第70話 開発
「ご、ごめんね。お姉ちゃん……まさか、そんなに怖がっていたなんて思ってなくて……。本当に……ごめんなさい……」
涙目になりながら、琥珀は何度も頭を下げてきた。
しかし、今回ばかりはさすがの俺でも簡単には許せない。
いくら変態の琥珀でも、弱っている俺に手を出すとは思っていなかった……。正直かなりショックだ。
少しでも信じていた自分が馬鹿みたいじゃないか……。
「あの……本当に反省してるから……お願いだから嫌いにならないで……お姉ちゃん……」
「……」
「お姉ちゃんがいなかったら、私は生きていけないの……」
俺が何も言わずにいると、ついに琥珀は泣き出してしまった。いつもは強気な琥珀がここまで落ち込むのは初めて見たかもしれない。
こっちが被害者なのに、そんな悲壮な顔をされたら、なんだか俺が悪いことをしたみたいじゃないか……。
「琥珀はもう少し、人の気持ちを考えた方がいい」
「人の……気持ち?」
「うん、そうだよ。主に私とか……あと、依狛も見張りをしていただけなのに、火をつけるなんて可哀想だよ」
琥珀はハッとした表情を浮かべた。どうやら自分の行動がどれだけ残酷だったのか理解したようだ。
「うぅ……でも、お姉ちゃんに会いたくて……それで……」
大きな耳をペタンと倒しながら、彼女は俯いた。その姿を見ると少しだけ罪悪感を覚えるが、俺は心を鬼にして言い放つ。
ここで甘やかすわけにはいかないのだ。ここはビシッと言っておかないとまた同じ過ちを繰り返すことになる……。
「でもじゃないよ。どんな理由があっても、人に火をつけてはダメ。当然のことでしょ?」
「うん……」
「私だって琥珀のことが嫌いなわけじゃない。むしろ好きだよ」
この世界に来て、目覚めた時からずっと一緒にいてくれた。だから、真白としてだけでなく、俺としても琥珀は大切な存在だ。
だからこそ、彼女には道を誤ることなく真っ直ぐ育って欲しい。
いつもそばにいてくれて、守ってくれる。そんな安心できる存在であって欲しい。
決して、そばにいると恐怖を感じるような存在であっては欲しくない。
「でもね、あまりにも自分勝手な様なら、私だって嫌いになっちゃうよ」
「うっ……うう……」
「だから、これからはもっと周りのことも考えて行動するんだよ。わかった?」
「ぐすっ……うん」
「よしよし……」
頭を撫でると、琥珀は小さな嗚咽を漏らしながら抱きついてきた。
俺はそれを優しく受け止める。これまでずっと撫でられる側だったけど、今日くらいは俺が彼女を慰めてもバチは当たらないだろう。
「落ち着いた?」
「う、うん……。ありがとう」
「どういたしまして」
俺から離れると、琥珀は頬を紅潮させながら目を逸らす。そして、もじもじと指を絡ませながら、何かを言い淀んでいた。
「どうしたの?」
「えっと……その……ちゃんとお姉ちゃんが嫌がらないようにしたら、一緒に遊んでくれる……?」
「うん、いいよ」
「やった! 約束だからね! じゃあ早速お姉ちゃんも気持ち良くなれる様な技を身につけてくるね!」
「え゛」
琥珀は嬉々として立ち上がると、鼻歌を歌いながらスキップをして去って行ってしまった。
俺は一人部屋に取り残される……。
本当にわかっているのか……あれは……。ものすごく不安だ……。
「それにしても……あれより気持ち良い技か……」
正直なところ、さっきのおへそぐりぐりはなかなか良かった……。前世で味わったどんな快楽よりも刺激的で濃厚なものだった気がする。
恐怖を感じたのも、琥珀というよりかは未知の快楽に溺れておかしくなりそうな自分自身に対してだし……。
あれ以上となると……想像するだけで体が熱くなる。
「い、いかんいかん……。このままだと心まで女の子になってしまう……」
俺は邪念を振り払うために首を振った。
で、でも、琥珀と約束してしまったんだし、もし次に同じようなことがあったしても、それはしょうがないことだ! うん、しょうがない!
うぅ……一体琥珀の技はいつ完成するのか……別に待ち遠しい訳ではないが!
「はぁ……はぁ……」
「なんで息を荒げてるの?」
「ひゃぁぁぁあぁ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます