの龍斗さんではなくレナさんの手作りだった。
「味にうるさい男の妻をやってるとこれぐらいできるようになるのよ」
どこか諦めたような顔でそう言うレナさんに、龍斗さんはとろける笑顔でレナさんへの愛を謳い続けた。
食卓は実ににぎやかで、まさに仲の良い家庭の食卓そのものだった。
僕がいつかのように泣いてないか心配だったのだろう、視線をよこすユキナに大丈夫だと笑いかけると彼女もとびきりの笑顔を返してくれた。
「はわ……お姉ちゃんとおにいさんが目と目で通じ合ってます」
「んふふー。私とお兄ちゃんはラブラブだからねー」
「はいはいご馳走様…………んで、めぐるサンはもう姉貴とやっちゃったの?」
「こら健斗っ!お兄ちゃんに何聞いてるの!」
「手は出してない!断じて手は出してないから!」
「ん~?『手は』ってことはその手前まではやっちゃってるってことか~?」
「はわわ……お姉ちゃんとおにいさん、大人です」
「健斗!いい加減にしなさい!ミラも変な事考えないの!」
ギャーギャーと楽しそうにじゃれ合う兄弟たちとそんな光景を慈しむ目で見守る夫婦の姿。
それは僕の思い描く幸せな家庭のイメージそのままだった。
それからも僕たちは食事を楽しみながら色んな話をした。
龍斗さんのお仕事の話や健斗君の部活での活躍について聞いたり。
レナさんは僕たちの暮らしをユキナから聞き出し色々とダメ出ししている。
意外だったのはミラちゃんがゲーマーだったこと。
僕もやってる狩りゲーを今やり込んでいるところらしく後日一緒に狩りをする約束をした。
「わ、私もお兄ちゃんとゲームやりたいー」
「いや、姉貴本体すら持ってないじゃん、何言ってるの?」
「買うもんっ!」
「今から買っても初心者じゃん。絶対めぐるサンに迷惑かけるだけじゃん。姉貴ゲームド下手だし」
「うるさいっ!もう健斗は黙ってて!」
「大丈夫だよお姉ちゃん。ミラが一緒に練習したげるから」
「ありがと~。ミラは可愛くていい子だね~。それに比べて健斗は生意気っ!」
ポンポンと飛び交う小気味良いやり取りに僕は思わず大笑いしてしまった。
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