第13話 おやきしか食べない夏休み

 2016年の夏休みは11月2日(水)~7日(月)までの6連休とした。


 遅まきながら一人暮らしをようやく始めた邑楽に付き合ってくれるのは、既に実家を出てた組の仲間。彼らと一緒に旅をすることになったんだ。

 それが5日(土)~6日(日)の一泊。

 全ての旅が終わった7日(月)は家でゆっくりする予備休暇。


 いや、違うな。

 もしかしたら7日まで一緒にどっかで二泊したかも。

 なんか最後に皆で焼き肉を食べた記憶もある。

 うん? それはまた違うグループとの旅だったかな?

 だんだん歳を取ると、いろんな細かい事を忘れていくのよねぇ。

 まぁその辺の諸々は置いといて。


 そんで2日(水)3日(木・祝)4日(金)5日(土)をソロ旅に充当することにした。


 だけど一人暮らしを始めたことで家計はギリギリ。

 毎年の大型連休のためにお給料から一万円ずつを取っておき、福沢諭吉一個小隊を作る『旅財布』というのがある(もちろん今の紙幣は渋沢エーイチさんだ)。

 ここからも引越し関連予算を計上したので、今年の旅財布はショボい。

 高速代もガソリン代も節約したい。なので近場の長野県に行く事にした。


 友人達は5日の昼には特急あずさに乗って松本駅まで来る。

 彼らの前でもケチくさく振る舞う事は出来ない。

 なので前半戦の一人旅パートで実行したのが、おやきしか食べないというものだ。


 もちろん実際はおやきしか食べられない程に、旅の予算が無い訳ではない。

 それでも全ての宿をルートインホテルさんにしたり、当時は旅中もあまり高速道路は使わないようにしたり、節約は意識していた。



 それにこんなバカみたいな旅をやっておいたら美味しい話ができるかもしれない。

 長野県を縦横に走りながら、各地の景色を愛でて、さらにおやきを探す。

 こうやってひとつの都道府県だけ、たっぷり満喫するのも、たまには良い。

 夏休みはいつも日に何百キロと走りながら次の街を目指すので、観光がおざなりになっていたからね。もはや『旅行』ではなく『移動』だった。


 この時の旅の記録が6年半後の二度目の旅へと繋がり、ここカクヨムさんで公式にレビューしてもらうのだから、 人生ってのは不思議なものである。

 長期投資ならば、いつでもどんな種でも撒いておいた方が良い。

 ネタとして成仏、もとい昇華できるまで6年半くらい余裕で待てる気概で無いと、資産形成はできない。



『長野県にいる間はとにかく「おやき」しか食べてはいけない旅行の話』

https://kakuyomu.jp/works/16816452219865589346/episodes/16816452219881118172

 まぁ、この旅の詳細については別の機会にお読み頂くとして。

 


 無事に帰宅した私は、再び村の開拓を進めることとした。



 旅に先立つこと7月、サッポロさんが5対1の株式併合を行う。

 保有していた一千株は二百株になった。

 もちろん優待や配当の水準は5倍濃縮される以前と変わらない。


 おやき旅の後は8月期中間決算の企業から配当が届く。

 吉野家さん、ビックカメラさん、明光ネットワークさん。


 さらに翌月。

 秋のパン祭りが始まる。

 芙蓉たん、リコーリースさん、NECキャピさん、新晃工業さん、日本管財さん。


 もちろんこの他にも優待が無いのに購入した『転がし枠』や、既に優待を廃止縮小したので、以降に売った『売却枠』からの配当金もいくつかある。

 それらは以前にも書いた通り、まずは優待銘柄と配当金を中心としたゴリラ村長の村づくりを軸としたエッセイなので割愛させていただく。


 頂戴した配当金や余った旅の資金で、新しい仲間を村に誘致した。


 オリックス<8591>。


 またしてもリースを中心とした金融セクター系銘柄である。

 村はウォール街のようになってきた。

 オリックスさんは金融、銀行、クレジット、生命保険、レンタカー、空港管理、レジャー事業、プロ野球球団運営と、多方面にご商売されているのは有名だ。


 そしてオリックスさんの優待も、いつものカタログギフト。

 各支店長、支社長がオススメする47都道府県の名産品をズラリと揃え、それだけでなく系列各社での割引サービスを享受できる株主カードも送られてくる。

 オリックスさん側から正式な額面の発表は無いが、一年以内の保有で5千円相当、一年以上保有していれば一万円近くになる、と風の噂で聞いたことがある。

 


