第18話 メトロポリス停滞

 2018年。

 いよいよ平成も残すところ一年半を切った。


 そんな中、この年はまさに昭和が遠くなっているのを実感する一年であった。

 芸能人の訃報も相次いだ。

 西城秀樹さん、津川雅彦さん、桂歌丸さん、樹木希林さん、大杉漣さん。 

 さらに、高畑勲監督や、さくらももこ先生も旅立っていった。


 そして、2018年は私が趣味で執筆を始めようと決めた年でもある――。



 まずはいつも通り、日常生活の様子からお届けする。



 一人暮らしにもだいぶ慣れてきた。

 給与から家賃や生活費、クレジットカードの引き落としが済んだら余剰資金を証券口座に全ツッパするライフサイクルも仕上がった。

 それでも、せいぜい多くて月5万円弱。

 もちろんそれより少ない月の方が目立つ。

 愛車『ラク太郎』の車検があると、どうしても計上予算が増えてしまう。


 実家こどおじ時代と比べると、このように入金力の弱さが際立つが、それだって塵も積もればである。

 何もしない理由は無いのよ。

 それに、前年にはついに村がメトロポリスになった訳だし。

 配当金を元手に株を買う再投資を行えば、ますます村は拡大するに違いない。

 などと言いつつも、若干の不安も否めずに居る。

 


 実際にスーファミの『シムシティ』をプレイされた方はわかると思いますが。

 TASやRTAといった大人のプレイを知らない子供の頃、メトロポリスからメガロポリスにするのって至難の業でしたよね?

 というか僕はついに自力でメガロポリスにはできませんでした。

 小学生や中学生には難し過ぎじゃないすか?

 セーブデータをロードすると、いつものメトロポリスのBGMが流れる訳ですよ。

 あれを何百回繰り返したことか知れません。

 むしろ子供心にメトロポリスのBGMが嫌いになるくらいでしたね。



 なんて事を申し上げたりしたが。

 実際にシム(=配当金)を10万から50万都市にするのは容易ではない。

 仮に利回り4%で桐谷さんと同じレベルの銘柄選定をしても、配当金を40万円も増やすとなれば、単純にあと1,000万円が必要になる。

 源泉税20.315%を加味すると、元手をさらに要して1,260万円。

 ここから村の開拓の真骨頂であるメガロポリスへの道――言うなれば地獄のメトロポリスBGMマラソンの始まりなのであった。



 年が明けた一月下旬には、さっそく新しい会社を村に誘致した。

 大麦畑、米畑、畜舎、水路と発電、水産加工、医者と銀行。

 そして皮革繊維加工だ。

 自給自足の村は、ついに一次産業から次の産業へ。

 マニファクチュアは文明開化の音がする。



 チヨダ<8185>。


 靴小売大手。

『東京靴流通センター』『シュープラザ』だけでなく、衣料品の『マックハウス』も手掛ける。

 靴というと最大手のエービーシー・マート<2670>さんが強く、なかなか苦戦を強いられているチヨダさん。

 買った時から株価はするすると下がり、ナンピンを繰り返して結局コロナ禍の途中で底値あたりを掬ったのを最後に、現在はかなり盛り返してきた。


 株主優待は靴20%割引券が半年に5枚。

 しかも一枚で5点まで割引になる。

 育ち盛りのお子さんが居る大家族なら、半年で25足はお買い得だ。

 もちろん店内には上履き、体育館履き、ジョギングシューズまでございまっせ。


 私も客先や現場を周る会社員として重宝するのが、軽くて蒸れない革靴。

 歩き回っていると、すぐにかかとがダメになる。

 サラリーマンにとってワイシャツや革靴は消耗品と同じ。

 要するに日常的に計上する支出を削減して、少しでも村にお金を回そうって魂胆で購入したのがチヨダさんだ。

 お得な革靴だって半年に一度交換するとしたら、それなりの出費になる。

 そう考えれば、やっぱ20%オフは大きいからね。

 公式アプリ『KUTSU.com』の会員証を提示すれば、買い物額1%相当のポイントが貯まり、ポイントは1円相当として使えるが、頻繁にポイント付与10%セールをやっている。

 優待券とも併用できるので、機を見てチヨダさんに行くのがオススメ。


 チヨダさんは2月8月期決算企業である。

 こちらもメインのパン祭りから少しズレて開催されるからありがたし。



 ちなみに関東甲信越を中心に、冠婚葬祭のブライダルホテルやセレモニーホールを運営されている、株式会社千代田チヨダさんとは、全くの別会社である。

 とはいえ千代田さんには、私の祖父母や母の最期も送って貰った。

 不謹慎かもしれないが、これから親を看取る役目の団塊ジュニアの我々同世代は、是非ともご両親とキチンと向き合って、終活に向けた希望を聞いたり事前準備をしていただきたい。

