僕の『義妹』は甘えん坊

あれから、僕はユキナ――『義妹』となることを認めた以上冬木さんではなくユキナと呼ぶことにする――に家の中を案内して回った。

我が家には使っていない部屋がいくつもあるが、色々物が放り込まれていてすぐに使えないので片付くまでは客間をユキナに使ってもらうことにする。

ユキナの部屋の準備がGWのタスクになるだろう。ユキナが持ってきた手荷物以外は近日中にウチに届く手筈らしいのでそれまでに終わらせる必要がある。


「そういやユキナはGWの予定とかないの?もしあるんだったら部屋の片付けは僕がやっとくからそっち優先してくれていいよ」

「んーん。GWは仲良しのお友達がみんなあちこち出かけちゃってて、一人でお家でゆっくりするつもりだったから何も予定ないよ?お兄ちゃんこそ大丈夫?」

「いや、僕も予定ないんだよね。友達みんな旅行行ったり忙しそうだし」

「一緒だね」

「一緒だな」


「「ははっ」」


思わず顔を見合わせ笑い合う。


「ユキナと二人でこうして過ごせるんならヒマなGWで却ってよかったよ」

「私もぉ~♪お兄ちゃん大好きっ!」


ぽつりとこぼせば満面の笑みで抱き着いてくるユキナ。抱きしめ返せばほのかに香る甘い匂い。

クソほどカワイイ僕の天使な『義妹』はとてもいい匂いだ。

ユキナを『義妹』と認めた瞬間から、不思議とこうしてイチャつくことに気恥ずかしさや抵抗を感じることがなくなった。

むしろずっと以前から愛する『義妹』として可愛がってきたような感覚すらある。

愛しさが次々とこみあげてきて、こうして抱きしめ合うことがとても自然に感じられるのだ。

二人イチャつきながらリビングへと戻る。


「ユキナは学校にいるときと随分感じが違うけどこれが素なの?」


ソファでも隣にぴったりくっついてご満悦そうなユキナを見やる。


「んーん。学校でも家でも大体あんな感じだよ?今はお兄ちゃんがいるから甘えん坊さんになっちゃってるだけー。」

「ん、あっちが素なのかー。今はムリして可愛くしようとしてない?普段通りでもいいんだよ?」

「やだー、折角お兄ちゃんと二人きりなんだからあーまーえーるーのー」


抱き着いて、僕の胸板を頭でグリグリするユキナ。少し痛い。


「お兄ちゃんは、甘えん坊な『義妹』はお嫌い?」

「好きです。ちょー好きです。めちゃくちゃ甘やかしたいと思ってます。頭撫でていい?」

「許可します」


精一杯作ったすまし顔で偉そうに許可を出した『義妹』の頭をわざと髪が乱れるようにグシャっとなでる。

キャーキャー言いながらも抵抗しないユキナについだらしない表情になってしまう。

最後にワシャワシャっとやればさすがに頭を押さえて逃げてしまう。


「もうっ!お兄ちゃんひどいっ!」

「ごめんごめん。ほら、なおしてあげるからこっちおいで」


警戒しながらそっと近づいてくる彼女を腕を広げて出迎えてやり、ギュッと抱きしめて乱れた髪を手櫛で整える。


「お兄ちゃん、ちゅーしよっか?」


腕の中の彼女がそんなことを言い出した。

散々イチャついたあとだがやはりドキッとしてしまう。


「お兄ちゃんの『義妹』になった記念にちゅーしたいのっ」

「いいのか?」

「したい」


至近距離で見つめ合う。こうして見ればユキナはやはり天使のような美少女で。

そっと閉じたまぶたに長いまつ毛が微かに揺れる。

生唾を飲み込み覚悟を決めて――――そっと口づけを交わす。


「んっ…………」


ほんの少し触れるだけのソフトなキス。

だけど僕もユキナもきっと顔を真っ赤に染め上げていることだろう。

二人目を開いて見つめ合う。


「ファーストキス、お兄ちゃんにあげちゃった♪ ねぇ、お兄ちゃん、おかわりが欲しいな」


どうやら僕の『義妹』は天使ではなく小悪魔だったようだ。

おかわりは何度も何度も、ユキナの気が済むまで繰り返された。

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