 そんなオリックスさんの優待は2024年3月期をもって終了した。

 株主70万人の大半は私と同じ個人の優待投資家だろう。

 つまり我々70万人に充実した株主優待を毎年お送りくださったわけですよ。

 優待の廃止と企業のコストに関する話題は、 第5話でお伝えした通りだ。

 オリックスさんに感謝。

 

 また、企業が導入しているカタログギフト優待も言わば、ふるさと納税だ。

 各地の地場産品や、名産品が簡単にゲットできる。

 応援している都道府県や自治体の商品を選べば、そこも潤う。

 ふるさと納税のようにワンストップ申請や、確定申告での控除も必要ない。

 優待を貰う側も非常にわかりやすいシステムだ。



 オリックスさんの取得単価は1,548円。

 2024年10月14日時点での株価は3,315円。バガー(二倍株)だ。

 配当金も8年掛けて倍になったという感じ。

 さて、ついに優待も廃止されたし、これから「全ての株主様への公平な還元策」が実行されるのか。

 是非とも頑張っていただきたい。


 そんな全国70万株主にとって優待廃止が話題となる程のオリックスさんだが、さらに驚くべきニュースが入った。


 2022年11月11日、DHCを買収したというもの。

 DHCは健康食品、化粧品を扱う言わずと知れた有名企業で、美輪明宏さんがテレビコマーシャルで朗々とフリーダイヤルを歌い上げるアレだ。


 この買収は創業家からの事業承継のためだという。


 では後継ぎが居なければ会社は続かないのか問題。

 もちろん他の取締役が次代を担うだろう。株式公開していれば、大株主から取締役を出向させる手段もある。社外から取締役を招聘することもできる。


 じゃあそもそも会社っていったい誰のものなんだろう?

 当然、株主ならば決算を経て開催される株主総会では、議決権行使できる。

 私も株主になった企業に対して、配当金と優待を貰うだけではなく、ちゃんと意思表示をする。それが出資者として当然の心得だから。ほぼ賛成票だけどね。


 でも例えば私が「買収なんてダメですよ」と否認に投票してもどうだろうか?

 多数決で議案は可決されるであろう。百株や二百株だけ持つ私個人が騒いだところで大局的には些細な声だ。

 それに私が、じゃあ買収防衛策を構築できる技量があるのか、買収をしない以上のメリットを提示できる知識があるのか、と言われたらノーだ。


 買収される企業も買収する企業も、お互いのメリットが一致した上で株式譲渡契約を締結するのだから、私のような末端の個人出資者は黙ってうなずくしかない。

 それに私だって、DHCのサプリとか買うもんね。

 ひいてはそれがオリックスさんの連結売上になるのならば、良い事だらけ。

 そうやって業績に反映されて、配当として還元されるのだから、やっぱり株式投資というのは面白い世界だ。



 でも個人的に企業買収を全面的に肯定してる訳ではないので、あしからず。

 例えばイオn……まぁ、いいや。それはまた今度。

 


 けっきょく、2016年の配当金は83,047円(税引き後)。

 この年もキャピタルにとどまった。

 やはりメトロポリスへの道のりは長いなぁ。

 こんなケチケチ節約生活なのに。


 あ、そうだ。

 旅以外には物欲も無いと申しましたが、ひとつだけ贅沢しました。

 それは腕時計を買いました。

 ワーキングプアでこどおじだったゴリラ村長は自力で次のステップに上がったぞ、と自分へのご褒美として。


 メリケン製のブランド『ハミルトン』。

 良い腕時計は無いかと画像検索しててピンと来て、一目惚れした『Pioneer Small Second Auto・カーキネイビー』(註:現在は販売終了らしいです)を購入した。


 非常に無駄のないシンプルなデザイン。

 今や手元にいつでもスマホがある時代なのに、時間の確認で腕をチラッ。

 客先や得意先回りの打ち合わせで、腕のワイシャツからさりげなくチラッ。

 これが良いのよ。

 若い子にはこの感じ、わかって貰えるかしら?

 わかるかなぁ、わかんねェだろうナ。



 公式の牛本革バンドは、汗や紫外線で三年に一度はダメになる。

 交換品だけで15,400円する。

 それでも身に着けたい一品。

 愛車『ラク太郎』や愛機『ハミるとん』と共に、今日も村を開拓するのだ。

 

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