第69話 館
未だに小雨が降り続いているが、もうすぐ止みそうな気配である。
天を覆う暗雲は蛇孕村から遠ざかりつつあり、中天を見上げれば太陽が、朧の眼にも鮮明に映る。
渓流植物が生い茂る森を抜け、朧は隷蟻山の麓に入る。
雨足が弱まり始めた途端、鴉の群れが喧しく喚き出し、頻繁に樹木の間を飛び交うが、地上を動く影は朧だけ。
他にあるのは、難民の屍くらいだ。
十体近く放置されているが、殺され方は皆同じ。手甲鉤で胴体や頭部を抉り取られ、惨い死に様を晒している。当然の如くお
暫く山道を登り続けると、終着地点に到着した。
先代当主が一泊する為だけに建てられた館。金遣いの荒い先代当主らしく、瓦屋根の大規模な建物だ。寺社仏閣の如く高い塀を巡らせ、外部から館の様子が見えないように造られている。
大手の門扉は開いていた。
特に警戒する事もなく、無造作に邸内へ入ると、館の外観に驚かされた。
正門から主殿まで続く石畳。馬手を向くと、屋根と滑車がついた井戸。弓手に視線を向けると、馬を繋ぐ為の
前回の視察で馬を使用した記録はない。記録はないが、館を建てる時に駄馬を使用したのだろう。下流の浅瀬から荷駄を運び、何ヶ月も掛けて隷蟻山に豪邸を建てたのだ。
まさしく金持ちの道楽である。
石畳で舗装された道を通り、金銀で装飾された主殿の前に立つ。
装飾品の一つでも盗んで売れば、難民も潤うたであろうに……と心の中で呟くが、買い手がいないのだから、金も銀も路傍の石と変わらない。
大刀の感触を確かめながら、朧は主殿の階段を登る。
正門と異なり、主殿の扉は閉じていた。用心の為と言うより、これも対手の罠と考えるべきだろう。無論、朧に迷うという選択肢はない。
どがんッ――と扉を蹴り飛ばすと、朧の視界に室内の光景が飛び込んでくる筈が、美貌に向けて細い棒が飛んできた。
短い矢だ。
対手の行動を読んでいたので、両腕を美貌の前に
「あれ? 読まれてたの? こいつは驚いたア」
左腕の手甲鉤を前方に向けながら、お
一先ずお
主殿の広さは、三十二畳ほどであろうか。床は畳を敷いている。天井に梁があるが、障害物になるような物はない。一面の畳を除けば、極めて簡素な造り。否、襖を取り除いた結果、茶室と道場を折衷したような場所になったのだ。よく見れば、部屋の隅に鍋や桶が放置されており、中途半端な生活感を出していた。最近まで難民が暮らしていた証だ。
先代当主が他界した後、住処を館に移したのか。
賢い選択だと思うが、薙原家が見逃す理由が分からない。これも叛乱を誘発させる為の下準備であろうか。
勿論、朧は薙原家の思惑に興味はない。
寧ろ気に障るのは――
傲然と煙管を楽しみながら、邪悪な笑みを浮かべる年増女中だ。
「つーか、此処に着くまで時間掛けすぎだろ。あンまり退屈だから、思わず一人古今東西始める処だったぜ」
イエーッ、と紫煙を吐き出しながら、お
だが、朧の様子に気がつくと、途端に目を細めた。
「随分とノリが
傲岸な態度を貫こうと、薙原家に召し抱えられる前から荒事の専門家。一目見ただけで、朧の負傷や肉体的負担を把握する。
「やっぱりルーリーの他にも、刺客を揃えてたのか。まあ、楽して勝つに越した事はねえし。ここは美味しい処だけ頂きますか」
右手で煙管を口元から離し、左手の手甲鉤を弓手に向けて、余裕の表情で言い放つ。
