第8話 蛇神『サ・タ』

「な? 何を言っているんだ、君は」

「なんで僕が翠界教団緑焔会に協力しなきゃいけないんですか、アフマド少将」


「しかし! しかし君は同じことをすると言ったではないか」

「かもしれません、ですよ。僕はしませんよ、協力なんて」


「騙したのか?!」

 少将はサトルの言葉を聞き青ざめていく。


 突然サトルに詰め寄ると胸ぐらを掴み、そのままサトルを投げ飛ばす。

 その表情はとても冷酷なもので、少将は本気で怒っているようだった。


「残念だ、実に残念だ。しかし、いい機会だ。君たちにも見せておこう。蛇の神『サ・タ』の力を」


 冷静を装いながらそう言うと、懐から金色の立ち姿の蛇の像を取り出す。

 それは、蛇に足が付き、鎖で巻かれているような姿をしている。


「サトル!」

 とっさにマナミが叫ぶ。


 すると、少将は金の像を両手で掴み、目を閉じ呪文を唱え始める。


 すると少将の周りに光の玉が現れ少将の周りを飛び回り、少将の体も光り輝き始めた。


 少将はしばらくそのままでいたかと思うと、突然目を見開き


 グオオオオ!!


 叫び声をあげ、少将の体がみるみると巨大化し金色に輝く大蛇の姿へと変わっていく。


 その姿を見たマナミは刀を抜き構える。


「よくわかんないけど、やってやろうじゃないの!!」


 マナミは少将に斬りかかり、その刃は少将の首を捉える。


 ズシュッ!!


 少将は首元に傷を負いながらもマナミを睨んでいる。

 そして口から毒液を吹きかける。


 マナミはそれをかわすと距離を取り、サトルに向かって大声で指示を出す。


「サトル! 早く!」

 サトルはその場に立ち尽くしたまま動かない。


「なにやってんの! 早く!」

 しかし、サトルは何も答えず少将をじっと見つめている。


「少将まさか、もう」

 サトルが呟く。


「そうだ、その通りだよ、サトル君。私はもう死んでいる。私の体は蛇神『サ・タ』の依代として捧げられた。この体の中に入った蛇神の魂によって、今の私がある。だから今この体に攻撃しても無駄なのだよ」

 少将は勝ち誇ったように語る。


 しかし、サトルはそんなことは気にもしていないように魔銃を構える。

 そして、魔力を込め少将に向けて引き金を引く。


 バァン!!!


 その音と共に放たれた銃弾は少将の胸に青い光が命中し、吸い込まれていく。


 グオオオオオォォォォォ……


「なぜだ、なぜ私に攻撃が」


 少将の問いかけには答えず、サトルは少将に近づく。


 少将は何かを感じ取ったのか、今度はマナミに飛びかかる。

 それをひらりとかわしたマナミは少将の尻尾をつかみ、思いっきり引っ張る。


 ブチィッ!


 少将は痛みでのたうち回る。

 サトルはその隙に蛇の頭に銃弾を撃ち込む。


 バアアン!!!


 蛇の頭は吹き飛ばされ、少将の体も動かなくなり、少将の体を覆っていた光も消えていった。

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