第61話 室町幕府の高転び

 やはり最初に感じたのは、香の匂いだった。

 六畳程度の狭い部屋に、板張りの床と円座。

 文机に置かれている物が、前回と少し違う。『三好経世論』の写本と先々代本家当主の日記。何の変哲もない秤。銅銭三十枚が重ねて積んである。先々代の本家当主の日記が追加されたのだ。他は何も変わらない。

 燭台の炎の先には、奏の肩の高さまで円座が置かれていた。円座の上に座るのは、小さな獺だ。

 明晰夢。

 奏は夢の世界に戻ってきた。


「大変です、先生」

「いきなりどうした?」

「現実の世界の僕は、夢の中で起きた事を全く覚えていません」

「――」

「これじゃあ、夢の世界でおゆらさんの目的に辿り着いても、現実世界の僕は何もできません。おゆらさんの掌の上で踊らされるだけです」

「その程度の事で焦るな。最初から予想されていた事だろう」


 奏が焦りを隠さずに言うと、獺は冷静に応じた。


「現実世界のお前が、夢の世界の記憶を引き継いでいないから無駄――というわけではない。実際、現実の世界にも、多少の影響を与えているだろう」

「『みのたなのうえからさんだんめ』……先々代の御本家様の日記」


 奏は書物を手に取り、古びた表紙を見つめる。


「読んだか?」

「現実世界の僕はまだですけど。これ、子供の頃に読んだ事あります。急に先生が、『先人の知恵を学ばなければならない』とか言い出して。歴史の講義で読んだ事あります。でも内容が思い出せない……」

「おゆらの仕業だな。『毒蛾繚乱どくがりょうらん』で精神を操作し、都合の悪い記憶を思い出さないように仕向けた」

「……」


 奏は唇に右手を当て、沈痛な面持ちで黙する。


「私からもお前に伝えなければならない事がある」

「なんですか?」

「前に明晰夢を見てから、数日ほど経つが……その間に、お前は三度も記憶を改竄されている」

「――ッ!?」


 奏が仰天して目を剥いた。


「如何なる記憶を改竄したのか、私にも分からんが……まあ、大した事ではあるまい。おゆらは、お前の脳に負担が掛かる事は、徹底して避ける筈だ。気にするな」

「気にしますよ! 脳に負担が掛からなくても、心に負担が掛かります! 僕は一体、何の記憶を書き換えられたんですか!?」

「前にも説明したが……私は、お前の夢が造り出した虚像だ。お前の知らない事は、私も知りようがない」

「――」

「然し私は、お前に注意を喚起できる。例えば記憶の改竄だけではなく、精神の操作も行われている」

「精神操作は解除された筈じゃ?」

「改めてお前の精神に楔を打ち込んだのだろう。『何かをしてはいけない』という命令ではないな。『何かを思い出せない』か『何かを気に留めない』のどちらかだろう」

「その……『何か』は分からないんですか?」

「私やお前が『何か』を分かれば、精神操作の意味がなくなる。『みのたなのうえからさんだんめ』のように、寝起きの自分に期待するんだな」

「そんな……」


 奏は不安そうな表情で俯いた。

 夢の中で思い悩んでも意味がない。結局、『現実世界の自分』という世界で一番信頼できない人物に期待するしかない。

 歯痒い事だが、どうにもならない。

 奏は心を落ち着けようと、湯呑の麦湯を口につける。


「……あれ? 湯呑なんてありましたっけ?」


 湯呑から口を離した後、驚いて湯呑を見つめた。


「お前が湯呑を創ったのだ。夢の中だからな。お前が望めば、湯呑も麦湯も出てくる」

「やっぱり便利ですね、夢の中」


 奏は感嘆しながら、麦湯で喉を潤す。

 麦湯の香り。

 麦湯の熱気。

 麦湯の味。

 麦湯が口から、喉の奥に入り込む感触。

 全てを現実のように感じるが、それでも夢は夢。仮に夢の世界で『現実世界の全ての問題を解決する道具』を創り出しても、現実の世界に何の影響も与えない。

 今の奏が成すべき事は、夢の世界で獺(自分)と問答し、おゆらの目的を見極めて、現実世界の自分に希望を託す事だ。


「偖……前回の続きを始めよう。室町将軍家の治世だ」


 秤に視線を移すと、皿の上に銅銭が載せられていた。前回は馬手の皿に三枚。弓手の皿に三枚。今回は双方の皿に、五枚の銅銭が載せられている。合計で十枚だ。


「前より銅銭が増えた?」

「商いが齎す乗数効果じょうすうこうかだ。銅銭を地中に埋めても、銅銭どうせん泡詐欺バブルしか起こせない。然し正当な取引で使えば、十倍にも二十倍にも膨れ上がる。具体的に言えば、きんげん交鈔こうしょうの発行を始め、不要な銅銭が日ノ本に流れ込んできた」