左手の袖口から発射された短い矢は、中二病の武芸者――ではなく、壁に貼り付いていた難民の女に突き刺さる。左胸を短い矢で射貫かれて、難民の女が激痛で呻いた。
合計で五本の矢が体中に突き刺さり、見るも無惨な有様だが、女は決して逃げようとしない。その場から一歩も動こうとしないのだ。
その理由は、朧にも察しがついた。
お
しかも女童の顔に見覚えがある。
乱戦の最中に、朧を竹槍で刺した女童だ。
母親と共に館まで逃げてきたのだろうか。
いくつかの疑問が、朧の脳裏に過ぎる。
「何をしておる?」
朧は硬質な声で尋ねた。
「暗器の練習」
強烈な怒気を受け流し、お
「もうバレてると思うけどさア。ルーリーは元々透波なンだよ。
難民の女に向けた左袖の中から、羽根のない矢が飛び出す。
やはり女は逃げない。
矢が右目を貫き、女の絶叫が室内に響いた。
「
朧は忌々しそうに呟く。
袖箭とは、明国から伝えられた暗器の一種だ。七寸から一尺の筒にバネを仕込み、その力で短い矢を撃ち出す。袖の中に隠して目標を仕留められる為、暗殺に最適な暗器と言える。一発だけ矢を放つ
連発可能な飛び道具を持つ手甲鉤の使い手。
剣士からすれば、厄介極まりない。
朧の胸中を頓着せず、お
「で――ルーリーは、昔から暗器が苦手なンだよ。別に暗器に拘る理由もねえンだけどよぉおおおお。透波と言えば、暗器が使えて当たり前みたいに思われてンだろ? だから暇潰しを兼ねて、暗器の練習をしてたのさ。生きた人間を的にした方が、練習の意欲も高まる。朧さんもそう思うだろう?」
お
女童が苦痛の声を発する。
「見ての通り、この餓鬼は人質だ。母の愛は偉大だねえ。餓鬼を殺されたくなければ、死ぬまで的になれって命じたら、ホントに動きやしねえ。お陰で袖箭の練習が捗る捗る」
うけけけけ、とお
朧は激情を胸の内に押し込み、努めて冷静な声音で尋ねた。
「お主に訊きたい事がある」
「答える義理はねえ――と言いたい処だが、あと半日もしたら死ぬンだろ。冥土の土産に教えてやンよ」
「何故、この館に難民が戻り来る?」
「……は?」
「此度の叛乱は、どうにも気味が悪い。吊り橋の前で斬り斃した難民は、間違いなく死兵の集まり。玉砕覚悟の兵ばかりであった。女童のような例外もいたが……少なくとも視察団を襲撃した折は、皆命を捨てて挑んできた。それがこの館に辿り着くまでに、難民の屍を十も見掛けたぞ。平易に考えれば、命惜しさに逃散していたであろう。命を捨てる覚悟を決めても、実戦に身を投じれば、決死の覚悟など吹き飛ぶ。
「あー、それは同感だねええええ。こンな面倒臭せえ騒ぎを起こさなくても、難民を全て木偶人形に変えちまえば、全滅するまで殺し合わせて終わるのによ。それだと後始末が大変なンだと。ルーリーも詳しくは知らねえし、おゆらさんの悪巧みに興味もねえけど、なンでも『死ぬ気で視察団を襲う難民』や『途中で逃げ出す難民』、後は『混乱に乗じて民家を襲う難民』つーのも用意されてたみたいだなア。他にも色々と精神操作を施された奴もいるみてえだが、この親子は『途中で逃げ出す難民』に選ばれたってわけだ」
お
「ホント、おゆらさんはえげつねえよ。完全に意識を奪わず、記憶の改竄と精神操作だけで事を運ぶ。この親子も視察団を襲うまで、本気で玉砕するつもりだったンだぜ。だが、一方的に味方が殺される最中、強制的に『
