僕と『義妹』の手続きと両親
気まずくなってしまった空気に耐えかねて次の話題を探しているとふと、昨日置き去りにしてしまった疑問を思い出した。
「そういえばさ、手続きって一体なにしたの?僕一枚も書類書いてないんだけど、何がどうなってるの?」
「手続きはねー、神社に行って今日から『義妹』になるのでお願いしまーすって」
「まって、何で神社?手続きって普通は役所だよね?」
「なんでだろうね」
「なんでだろうな」
思わず二人顔を見合わせ首を傾げる。
ユキナにもよく分かっていないらしい。
この瞬間僕の『義妹』化現象がカミサマ的なサムシングが関わるファンタジー的な超常現象であることが確定した。
「えっと、どこの神社?」
「…………どこだろう」
「覚えてない?」
「覚えてないねぇ」
記憶にないらしい。
どこからどう見ても異常事態のはずなのにユキナは深刻に捉えることなくのほほんとしている。
僕自身も困惑こそすれども、この異常事態に恐怖を覚えていないあたりちょっとばかりおかしくなっているんだろう。
これもきっとカミサマ的な誰かの仕業なんだろう。カミサマならしょうがない。
とりあえず役所が開いてる日に僕とユキナの戸籍を確認しなくてはならない。
これで戸籍までいじられていればカミサマ確定でいいんじゃないかと思う。
何せ四季家は両親とも他界しており、養子縁組など不可能だからだ。
戸籍がそのままなら『義妹』という名の同棲相手ってことにしよう。
「んー、謎が深まるばかりだけど、これ以上考えても不毛だな、こりゃ」
「よくわかんないよねー」
「もう幸せならなんでもいっか」
「幸せならいいでしょー」
なげやりになってそう結論づけた。
ところでユキナさん、さっきからふにゃふにゃと背中に抱き着いておっぱい擦りつけるのやめてもらっていいですかねぇ。
さてはお前この話題飽きてるだろ。大事な話なんだぞ。
甘えん坊モードの天使な『義妹』にため息が漏れる。
「んじゃーこの話は終わりってことでGWの予定を決めちゃいましょー!」
「おおー!!!」
朝から訳の分からないことに頭を使いすぎて疲れたのでちょっと気分を変えて予定を詰めることにした。
もちろんユキナもノリノリだ。
「それじゃあ何かやりたいことがある人は挙手してくださーい」
「はいっ!はいっ!ありますっ!やりたいことありますっ!」
「はいじゃあとっても元気のいいユキナくん」
「はいっ!お兄ちゃんとイチャイチャしたいですっ!あとちゅーして一緒にお風呂に入って夜は抱きしめ合って眠りたいですっ!」
ユキナは欲望剥きだしだ。
「んー、それは予定とは言えないぞー。もうちょっと何かないかー?」
「むぅ、じゃあこづく――――」
「下ネタ禁止な。あと真面目に答えてくれたら頭を撫でます」
「はいっ!ユキナの部屋を準備します!一緒に家具をそろえに行きたいです!」
「はい採用!真面目に答えてくれたのでご褒美です」
頭を撫でればデレデレと脂下がっただらしない顔で抱き着いてくる。はいカワイイ。
「他に何かある?どこか行きたいところとか」
「お兄ちゃんとデートしたいけどお休みの間は多分どこも人で一杯だよね。だったらゆっくりおうちデートしたいな」
――――おうちデート。それは神が与えたもうた祝福の言葉。
あまりに魅惑的な響きにそんなアホなことを考えてしまった。
「じゃあ二人でゆっくり過ごそうか」
「お兄ちゃんは?何かない?」
「俺は、あー、出来れば早いうちにユキナのご家族に挨拶しときたいかな。でもレストランやってるならこの時期は忙しいだろ?」
「おおー!!ちょっと待ってね、お母さんに確認してみるから。レストランは夜だけだからねー、午前中の仕込みが終わったらお父さんも一旦帰ってくるからお昼なら大丈夫じゃないかな」
そうなのか。なら昼間にお邪魔するかね。
ユキナが母親とやりとりした結果、五月二日にお伺いすることになった。
都合のいいことに役所が開いてる日のようだし、戸籍を確認してそのままお邪魔しよう。
あぁ菓子折りも用意しておかないと。
ユキナのご両親と顔を合わせると思うとなんだかそわそわしてしまった。
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