「成程」


 奏は疑問も持たずに納得した。


「馬手が室町将軍家の皿。弓手が日ノ本の民の皿と考えろ」

「……」

「鎌倉執権家が滅亡した後、後醍醐院が京師で親政を始めるも、古き秩序の回復に多くの武士が反発。足利尊氏は後醍醐院と袂を分かち、北朝と南朝の争いが始まった。南北朝の争いは何十年も続き、足利尊氏の嫡孫――足利義満あしかがよしみつが北朝と南朝を統合させ、日本国王を号した。権力の拡大を望む義満は、唐との貿易で大量の銅銭を輸入し、室町将軍家の支出という形でばらまいた」

「また外貨頼り……」


 奏が呆れるように言うと、獺は苦笑した。


「『商品貨幣論』を盲信する者は、銭を物々交換の道具だと思い込む。彼らの目には、唐との貿易利潤が黄金きがねの如く映るのだろう。確かに遣明船を送るだけで、室町将軍家に二十万貫の回賜金かいしきんが与えられる。これが十年に六度も続くのだ」

「朝貢外交の見返りか。銅銭千枚を一貫と捉えるなら、一度で二億枚も輸入された事になりますね。省陌はくせいだから、銅銭九十七枚を十分の一貫と考えて……一億九四〇〇万枚。重さで考えるなら、およそ十五万五二〇〇貫……よく日ノ本まで輸送できましたね」

「遣明船を何百艘も揃えたのではないか? 『教言卿記ことみねきょうき』の記述によれば、遣明船五百艘揃えても安い投資だ。生糸きいと綿糸めんし景徳鎮けいとくちん梅園石ばいえんせき、書籍、薬材……特に唐糸からいとと呼ばれた生糸は、仕入れの何十倍の粗利益を出したとか」

「……」

「室町将軍家も北山殿や相国寺造営など、都鄙貴賤に権威を示した。室町将軍家の思惑はどうあれ、北山殿や相国寺造営の費用を支出した分、普請に関わる者達や僧侶の所得が増える」

「……」

「唐物を買い漁る寺社も有徳人も、積極的に銭を出した。都鄙貴賤の消費も増えて、日ノ本の供給能力も高まった。商業の発展が良い例だ。銅銭が十年の間に一億九四〇〇万枚も輸入されたからな。村落の地下人ぢげびとは土倉に借銭の利息を取られても、僅かな銅銭や米が手許に残り、地方の特産品を市で売る余裕が生まれた」

「……」

問丸といまる馬借ばしゃくなど、荷物の運搬に必要な輸送業者も発達。加えて割符が普及した事で、都と鄙の商いが活発になった」


 問丸とは、運送業や貸倉庫業、商品の委託販売業を兼ねた組織だ。年貢米を陸揚地で回収する為、河川や湊に近い都市を拠点にする。馬借は、馬で荷物を運搬する輸送業者。情報伝達技術が発達していない時代、彼らが齎す情報は、庶民の生活に直結する。

 割符とは、為替の事だ。

 割符の発祥は、鎌倉時代に遡る。遠隔地から年貢を運ぶ手間を省く為、地方の土倉が割符を利用していた。それが室町時代の初期になると、割符を専門に扱う割符屋が広まり、都市と地方の商人が割符を利用するようになった。

 いつの間にか、秤の銅銭が増えている。

 室町将軍家の皿が六枚。日ノ本の民の皿が六枚。外貨頼りの是非は置いても、日ノ本の資産は増えた。因みにインバウンドやトリクルダウンとは、何の関係もない。単純に政府(権力者)支出と民間支出と純輸出が増えた結果、日ノ本の国内総生産が増えたのだ。


「結果、日ノ本の商いが都に集中し、京師の土倉が台頭した」

「?」

「元々京師の土倉は、比叡山延暦寺の庇護を受けていた。比叡山の僧侶より預けられた銭を他人に貸し与え、細々と富を蓄えて増やしていたのだ。それが室町将軍家の治世に変わると、急に借入需要かりいれじゅようが拡大した。京洛に集う守護の屋敷と菩提寺の建設。唐物を買い漁る寺社と有徳人。畿内で新たに商いを始める者達。比叡山から吐き出された銭では、新規の借入需要を満たす事ができず、京師の土倉は祠堂銭しどうせんに目をつけた」