朧の疑問が氷解していく。
おゆらは難民一人一人に役割を与えて、『叛乱らしい叛乱』を演出しているのだ。死に物狂いで戦う難民。情勢を不利と見て逃げ惑う難民。叛乱の混乱に便乗して民家を襲う難民。『
奏の件を除けば、おゆらの目論見通りに進んでいる。
本当に性根の腐り果てた女だ。
必ず斬り殺す――と獰猛な殺意を再確認した処で、今は現実に目を向けなければならない。
「いい加減に、その足をどけよ」
俯せの女童が顔を上げた。
女童の顔には、期待と疑念が入り交じり、朧に複雑な視線を向ける。竹槍で突き刺した相手に助けを求めてもよいのか、女童は逡巡しているのだ。
「女童……儂に助けてほしいか?」
「……はい」
長考の後、女童は小さな声で答えた。
「母親も救うてほしいか?」
「はい!」
今度は大きな声で答えた。
女童にも自分の意思がある。妖術で操られるだけの木偶人形ではない。生き地獄からの生還を期待し、無垢な瞳を喜色で輝かせる。
朧は相好を崩すが、お
「この状況で餓鬼と母親を助けようと思ってンのか?」
「カカカカッ、儂は現役の中二病ゆえ、最も困難な道を選びたいのじゃ」
「ふ~ん。あっそ」
お
「――ッ!?」
朧は瞠目するが、時すでに遅し。
幼い命は儚くも散り、お
「
全く悪びれた様子もなく、嘲笑しながら両腕を広げた。
「お主……ッ!」
朧が低い声を震わせる。
「えッ――何? キレてンの? 難民の餓鬼が一匹死んだくれえで、マジになっちゃたわけ?」
嘲ると言うより、拍子抜けした様子で、お
「お~いおいおいおい! 勘弁してくれよ、朧さアアアアん! アンタはルーリーと同じ外道だろ! これまでに何百人も殺してきた極悪人じゃねえか! さっきだって楽しそうに穴居人共を殴り殺してたしよぉおおおお! それが突然、子供の命を尊ぶ偽善者に早変わりかよ! 冷めるわアアアア、そういう態度メッチャ冷めるわアアアア!」
露骨な挑発を聞き流し、朧は黙して佇んでいた。
精神的な優位を確信したお
「結局、それが中二病の限界だ! 理屈にならねえ妄言を吐き散らし、世の流れに逆らう自分を慰めるだけ! 現実社会に適応できねえ引き篭もりの戯言! 学もなければ、礼法も知らねえ! 毎日、
お
言い掛かりも甚だしいが、朧は無言を貫き通す。
「ほら、アレだ。アレをしてこい。一昔前に流行したヤツ。馬に
「……」
「つーわけだから、朧さんよ。早速馬に轢かれて死ンでくれや。運良く異世界に転生できれば、朧さんでも上級国民になれるぜえ。別に転生できなくても、口減らしにはなるからよぉおおおお。世の中の為にも死ンで――」
「うわああああ!」
娘を殺された女が狂乱し、喚きながら跳び掛かる。
「だアアアアかアアアアらアアアア! なんで話の途中で割り込ンでくンだよ!」
お
「ぱにゅうううう」
気の抜けた悲鳴を上げて、女は駒の如く回転する。力尽きて畳に跪いた刹那、銀色の光が水平に走り、女の首が転げ落ちた。
いつの間にか、左右の上腕部の外側に鎌のような刃を備えていた。
一体、この女はいくつの暗器を所持しているのか。
「甲斐の山猿は、みんな他人の話に割り込んでくる礼儀知らずなのか! それとも武田信玄が死ぬ前に『他人の台詞は、最後まで言わせるべからず』とか傍迷惑な遺訓でも残したのか! 何回、ルーリーの邪魔をすれば気が済むンだ、このゴミムシどもが!」
