(9)
27日。
私、清水楓は現在いつもの四人でボードゲームで遊んでいる所であります!
昨日はちょっと用事があって、薪君の尾行には付いていけなかったけど、ちゃんと薪君出来たのかなあ? 聞いてもなんも詳しいこと教えてないし。やっぱり私がいないと尾行は出来ないのでは……⁉
なーんて、考えてみたはものの、今はそれどころじゃないのだ!
「うわああー⁉ 私の三百万円があぁー!」
「おっとっと~楓さん。悪いね~。君が汗水垂らして稼いだお金で贅沢させてもらうよ~」
「ああ……」
「ルーレット運ありすぎ~俺!」
「むむむ! 絶対薪君許さないし!」
「下級市民は黙っとれ」
昼休みになると、月島君が「これ、家にあって超懐かしかったから、今やらない?」と言って背後から取り出したのは人生ゲーム。良くあるルーレットを回すタイプのやつだ。
「おっ。それは確かに懐かしいなあ」
「私、昔これやってた記憶ある」
「葉月はいっつも俺とやって負けてたけどな!」
「あー、そういうこと言うんだー」
早速葉月ちゃんがジト目で月島君を睨む。
「じゃあ、ここで決着を付けようではないか! 葉月!」
「お、おう。望むところだ、ぜ?」
強気になりきれず、恥ずかしさのある声がかわいらしくて、頬が不意に緩んでしまう。二人のそんな会話を聞いていると、つくづくこの一か月ですごい二人が笑顔の瞬間が増えたなあと思う。
これも、幼なじみだから? それとも葉月ちゃんの攻めが上手く行ってるから? もしかして二人ともお互いのこと……
私には、まだ分からないことが多い。
「よし、じゃあ次は俺の番だ! 来いっ、6!」
月島君が勢いよくルーレットを回す。ちなみに6を出すと……
「よっしゃー! 6来たー! 葉月、お金プリーズ」
「……もうっ、なんで毎回毎回こうなのっ」
これもまた大金が葉月ちゃんから月島君へ。
もうこのゲームも終盤。とりわけ最後らへんはハイリスクハイリターンのマス目が数多く設置されていて、一発逆転が狙えるようになっているのだ。
「お、秋宮も相当お金あんじゃ~ん!」
「お前こそ」
「お主も悪じゃのー」
「金持ち過ぎて頭おかしくなった?」
薪君と月島君が私たちから奪ったお金を扇子みたいにして仰いでいる。
「楓ちゃん、あの二人むかつきます」
「そうだよね葉月ちゃん! よーし! ここから二人で協力してあの二人ぶっ潰してやろう!」
「おっとー、そちらがその気なら俺たちだって手を組もうではないか。なあ秋宮?」
「いいだろう。まあ所詮、雑魚が何匹集まっても雑魚のままだがね」
あれれ? 人生ゲームってこんなチーム戦だっけ? しかもこれいつの時代⁉ 春秋?
※
「やったー楓ちゃん! 私たち二着三着になった! 逆転したよー」
「やったね! 最後の葉月ちゃんの追い上げがすごかったよ」
「ありがとう。光が一位なの……なんかはいけ好かないけど」
「まあまあ、いいじゃないか。なあ、秋宮君?」
「……なにが『なあ?』だ! なに最後に裏切っとんじゃボケー!」
「ナンノコト?」
そう。なんとなんと! 最後の最後で月島君が薪君との同盟を破棄して、薪君を生贄に自分だけ先にゴールをしたのだ。
まあなんというか……薪君らしいと言えば、薪君らしい終わりではあるよね。因果応報?
「はあー楽しかった。葉月もまた負けちゃったなー」
「悔しい……けど楽しかったから良い」
「うーん……そう言われると、なんか勝った気がしねーなー」
「しなくていいもーん」
葉月ちゃんも十分に楽しめたのか、最初の目的なんて忘れて優しく微笑んでいる。
――そうやって、二人仲良く肩を並べ合うあなたたちには。
この世界がどうやって見えてるんだろうね。
全部、上手くいったら教えて欲しいな。
ねえ、世界は何色に見える?
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