「祠堂銭……」

「臨済宗や曹洞宗の寺院が、永代供養という名目で武家から集めた銭だ。元本保証の月利二分。禅寺らしい手堅い商いだな。然し多くの禅寺は、鎌倉執権家の庇護を失い、祠堂銭の運用に難儀していた」

「銭を貸したくても、元手が足りない京師の土倉。莫大な銭はあるけど、貸し手が少ない禅寺。両者の利害が一致しますね」


 奏が神妙な面持ちで言う。


「京師の土倉は祠堂銭を取り込み、武家から集めた銭も動かせるようになった。比叡山の銭に武家の銭を加えて、分限者の莫大な借入需要に応えつつ、鄙の武家や村落の債権を買い集めた」

「武家や村落の債権? どうしていきなり?」

「京師の土倉も理解していたのさ。鎌倉執権家の治世、鄙の土倉が如何にして富を増やしていたのか」

「……」

「鄙の土倉が所有する債権を買い集め、諸国の武家や村落から富を搾り取る。月利二分の祠堂銭も武家や村落に貸す時は、月利七分に変わった」

「月利七分!? 他人から借りた銭を又貸しするわけだから、利率が上がるのも分かりますけど……そんな高利で貸し出せば、村落は一度の不作で利払いすら覚束なくなります」

「京師の土倉の目的は、鄙の武士や村落から土地を奪う事だ。滞りなく借銭を返済されると、彼らの目的が果たせなくなる」


 中世の利率は、月利五分が基本である。年利に換算すれば、六割から六割五分。当時は閏月うるうづきを設定しており、閏月に利子を取らない場合もあった。

 一つの稲穂から五十粒から三百粒の収穫を見込める為、播種量はしゅりょうと収穫量を考えれば、暴利とも言い難い。領主から出挙で種籾を一石ほど借りた場合、収穫期に五十石の生産が見込める。村落の年貢を五公五民とするなら、領主に二十五石を納める。加えて出挙の元本と利子分で一石と六十五匁を支払えばよい。不作で収穫量が激減しない限り、年貢納入も出挙の返済も問題なく終わる。仮に不作で収穫が見込めなくても、領主に年貢の軽減や出挙の返済猶予を求めればよい。

 然し土倉から借りた銭は違う。

 土倉から銭を借りた場合、年利換算で八割四分。土倉から種籾を一石ほど借りた場合、一年以内に元本と利子を併せて、一石と八十四匁を返済しなければならない。中世の借銭は、債務者が返済を終えない限り、債権者が借用証書の借り換えを行う。つまり村落が一年以内に元本と利子を払えなければ、雪だるま式に借銭が増えていく。

 当然、土倉は豊作や不作など気にも留めない。村落に返済能力がないと見切れば、質草の田畑を奪い取り、村人を人商人に売り払うだけだ。


「室町将軍家は何をしていたんですか? どうして土倉の商いを規制しないんですか?」

「同時期に室町将軍家は、京師の土倉から課税の権を得ている」

「課税の見返りに、室町将軍家の庇護を得たと」

「比叡山延暦寺と室町将軍家。双方の庇護を得た京師の土倉は、非道の限りを尽くしたという。室町将軍家の宿老に働きかけ、土倉が儲かるように法を改正。不利益を蒙る者が訴え出ても、雑務を取り仕切る奉行人は買収済み。相論そうろんが始まる前から、確実に勝訴を勝ち取る。初めから鄙の武家や村落に勝ち目はない」

「悪魔崇拝者が蔓延るなんて……澆季ぎょうきです」


 奏は苛立ちを込めて吐き捨てた。


「租税貨幣論を理解していれば、室町将軍家もお前の言葉に耳を傾けたかもしれん。然し室町将軍家は、悪魔崇拝者の戯言に乗せられるまま、破滅の道を突き進んだ」

「……」

「先ず唐との貿易を止めた」

「……」

「足利義満の死後、朝貢外交に異を唱える者が多数を占め、唐との貿易は停止。室町将軍家を支える税外収入が、霞の如く消え失せた」

「それも悪い事ではないですけど……室町将軍家は『商品貨幣論』を盲信しています。税外収入がなくなれば、代わりの財源とか言い出す筈です」


 奏の懸念を汲み取るように、獺が説明を続ける。


「お前の懸念通り。室町将軍家は『緊縮財政』を始めた」

「……」

「歳出を切り詰めれば、税外収入や税収が落ち込んでも、収支を黒字に持ち込める。足利義満の頃は、北山殿や相国寺の造営など、財政拡大を続けていた。然し室町将軍家第四代将軍――足利義持あしかがよしもちは、悪魔崇拝者共の妄言を真に受けて、室町将軍家の黒字化……所謂いわゆる財政健全化を始めた」