首のない屍を罵倒すると、お
黄色の小袖の下に隠していたのは、京の職人が仕立てた
さらに両腕には、
「この
二房に結んだ髪を揺らしながら、堂々と名乗りを挙げた。
「なんでもかんでも、組み合わせればよいというものでもなかろうに……」
逆に朧は、珍妙な手甲鉤を見つめながら嘆息する。
館に入る前よりも、朧の士気が落ちている。
お
寧ろ気になる。
どう見ても、お
勿論、当人が気づいていないだけで、裏中二病という可能性も有り得る。だが、本当に恐ろしいのは、未練なく中二病を卒業していた場合だ。
朧でも躊躇うような格好で妄言を吐き散らし、尚且つ「仕事ですから」と割り切る精神力。その神経の図太さたるや、当代に於いて並ぶ者なし。
敢えて比較対象を挙げるとするなら、応仁の乱で味方の武将に限らず、敵方の武将にも軍資金を貸していた
太い。
あまりにも神経が太過ぎる。
同じく中二病を卒業した小原でさえ、
鹿革の柄を握り締め、朧は悠然と室内へ入り込む。
「その深手で近づいてくるのかよ!」
「近づかねば、お主を斬れぬのでな」
ゆるりと間合いを詰めながら、朧は大刀を担いだ。
渾身の片手打ちを放つ。
「ルーリーに室内戦を挑む! それは無謀という事!」
驚異的な跳躍で横薙ぎを跳んで躱し、手甲鉤鎌鋸九宮袖箭を天井の梁に突き立て、ぶらぶらと朧を見下ろしていた。
「――ッ!?」
「どれだけ速かろうと、動きがバレバレなンだよ! 単純過ぎるのさ! ルーリーが手本を見せてやる! 変幻自在な戦い方ってヤツをなアアアア!」
猿のような動きで梁の上に登ると、素速く朧の真上に移動。容易く頭上を取り、両腕の手甲鉤鎌鋸九宮袖箭を広げて、朧の真上から落ちてきた。朧が飛び退いて躱すと、手甲鉤鎌鋸九宮袖箭が畳に突き刺さる。奇しくも背面に廻り込んだ朧は、無防備な背中に袈裟斬りを試みた。
お
前後左右に、上下の運動を含めた空間攻撃。
加えて梁の上で動きを止め、変則的な動きに緩急を加えている。朧は頭を振りながら、その場で佇立するしかない。視線で追う事もできず、対手の動きを読んで反撃に転じる機会もないのだ。
「がらああああ!」
一瞬、黒い残像を視界の端に収め、逆袈裟に大刀を振り上げた。
然し真剣は、虚しく空を切るのみ。
「大外れだよ、ばアアアアか!」
突如背後から嘲りの声。
お
すでにお
天井の梁に逃れて、猫のような姿勢で喜悦の笑みを浮かべている。
「ルーリーの実力は、室内戦でこそ発揮される! 流石の朧さんも手詰まりのようだなアアアア! 太刀筋も乱れてるし、反応速度も普段より格段に遅え! だが、降伏なンて認めねえぞ! ルーリーが
ムササビの如く室内を飛び回り、お
これも朧を混乱される為の策であろう。声に反応して振り向いても、その時には別の場所へ移動し、死角に回り込んで攻撃してくる。
朧は大仰に溜息をつくと、視線で追い掛けるのを止めた。
「お主の大道芸は飽いた」
「なンだと!?」
お
「確かに速い。動きも変則的で読みにくい。緩急を用いて、対手に拍子を読ませないのも見事じゃ。然れど――」
不意に左手を突き出し、長い髪の房を掴み取る。
「体捌きに髪の毛がついてきておらん。是では捕まえてくれと――
忽然と左手に激痛が奔り、髪の房を離してしまった。
左手を見下ろすと、細長い針が左手を貫通していた。
ツインテールに針!?