 本人に死ぬ気が無かったり、機嫌を悪くしたとしても、食らいついて欲しい。

「いつの日か」と思っていたその日は、あっという間に来るのだから。


 実際、母の時は身内だけの個人葬を生前希望していたので、親戚だけで小ぢんまりと行った。

「あの花はキライ」「こういうムードがイヤ」「こんなとこ友達に見せたくない」と聞けていただけで、少なくとも本人が希望していた葬儀の準備を充分にできたのは幸いであった。

 だが、それでもなかなか葬儀というものは馬鹿にならない金額になる。

 加えて残された家族のメンタルをも削る、利回り0%の辛い出資が葬儀なのだ。




 さらにもう一社買っている。


 クリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>。

 通称クリレス。


 海鮮炉端焼き『磯丸水産』や地鶏料理『鳥良商店』のイメージが強いが、こちらは主要子会社でもあるSFPホールディングス<3198>が運営する店舗であり、クリレスさんは言うなれば飲食店を経営する企業の集合体である。

 例えて同社の有名どころと言えば、夢の国の隣にあるイクスピアリがわかりやすいのではないか。


 株主優待は同社のお食事券。

 半年ごとに百株で2千円から始まり、保有株数や期間に応じていろいろ変わる。


 私も最初は百株から始めた。

 次に2百株で同4千円分。

 そして今は4百株。こちらは半年で6千円分。

 さらに4百株以上だと3年保有の長期優遇ボーナスが2千円。

 計8千円だ。


 欲を言えば、あと2百株欲しい。

 そしたら半年に一万円とキリが良い数字になる。

 これ以降はたくさん保有しても、比例的には優待額が増えず、利回りは低下するので、6百株をひとつの上限とお考えいただければよろしいかと。


 SFPさんでもクリレスさんの優待券は使えるし、SFPさんも独自にお食事優待券を発行されているので、親子上場している両社とも購入すれば楽しそうだ。

 クリレスさんも決算期は2月8月。

 この頃から私は、意図的に3月期決算企業だけでなく、決算期を分散させるように投資してきた。



 さて、クリレスさんを購入したのには理由がある。


 同じ投資家仲間と旅の計画と称して、飲みに集まることが増えたからだ。

 一人暮らしの独りもんは暇である。

 その支出もクリレスさんの優待で賄えれば、多少はお得に飲めると気付いちゃっただけの話だ。



 またも余談だが、小説を書き始めてからは彼らに下読みをして貰っている。

 あーだこーだ企画会議と称した旅行にいったりするが、最初の頃こそラブコメとかベタな作品を書いたりしていたので、あれこれ注文をつけてくることがあった。


 そのうち邑楽の作風や、私特有の地の文(ゆあん様にお褒めいただいた、言い切り系や体言止めを多用して、七五調を意識した講談師のようなリズム)が確立すると、注文も無くなっていった。

 もう私は一人前の物書きになったから、他人にとやかく言われても直すのが難しいということを、彼らも知ったのだと思う。


 また偶然にもこの友達の一人が絵師なのだ。

 いつも執筆や推敲で苦労する私を鼓舞するためだけに、下読みした作品のイラストを仕立ててくれて、もちろんそれをここで発表する訳にはいかないが、一個だけドラクエ風のラブコメ短編を書いた時には、イラストの掲載許可を貰った。


『125KBと312bitで52文字の恋だから』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330657580368077


 それがこの時のイラストで、私の近況ノートに掲載してある。

 https://kakuyomu.jp/users/heinrich1077/news/16817330658113454422


 こうやって応援イラストをすぐにくれる絵師が近くに居るのよ。

 羨ましいでしょ?

 私も胸を張れる友の一人だ。

 お互いペンネームやハンドルネームの時は交わることも無い二人だが、こうやって縁が繋がっているのだから、人付き合いも投資と言える。




 他の飲食業や小売業と同様に、クリレスさんもコロナ禍で業績が落ち込んだ。

 配当も無くなるか大幅に減配されて、かつ優待券が届いても緊急事態宣言のせいで簡単には食事にも行けなかったのが事実。

 なのでそれらの企業は一旦損切りとして売却したが、クリレスさんはお買い得だと思い、むしろ逆張り、つまり買い増しをしている。

 当時、コロナ収束の見通しは未だ立っていないが、イクスピアリの買収は必ずクリレスさんにとってプラスに作用すると値踏みして、4百株まで増やした訳よ。


 それがこうしてアフターコロナではしっかり業績回復されたし、また仲間達と集まって飲めるようになったのだから、世の中ありがたいものだ。

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