「基礎的財政収支黒字化目標を据えた財政健全化……」


 奏は唇の端を引き攣らせ、破滅の呪文を口にした。


「先の公方くぼうより信心深いようで、足利義持は宗教行事を繰り返していた。最も大規模な財政出動は、応永おうえい二十六年の祈年穀奉幣きねんこくほうへい。応永の飢饉に対応する為、畿内の有力な二十二の神社に豊作の祈祷を頼んでいる」

「……」

「祈年穀奉幣の費用は、二八一貫七〇〇文が計上された。然し祈年穀奉幣の費用の内、一一〇貫八〇〇文を土倉に払わせ、残りの費用を諸国の守護に出させている。つまり室町将軍家は、一文たりとも支出していない」

「飢饉の対策費用を土倉と守護に押しつけ、基礎的財政収支黒字化に固執したのか……」


 奏は痛ましい表情で呟いた。


「国内総生産は、政府支出と民間支出と純輸出を加えたもの。純輸出は、輸出から輸入を引いたもの。つまり唐との貿易を止めても、純輸出の損失と同額以上に政府支出を増やせば、必然的に国内総生産は増えます。貿易の停止で損失を出した者は、室町将軍家が粗利益を補償する。室町将軍家の都合で損失を出したのだから、当然の救済措置です。室町将軍家の宿老は、四則演算もできないんですか?」

「室町将軍家は、当時の日ノ本でも優秀な人材を集めていた。日ノ本に限らず、唐からも知識人を招いている。勿論、全て『商品貨幣論』を盲信する者達だが」

「何の意味もありませんよ。抑も景気後退期に、基礎的財政収支黒字化なんて馬鹿げてます。意味もなく民に飢えて死ねと言うんですか?」

「神仏も愚劣な政に嫌気が差したのかもしれんな。豊作の祈祷を行おうと、飢饉は終わらなかった」


 奏が語気を荒げると、獺は冷静に応えた。


「室町将軍家が支出を減らした分、日ノ本の民の資産も減る。飢饉が長引けば尚更……日ノ本の民の資産が減少した分、室町将軍家の資産は増えるか?」

「増えません。寧ろ室町将軍家の資産も減ります。支出を削減して税収が増えるなら、戦国大名は誰も苦労しません」

「即ち両者の資産が同時に失われる」


 獺が冷静に言うと、秤から二枚の銅銭が消えた。

 室町将軍家の皿に残された銅銭は五枚。日ノ本の民の皿に残された銅銭も五枚。


「南北朝の頃より続いた需要拡大型供給能力不足ディマインド・プル・インフレも終わり、日ノ本は総需要不足デフレに突入した。流石に室町将軍家も拙いと気づいたのだろう。『商品貨幣論』に縛られながらも経済政策を打ち出した」

「悪い予感しかしないんですけど……覚悟を決めて聞きます」

文安ぶんあん麹騒動こうじそうどう生長せいちょうの徳政一揆を知っているか?」

「……いえ」

「それでは簡単に説明しよう。鎌倉執権家の治世より、京の酒屋は繁盛していた。その中でも裕福な酒屋は、麹造りまで取り組み始めた。当時の酒屋は、麹造りを職業の範囲に含まず、麹屋という麹の製造と販売を専門に行う業者に任せていたのだ。麹屋は北野社きたのしゃの庇護を受けて、麹の製造及び販売を独占する北野麹座きたのこうじざを形成。当然ながら北野麹座は、裕福な酒屋の麹造りに反発した」

「……」

「足利義満の死後、『緊縮財政』を始めた室町将軍家に、北野麹座が接近した。運上うんじょうの供出を持ち掛け、京都全域に於ける麹の製造及び販売の権利一切を獲得。その為、裕福な酒屋は麹造りを禁じられ、北野麹座から麹を購入せざるを得なかった。酒屋も反発するが、室町将軍家より『抵抗勢力』やら『既得権益』やら『生産性が低い』と罵倒されて、酒屋付属の麹工房は悉く打ち壊された」

「……」

「麹屋の立場からすれば、麹の製造と販売を独占する事で、利益の最大化が見込める。酒屋の麹造りを阻止し、酒屋に送られる筈の米を麹屋が買い取り、麹屋が製造した麹を酒屋に売り払う。麹がなければ、酒屋は清酒すみざけを製造する事ができない。酒屋は麹屋に頭を下げてでも、彼らから麹を買うしかない」

