第7話 翠界教団緑焔会

 少将はそもそも今回の遺跡の調査を指揮していたらしい。

 発掘されたミイラの事も、その後の一連の成り行きももちろん知っていたようだ。


 エジプトで動くミイラ騒ぎが起こる前、彼は副葬品である棺をミイラとは別の場所に保管してしまった。それはミイラの回収のためであり、ミイラの封印を解くのが目的ではなかった。ミイラの封印が解けてしまったのは偶然だった。

 石棺を開け、ミイラを確認してすぐに蓋を閉めたはずだったのだが、うっかりしていたのか、誰かが誤って開けたままにしたのか、もしくはその両方なのではないか、と語った。


 それを聞いたサトルは

「それだけではないですよね? 今回のミイラ、蛇の神『サ・タ』に連なるモノですよね?」

「きっ! 君はなぜ?!」


「サトル! あんた何を知ってんの?」

「マナミ、ちょーっと静かにしておこうか」

「あ、はい。ごめんなさい」


「少将、僕もあなたと同じ立場なら同じことをするかもしれません。特にエジプトでは危険でしたでしょう」


「あ、ああ。わかってくれるか。ありがとう。すまない。実はこのミイラの真実は本国にも伝えていないんだ。これは私の問題でもある」

 少将はすべてを語ってくれた。


 少将は以前からある宗教に傾倒していたそうだ。


 その翠界教団緑焔会は謎の宗教団体で、仏教・キリスト教・イスラム教など、それぞれの経典、宗派などに紛れ初めは翠界教だと気づかない仕組みになっている。


 今回教団は古代エジプトの蛇の神『サ・タ』を復活させようとしていたのだった。


 少将はミイラと副葬品の事を教団本部に伝えようとしたものの、ミイラの封印は解かれておらず、ミイラはただ眠っているだけだった。副葬品についてはどれがミイラ復活の鍵になるのかわからない状況であった。そのため、まずは棺と別の場所にミイラを置き、副葬品を手あたり次第置いていった。


「あんた、それでどれだけの人が犠牲になったのかわかってんの?」

 マナミは怒りながら言う。


「私はどうしたらいいかわからなくなったのだ。ミイラを目覚めさせることができれば、そのまま蛇の神『サ・タ』を復活させることができるのではないかと考えた。しかし、ミイラの力が暴走し国全体が危なくなってしまった。このまま彼らに結界に封じ込めて渡せばいい、そう考えた。しかし、ミイラの結界が破られ動き出してしまった」


 少将は大きく息を吸い


「だが結果これで良かった。君も分かってくれるのだろう、サトル君。おかげで教団が求めていた法具を手に入れることができたのだからね!」


 と笑い声をあげながら言った。


「はぁ。何がおかしいんです。それは良かったって僕が言うと思いますか? まあ、ありがとうございます、とは言わせてもらいますよ。おかげで翠界教団緑焔会の狙いが分かりましたからね」


 サトルはにこやかに言った。

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