第69話 危険な妹

「じゃあ、背中拭いていくね……」

「う、うん」


 冷たいタオルが背筋をなぞっていく……。その度にゾクッとした快感に襲われる。


「ひゃっ……」

「あれれ……どうかした?」


 琥珀は意地悪そうにそう言うと、今度は肩甲骨あたりを優しく擦ってきた。

 ニヤリと笑みを浮かべる琥珀の顔が容易に想像できる。絶対にわかっていて聞いているな……。


「もう……変な声出さないでよ。お姉ちゃんがそんなだと、こっちもやる気が出てきちゃうじゃん」


 嘘つけ! 最初からやる気満々のくせに!


「あ〜もう。首の辺り汗でベタベタになってるよ。こっちも綺麗にしてあげるね……」

「あっ……」


 首筋にひんやりとした感触が広がる。その刺激はどんどんと強くなり、やがて脳にまで達すると、俺は堪らず体を震わせた。


「あはは。お姉ちゃんったら、敏感すぎだよ。タオルで汗を拭いているだけなのに」


 琥珀は楽しそうに笑いながら、執拗に首を攻めてくる。


「うぅ……」


 確かに真白の肌が敏感なのもあるけれど、琥珀は明らかに意図して俺の弱いところを狙っている。こんなの耐えられない……。気持ち良すぎてどうにかなりそうだ……。


「あ……ん……」


 だめだ……。意識が飛びそうだ……。このままでは琥珀の思う壺……。なんとかして耐えないと……。


「よし! 背中終わり! 次は前ね」

「あ、うん……」


 ん……? ちょっと待てよ。前って危なくないか? お腹はぷにぷにで柔らかいし、もし胸なんて触らせたら……。


「はい、いくよ〜」


 琥珀の手が前に回ってくる。そして、ゆっくりとお腹に触れていった。


「ひゃん……」


 タオルがお腹に触れると、なんとも言えない快感が体を突き抜けた。


「あれ? どうしたの? そんな甘い声出しちゃって……。もっとして欲しいの?」


 タオルがお腹の上を行ったり来たり……。その動きに合わせて、体が小さく跳ねる。


「あっ……」


 おへその中をかき回すように動かされると、俺は堪えきれずに小さく喘いだ。


「な、何してるの……」

「何って、おへそには汗が溜まるでしょ? だから、こうして掻き出しているの」


 琥珀は俺の質問を適当にあしらうと、再びタオルでおへそをぐりぐりと弄くり始めた。


「そ、そこ……ダメ……」

「どうして〜? ちゃんと拭かないとあせもになっちゃうよ」


 ニヤニヤとした笑みを浮かべながら、琥珀はタオルをおへそに突っ込んだ。そしてそのまま、左右に動かす。


「ん……あ……」


 おへそを虐められて、俺は無意識のうちに声を出していた。


「ん……ん……」


 琥珀の攻めは止まらない。


「も、もうやめて……」

「え〜。まだ始めたばかりなのに……。まあ、おへそはもういいか」


 ようやく解放されると、安堵のため息をつく。だが、琥珀の攻撃はそれだけでは終わらなかった。


「じゃあ、次は胸だね!」

「え、ちょ、待ってよ!」


 危険を察知し、咄嗟に両手で胸を隠す。


「ん? どうして隠すの?」

「だ、だって……恥ずかしいし……胸はいいよ……」

「ダメダメ! 谷間は汗をかくんだよ! しっかり拭かないと!」

「谷間ができるほど大きくないよ!」

「う……そ、それでも! お姉ちゃんの慎ましいおっぱいがベタベタになるのは嫌だよ!」

「い、いやいや、どうして琥珀が私の胸がベタベタになって嫌がるの!? 意味わからないよ! というか、よく考えたら前は自分で拭けるし!」

「うわ……今更気づいたの?」

「隠してた癖にそんな顔しないでよ!」


 クソ……やっぱり琥珀に隙を見せるべきではなかった……。でも……今は後悔している場合ではない。この危機的状況をどうやって切り抜けるべきか考えなければ……!


「とにかく、お姉ちゃんは黙って私に身を委ねればいいの! ちゃんと拭かないと、おっぱいがベタベタの女として生きていくことになるよ!」

「な、ならないよ!」

「なるの!」

「ならな……ひゃっ!」


 突然、琥珀が胸に手を伸ばしてきた。風邪で弱った俺の腕は簡単に振り払われ、胸の中心にタオルが押し当てられる。


「ふふふ、もう逃げられないよ……」

「あ、あぅぅぅ……」

「それじゃあ、拭いていくよ……ってあれ? お姉ちゃーん? おーい。うごかなくなっちゃった? お姉ちゃん?」

「あぅぅ……」

「ん? この匂いは……あっ……」


 ちょろろ……


 あまりに強い恐怖に晒された結果、俺の股間は他のどの部位よりも湿っていた。

 もちろんそれは汗で湿っているのではない……。


「ご、ごめんごめん……まさか、そこまで怖がっているとは……」

「うぅ……」


 先ほどから一転琥珀の顔は謝罪の色で染まる。そして、俺の顔も羞恥心で真っ赤に染まっていることだろう。

 今更謝られても、時すでに遅しというものだ……。


「すぐに着替え、それと別のタオルも持ってくるから!」


 慌てた様子で琥珀は部屋を出て行った。


「はぁ……最悪だ……」


 やっぱり琥珀は危険すぎる……。

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