「……」

「酒屋は比叡山延暦寺の庇護を受けているが、室町将軍家は『土倉酒役』の他に運上を払う北野麹座を保護。比叡山延暦寺を蔑ろにしているから、確かに『聖域なき構造改革』と言える。酒屋は麹屋から高値で麹を買い取り、総需要不足デフレの所為で仕入の上昇を販売価格に反映できず、人件費と設備投資を削り……結果的に京師の分限者は、安価で清酒を買えるようになった」

「室町将軍家が、強引に酒屋の負担を増やしただけです。酒屋に限らず、酒屋に関わる者達も所得を失う。特に馬借はどうするんですか? 酒屋と麹屋の両方に米を届けていた馬借は、間違いなく所得が減ります。馬借で食えない者も出てくる筈です」

「――」

「こんなの……政商を儲けさせる為に仕組まれた『構造改革』じゃないですか。誰も支持する筈がない」

「然し地下人の多くは、室町将軍家の政策を支持した」

「そんな――」

「『格差拡大』と『報道管制』」

「――」

「応永年間に入ると、京でも貧富の格差が顕在化していた。富貴を謳歌する分限者などごく一部。大多数の地下人は、小商いで日銭を稼いで暮らしていた。寧ろ土倉から銭を借りなければ、地子銭ぢごせんすら払えないという有様。酒屋の清酒を楽しむ余裕はない」

「――」

「加えて飢饉で村落を捨てた難民が、京師に押し寄せてきた。数万の難民が京洛に集い、苫小屋とまこやが三条河原に所狭しと並び、餓死者の屍が打ち捨てられる。理不尽な状況を放置した挙句、時衆じしゅうが『酒屋は既得権益。抵抗勢力を打ち倒さなければならない』と広めれば、京師の町衆がどうなるか……想像がつくだろう」


 時衆とは、浄土宗から生まれた新仏教の一つ。時宗じしゅうの信徒を指す言葉である。

 この宗派の特徴は、皇室から武家公家の信徒を持つ反面、都市の最下層の者達も受け入れた事だ。時衆道場には、三枚聖さんまいひじり声門師しょうもんじ鉦叩かねたたき、鉢叩はちたたきなど、巷の下層宗教家が集まった。他にも田楽師でんがくし猿楽師さるがくし、琵琶法師、座頭、猿引など芸能に携わる者達が、社会底辺の業苦から逃れる為、時衆と結びついて阿弥号あみごうを名乗った。その理由は、時宗の教義によれば、自ら名号みょうごうを名乗ると、弥陀みだの境地に達するから。然しそれも表面的な理由で、最下層の者の大半は、仕事や施食せしょくを求めて時衆と結縁した。

 室町将軍家は、一芸に秀でた時衆を同朋衆どうほうしゅうに据え、猿楽や連歌や書画や作庭など、芸能や文化の発展に寄与した。同時に時衆の横の繋がりを利用し、自分達に都合の良い情報を洛中洛外に広めていた。


「京師の酒屋が既得権益……という話は事実だ。京師の地下人は、親の仇の如く酒屋を非難した事だろう」

「それを言うなら、麹屋も既得権益です。麹屋に肩入れした処で、地下人に何の利益もありません。寧ろ酒屋の衰退に巻き込まれて、地下人の所得も失われます。苦しい生活が、余計に苦しくなるだけです」

「諸人は、それほど賢くない」

「……」

「自分で物を考えたりしない。自分で何かを調べたりもしない。ましてや大衆媒体(大手マスメディア)に洗脳された者達に、理性を期待しても無駄だ。大衆媒体が『酒屋は既得権益』と騒げば、酒屋は一分の理もない悪に変わり。大衆媒体が『既得権益の打破』と騒げば、酒屋を苛む室町将軍家が善に転ぶ」

「……」

「貧すれば鈍する。結局、分限者が苦しむ姿を見て、日頃の憂さを晴らしたいだけだ。それで自分達の首が絞まろうと構わない。寧ろ何故、自分達の暮らしが貧しくなるのか、想像すらできないだろう。彼らの教祖である大衆媒体が、理由を説明してくれないからな」

「本当に許し難いですね。悪魔崇拝者の遣る事は……」


 奏は不快そうに吐き捨てた。

 実際に不愉快な話だ。大衆媒体に洗脳された者に、真実を伝えた処で相手にして貰えない。大衆媒体に洗脳されたまま、唯々諾々と無駄に高い税を払い、一部の富裕層に妬みをぶつけ、物知り顔で大衆媒体の受け売りを語り、自分が貧しい理由すら分からずに命を落とす。

