第22話 頭痛

「それで……ここはどこなんですか? さっきの話だと、あなたが私の体を使ってここに来たんですよね? その時はどうやったんですか? 出口はどこにあるんですか?」


矢継ぎ早に質問をする。

みんな私を捨てたわけではなかった。早く琥珀に会いたい。抱きしめてあげたい。


『えっと……ここは魂交の祠という場所で……基本的に下ってきたから、上に進めばいつかは出られる……はず』「……」

『あと、出口はわからない……』

「はぁ!?」


間抜けな答えに、思わず声を荒げてしまった。


『お、怒るなよ! 俺だって好きで知らないわけじゃないんだ! ただ、ここ迷路みたいで……どうしようもなかったんだよ!!』


使えない……。やっぱりさっさと捨てれば良かったかも……。


「はあ……まあ、いいです。上に進めばいいんですね?」

『はい……』


とりあえず、明かりもないのに進むのは危険だ。

ボウッ……

私は狐火を出して、辺りを照らした。


『本当に使えるんだ。その体……』

「もしかして、術も使えないのに私の体に乗り移っていたんですか?」

『うっ……その通りです……』

「……」


呆れて物も言えない。そんな状態でよくこんなところに来たものだ。


「じゃあ、行きますよ……」

『はい……』


☆★☆


「ん……」


あれからどれくらい歩いただろうか。ずっと暗闇の中を歩いているから時間の感覚がわからない。


『疲れてない? 変わろうか?』

「誰が……。あなたには二度と私の体を使わせません……それに、魂だけ入れ替わっても、肉体が限界を迎えているのなら意味がありませんよ……」

『それもそうだな……。ごめん……』

謝るぐらいなら最初から提案しなければいいのに……。この男は本当に何を考えているのだろうか……。


「うっ……!」

「ど、どうした!?」


頭が痛い……。尋常ではないほどに。割れそうなほどの痛みが襲いかかる。

『大丈夫か?』

「なに……これ…………頭がものすごく痛い……」

視界が大きく揺れる。立ってられない……足に力が入らない……。


『しっかりしろ!』

「むり……もう……むり……」

『くそっ……』


意識が遠のいていく。目の前が真っ暗になり、体の感覚がなくなっていく。


『あれ?』


痛みがなくなった?


「おっ、うまくいったぽい? どこも痛くないし」

『えっ?』


声の主の方を見ると、そこには真っ白な狐娘……。私が立っていた。


『まさか……』

「いや……なんか辛そうだったから……かわれー!って念じたらできちゃった……」

『はあ? もう二度と入れ替わるなって言いましたよね?』

「でも……緊急事態だったし……」

『でもじゃありません! 戻してください!』


鏡の中の少女は心底不満そうだ。

真白って思ったより強気な女の子なんだな……。


「えぇ……せっかく成功したのに……」

『いいから戻して下さい!』

「はいはい……」


もう一度鏡に念じる。するとまた鏡に波紋が広がった。


「ふぅ、まったく………………うっ、頭が……!」


ダメだ……。やっぱり頭が割れそう……!


『ほいっ』

『はあ……はあ……』

「やっぱり真白が体に入ると頭痛がするのかな?」

『どうして……私の体なのに……』

「う〜ん……わからないけど、一旦体を預けてくれないか? 悪いようにはしないから」

『……わかりました』


……よし。またこの体に入ることができた。真白に体を返したくないわけではない……。でも、俺だって琥珀や依狛と未来を生きたいんだ。しばらく体は貸してもらう。


「安心して、これでもお姉ちゃんとしての振る舞いは身についてきたんだ」

『不安です……』

「それにさ……」


俺は鏡を覗き込んだ。そして、鏡に映った真白と向き合う。


「今はお姉ちゃん二人分の力があるんだ。きっとなんとかなるさ」

『あなた何もできないでしょう……』

「ぐぬっ」


真白が鋭いツッコミを入れる。なかなか手厳しい……。


「俺だって知識はあるんだ……高校生レベルだけど……」

『高校生?』

「こっちの話だよ」


俺は鏡を片手に、早足で出口へと歩き出した。

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