第9話 イレイス完了
サトルは少将が動かないことを確認すると部屋の出口に向かう。
「見てたんなら助けてくださいよ、アヤカさん」
アヤカと呼ばれた女性は黒のスーツに赤いコートを身につけ、眼鏡をかけている。
「だってえ、楽しそうだったし」
「いたの? アヤカさん。もうほんといいかげんにして欲しいんだけど」
マナミも愚痴を言う。
どうやら少将が蛇神になった時からずっと見ていたようだ。
サトルは少将が持っていた金色の立ち姿の蛇の像を調べみたが、特に変化はなかったようで手に取ってそれをアヤカに渡す。
「アヤカさん、これで良かったの?」
「ええ、これで日本の国益も守られるわ。ありがと」
そう言って去っていった。
「ねえサトル」
「なあに? マナミ」
「どういう事よ? これは一体どういうことなの? 教えて!」
「はぁ。そもそもね、このミイラのイレイスはミイラのイレイスじゃなかったの」
「ん? なんとっ?!」
「うん。エジプト・日本両政府が翠界教団緑焔会の企みを共同で潰す気だったんだよ。アフマド少将は最初からエジプト政府に疑われてたの。まあ、翠界教団緑焔会は日本発祥って言われてるからね、今回協力して日本政府も借りが返せたし、エジプト政府は教団を潰せたしって事だよ」
「うん、全然わかんない」
「僕も最初はわからなかったんだけど、でもマナミと少将の会話を見ていて気づいたんだよね」
「ん? 何で私が出てくるのよ。全く意味がわかんないんですけど!」
「ほら、『死者の書』がどうとかって言ってたでしょ」
「うん、覚えてない」
「ですよね。簡単に言うと『死者の書』は葬祭文書の総称で、カフラ王一族の物は公式には見つかっていないんだよ」
「そうなの?」
「そうなの。だけど少将は明確にカフラ王が書いた『死者の書』って言ったんだよね」
「そっか。わかんないけど、まあいいや。ちゃんとイレイスできたんだよね?」
「いいのかよ。まあ、イレイスは完了したね」
「そっか。んじゃあまあ、後は国家情報保安局に任せて帰ろうか」
「そうだね、あー! 俺、明日ピザ屋のシフト入れられてるんだった!」
「頑張ってね、サトル。て、エルビスなサトルもなかなかカッコよかったよ」
「マナミ、本気か?」
「何よお!」
そう言って二人は後始末を国家情報保安局に任せ、エジプト特殊チームの拠点を後にした。
(完)
イレイサー:File08_カフラ王の呪い(oriental version):憑き者落とし『イレイサー』の現代版 UD @UdAsato
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