 誰も救われない。

 誰も報されない。

 誰もゆるされない。

 大衆媒体に指示された通り、大衆が破滅の道を突き進んでいくだけ。

 本当に不快な話だ。


「貧富の格差を拡大し。貧しき者共の妬心としんを煽り。富める者共を責め立て。さらに貧富の格差を広げ。現世うつしよに混乱と絶望を齎す。『報道管制』が八大罪に数えられる所以だ」

「悪魔崇拝者の常套手段ですけど……そんなの長続きする筈がない。悪魔崇拝者の悪行が長く続くなら、とっくに日ノ本の民は絶滅しています」

「そうだな。分限者と地下人と難民を分断させても、鄙の村落が残される。飢饉と債務に苦しむ村々は、仕事を奪われた馬借と手を組み、債務免除を訴える一揆を形成。畿内全土で一斉に蜂起した」

「それが生長の徳政一揆」

「然し多勢に無勢。義憤に燃える一揆勢も、室町将軍家の侍所さむらいどころに鎮圧された。財政健全化を目指す室町幕府は、一揆勢鎮圧の費用を鐚一文びたいちもん出していない。全て侍所の宿老に押しつけた」

「一揆勢鎮圧の費用も現場任せとか……愚かにもほどがあります」


 奏は顔を顰めて言い捨てた。

 一応、侍所の大名も無償で働いていたわけではない。一揆勢から京洛を守る為、土倉から警護料を預けられていた。一揆勢を京洛に近づけなければ、警護料は侍所の収入に変わる。然し一揆勢の侵入を許すと、侍所は土倉に警護料を返さなければならない。それほど室町将軍家は、土倉に支配されていたのだ。


「その後も混乱が続いた。文安ぶんあん元年四月七日、延暦寺は西塔釈迦堂に立て籠もり、室町将軍家に強訴した。基礎的財政収支黒字化に固執する室町将軍家は、延暦寺の強訴に畏れ戦き、北野麹座の独占廃止を認める」

朝令暮改ちょうれいぼかい……」

「この決定に異議を唱えた北野麹座の神人じにんが、北野社に立て籠もり、室町将軍家も鎮圧の兵を差し向け、北野社を含む一帯を焼き討ち。京師の酒屋は恨みを晴らすかの如く、京洛で孤立した麹座を退け、麹造りを含めた酒の製造及び販売を独占した」

「既得権益の利権争い。報復の繰り返し。りがない」

「これが生長の徳政一揆と文安の麹騒動の概要だ。偖……此度の『構造改革』で室町将軍家と日ノ本の民。双方の資産は増えたか? それとも減ったか?」

「当然、双方共に減りました。徳政一揆や麹騒動の被害を差し引いても、『構造改革』の所為で畿内の民の資産が減少します。民の資産が減れば、基礎的財政収支黒字化目標を堅持しても税収は下がる。一揆勢鎮圧や麹騒動の時に財政出動をしなければ尚更。まあ……貧富の格差が拡大する前に、問題を解決しておくべきですけど」


 奏が苦々しく告げると、秤の銅銭が二枚消えた。

 室町将軍家の皿が残り四枚。日ノ本の民の皿も残り四枚になった。


「『構造改革』は失敗だった……という自覚もないまま、室町将軍家は次なる経済政策を打ち出した」

「またですか!?」

「畿内の諸勢力に対して、課税の見返りに各種産業の新規参入を認めたのだ」

総需要不足デフレの景気後退期に『規制緩和(自由化)』……」


 奏は頭を抱えながら、破滅の呪文を口にした。


「大山崎油座の衰退が良い例だろう。鎌倉執権家の治世より、大山崎油座は朝廷や六波羅探題から特権を授かり、荏胡麻の仕入れから荏胡麻油の製造及び販売及び流通を独占していた。足利義満の頃には、室町将軍家より諸々の特権を与えられ、大山崎油座は隆盛を極めた。然し室町将軍家が『規制緩和』を始めた為、他の商人も荏胡麻油の製造と販売と流通を始めた。当然ながら大山崎油座も反発したが、室町将軍家から『既得権益』やら『抵抗勢力』やら『無駄を省け』と罵倒されて、京師の地下人からも顰蹙ひんしゅくを買った。室町将軍家の思惑通り、『規制緩和』は強行……その結果、畿内の寺社と分限者は、安値で荏胡麻油を買えるようになった。『規制緩和』の波は油業界に留まらず、各種産業に波及していった」

「『構造改革』の時と同じ流れか」


 奏は口元に手を当てて呟いた。


「『規制緩和』は、一部の特権商人が寡占を始めて、物の値を釣り上げた時に行う政策。総需要不足デフレの景気後退期に規制を緩和し、強引に売り手を増やしても値下げ競争が始まるだけです」