「お主、髪の毛に針を仕込んでおったのか!」
「痛えじゃねーか! 首の骨がゴキッていったわ! ルーリーを殺す気か!」
朧の非難に、怒声で返すお
敵に言われるまでもなく殺す気だが、それよりも驚愕すべき事実がある。
髪の毛に針を仕込んでいたのは、暗器と考えれば納得もいく。寧ろピンポイントで針を掴んだ自分を褒めてやりたい。
理解できないのは、お
空中移動の最中に髪の毛を掴み、強引に動きを止めたのだ。お
致命傷だ。
助かる筈がない。
常識を覆すという事は、常識を覆す力が働いている。
「クソババアの妖術か」
「正解だぜ、朧さん。どンな深手も一瞬で治るンだ。殺し合いの最中に、眷属を持ち歩かねえ方がおかしいだろ」
お
つまり一瞬で心臓の動きを止めなければ、勝負は長引くばかりだ。首を刎ねるか、心臓を切断するか……即死でなければ意味がない。
左手を貫通する針を囓り、引き抜いて捨てる。
「ちと面倒になってきたのう」
朧が億劫そうに言うと、お
「安心しろ、日が暮れる前に始末してやる。五体をバラバラに切り分けて、蛇神の使徒が喰いやすいようにしてやンよ。遠慮なく妖怪共の餌になれや」
「御免蒙る。お主に殺されてやるほど、儂の命は安うない。死ぬのはお主じゃ。心ノ臓を刺し貫いた後、その首を刎ね落とす。万に一つも蘇らぬように、首と胴は別の場所に捨てよう。後は鴉の餌になるがよい」
予め互いの殺し方を宣告し、両雄は睨み合った。
お
袖箭を使うつもりか。
朧は左脚を下げて、右半身の姿勢を取る。
大刀を持つ右手の手首を捻り、刀身を横に寝かせて立てた。
「うけけけけ。覇天流の朧さんが、防御に徹するなんてよぉおおおお。滅多に見られない光景だよなアアアア」
「……暗器が苦手など騙りであろう」
朧は皮肉を返すが、待中剣の構えは解かない。
飛び道具は剣士の鬼門。飛び道具に備えていたとしても、都合良く弓矢を避けたり、刀で手裏剣を弾く事はできない。待中剣の構えも同様。上半身の守りを固めても、下半身を守る事はできない。どうしても右脚が、がら空きになるのだ。
「期待に応えるぜええええ。朧さんの期待に応えるぜええええ」
お
羽根のない矢が、朧の右脚の太腿に突き刺さった。
痛みを覚悟していた朧は、九宮袖箭の一撃を受けても微動だにしない。
朧が動揺を見せたのは、右脚を射貫かれた直後だ。
「――何ッ!?」
九宮袖箭の発射と同時に、お
流石の朧も反応が間に合わず、構えていた大刀に革袋のような物が当たる。革袋は簡単に破けて、黒い粉末が飛散した。
「――ッ!?」
両目に激痛が奔り、瞼を開ける事ができない。
「言っただろ、朧さん。ルーリーは透波の出だってよぉおおおお」
「毒……を――」
朧は激しく咳き込み、身を屈めて悶えた。
「当アアアアたりだよぉおおおお! 朧さんに浴びせたのは、透波が使う猛毒の粉末さアアアア!
「――ッ!!」
五寸釘を腹部から素手で取り出しても堪えた朧だが、無防備にも左手で両目を覆い、苦痛の悲鳴を発する事しかできない。
凄まじい臭気と痛み。
裂傷とは、根本的に痛みの質が違う。刃物で肉を切り裂かれた時は、
然しこの痛みは違う。
眼球に溶けた鉛を流し込まれる感覚。加えて瞼と眼球の間に、酷い異物感がある。灼熱の砂が、ごりごりと眼球の上で動くのだ。
涙と鼻水が止まらない。
もはや大量の涙を流しているのか、血を流しているのかも分からない。
「
「おのれ……」
「ルーリーは、無事に中二病を卒業したンでええええ! おゆらさんを見習う事にするわアアアア! 確実に! 効率良く! 標的を始末する! 然し殺し方は予告通り! テメエの身体をバラバラにしてやる!」
喚きながら朧に近づき、右腕の手甲鉤鎌鋸九宮袖箭を振り上げる。
対する朧は視界を封じられ、迂闊に身動きが取れない。辛うじてお
「ばいば~い。人斬り馬鹿の朧さアアアアん」
勝ち誇るお
右腕の外側に伸びた刃が、勢いよく振り下ろされた。
七寸……約21㎝
一尺……約30㎝
矢留……停戦命令
附子……トリカブト
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