「……」

「商人の値下げ競争が総需要不足デフレを長期化させ、物価の低下に引き摺られて、労働者の賃金も下げ止まらなくなります。典型的な総需要不足螺旋デフレスパイラルです」

「室町将軍家の経済政策は、他にもあるぞ」

「もう勘弁してください……」


 奏は両手で顔を隠して、許しを請うように言う。


「度重なる経済政策の失敗を受け入れられない室町将軍家は、新しい経済政策を思いついた。貿易の再開と秩序の安定――」

「……」

「唐との貿易を止めたから、室町将軍家の税外収入が激減した。ならば、唐との貿易を再開すれば、莫大な貿易利潤で基礎的財政収支黒字化に持ち込める」

「……」

「然し室町将軍家の目論見は外れた。貿易を再開しても、足利義満の頃ほど回賜金を得られず、唐物の商いも利が薄くなった」

総需要不足デフレが長引けば、分限者の数も減ります。当然、嗜好品を買える者も少なくなります。室町将軍家は、そんな事も分からないんですか?」


 奏は呆れた様子で尋ねた。


「そんな事も分からないから、悪魔崇拝者の妄言を真に受けるのだ。縦しんば理解できたとしても、国民経済を無視するだろう。国民経済の思想が世に広まれば、大凡の民を騙して儲ける事ができなくなる」

「三好長慶が『スマム』の翻訳書と『三好経世論』を出版するわけですね……」

「追い詰められた室町将軍家は、治安の回復に焦点をずらした」

「……」

「格差の拡大が治安の悪化を招き、悪党足軽の乱暴狼藉が問題となった。加えて嘉吉かきつの乱の間隙を衝いて、徳政一揆勢が侍所を打ち破り、京師を占領した」

「幕府軍が一揆勢に負けたんですか?」

「ああ、見事に負けた。『緊縮財政』で弱体化した幕府軍が、数万を超える一揆勢に勝てるわけがない。京に侵入した一揆勢は土倉を襲撃し、債務の破棄を要求。土倉が拒めば、銅銭や米を強奪し、債務の破棄を実行する」

「――」


 余談だが、一揆勢に敗北した侍所は、土倉に警護料を返還している。その額は一千貫。現代の価値で考えると、およそ一億円という処か。


「京師の混乱は、これだけでは済まない。一揆勢が京洛を取り囲み、京都七口の交通を封鎖した為、畿内から物資が運び込まれず、京師は放火と食料難で混乱の坩堝と化した。四面楚歌に陥った室町将軍家は、徳政令を発布した」

「――」

「一度徳政令を発布した為、室町将軍家もたがが外れたのだろう。分一徳政令という制度を作った」

「分一徳政令?」

「室町将軍家に借銭の五分の一を支払えば、武家も寺社も分限者も地下人も村落も債務を帳消し。基礎的財政収支黒字化目標を堅持しつつ、民を救済しようというわけだ」

「分一徳政令で債務者の負担を減らしても、今度は土倉の負担が増えただけです。土倉の遣り方は許せません。でも室町将軍家が土倉の損失を補償しないと、日ノ本の銭回りが悪くなります」

「分一徳政令は、余録のようなものだ。室町将軍家は、骨皮道賢ほねがわどうけんという足軽悪党の頭領に扶持を授けて、京師の検断を任せた」

「検断人の『民営化』……」


 奏は青褪た顔で、破滅の呪文を口にした。


「侍所の役人を増やすと、室町将軍家の支出が増える。ならば、侍所の役人を減らし、足軽悪党に小銭を与えた方が安上がり。虚氣の考えそうな事だ」

「足軽悪党を検断人に据えるなんて……余計に治安が悪化します。流石に京師の地下人も反対した筈です」

「然し室町将軍家は、反対意見に耳を貸さなかった。『蛇の道は蛇』やら『民間の力を活用しよう』と言い張り、検断人の『民営化』を断行した」

「――」


 奏は絶句する。

 現代の感覚で言えば、「東京の治安が悪化してきたけど、政府の支出が増えるから、警察官は増やしたくない。じゃあ反社会勢力に補助金を渡して、警察官の代わりに治安維持活動をして貰おう」という事だ。たとえ補助金を渡しても、反社会勢力が一般人を助けるわけがない。反社会勢力に上納金を納める富裕層なら助けてくれるかもしれないが、貧困層を助ける義理がない。寧ろ国家権力を背景に暴れ回るだけだ。


「それで京師の治安は?」

「さらに悪化した」

「ですよね」


 奏は真顔で言い捨てた。


「『規制緩和』と『民営化』……二つの経済政策で室町将軍家の資産は増えたか? それとも減ったか?」

「室町将軍家の資産も日ノ本の民の資産も減ります」


 奏が断言すると、双方の皿から銅銭が四枚も消えた。室町将軍家の皿に残された銅銭は二枚。日ノ本の民の皿に残された銅銭も二枚。


「『構造改革』、『規制緩和』、『民営化』……度重なる経済政策の失敗を認めない室町将軍家は、執拗に基礎的財政収支黒字化を目指した。地下人から棟別銭むなべつせん段銭たんせんや地子銭。湊からは津料つりょう。関所からは関銭せきせん。味噌や塩や紙や油や材木や反物など、分限者から地下人の生活に関わる物まで、手当たり次第に税を取った」

「景気後退期に『増税』……」

「勿論、京師の地下人も増税に反発したが……室町将軍家は『国の借金』やら『将来世代のツケ』と言い張り、景気後退期に『増税』を実行した。諸人の消費は落ち込み、国内総生産の低下を招いた」


 日ノ本の民の皿から、ふわふわと銅銭が浮き上がった。


「民より税として取り上げた銅銭……室町将軍家の皿に移すか?」

「……一時的に税収は増えますけど、景気後退期に課税の範囲を広げただけです。すぐに税収も落ち込みます。総需要不足デフレなら尚更です」

「ならば、室町将軍家の皿に移しても無駄だな」


 宙に浮かんでいた銅銭が消え失せた。

 室町将軍家の皿に残された銅銭は二枚。日ノ本の民の皿に残された銅銭は一枚限り。最後の一枚がなくなれば、日ノ本の民が全滅する。


「悪夢だ……」

「日ノ本の悪夢は終わらないぞ。景気後退と総需要不足デフレに苦しむ民に、長禄ちょうろく寛正かんせいの飢饉が襲い掛かった」

「詳しくお願いします」

「長禄三年に全国各地で旱魃かんばつ。畿内から西国に掛けて飢饉となった。翌年も旱魃と水害の連続。疱瘡ほうそう赤痢せきりなど疫病えやみの蔓延も重なり、飢饉の影響は全国に広がった。京師では、長禄三年に颱風たいふうが直撃。鴨川かもがわの氾濫で多数の民家が押し流されて、数え切れないほどの死者を出している。寛正二年には、大量の難民が押し寄せ、僅か二ヶ月で餓死者が八万二千人を超えた」


 飢饉の壮絶な内容に、奏は思わず唾を飲み込んだ。


「室町将軍家は何をしていたんですか? 黙って見ていたわけじゃないですよね?」

「困窮する民を救う為、飢饉対策の費用を計上した。久しぶりに大規模な財政出動だな。飢饉の対策費用は百貫」

「……冗談ですよね?」


 獺の話に納得できず、奏は語気を強めて尋ねた。


「戯れではない。飢饉の対策費用は百貫。銅銭が十万枚。緡銭さしぜにで九万七千枚。それが全てだ」

「百貫で足りるわけがない! 餓死者が八万を超えてるんですよ! 飢民きみんも含めれば、洛中洛外で数十万に達する筈です!」


 奏が声を荒げるのも無理はない。百貫と言えば、現代の価値で一千万円程度。僅か一千万円で、数十万の民を救える筈がない。


「それに足利義持の頃は、二百貫以上の予算を計上していました! どうして財政出動の額が少なくなったんですか!」

「その答えは、お前の目の前にある」

「――ッ!?」


 足利義持の頃は、室町将軍家の皿に銅銭が六枚も載せられていた。それが今では、二枚しか残されていない。基礎的財政収支黒字化目標を堅持しようが、政府支出を削減しようが、増税で税収を引き上げようが、室町将軍家の資産は減った。


「理解したか? もはや室町将軍家に、往事の資産は残されていない。室町将軍家第八代将軍――足利義政あしかがよしまさは、時衆の願阿弥がんあみに百貫を預け、六角堂の南に小屋を建て、難民や飢民に粟粥あわがゆを施し、連日八千人規模の救済活動を行った。然し餓死者は減らず、飢饉の対策費用も底をついて撤収。四条五条の橋の下に穴を掘り、十万を超す屍を埋めて、鴨川の河原に塚を築き、餓死者の慰霊を弔った」

「酷過ぎる……」

「足利義政を庇うつもりはないが……飢饉の対策費用を百貫から百万貫に増やせたとしても、餓死者の数を減らせたかどうか分からん」

「?」

「長禄三年に飢饉が起きた時から、悪魔崇拝者共が米の買い占めを始めたのだ。飢饉が長引けば、米の価値が跳ね上がると考えたのだろう。分限者が米の買い占めに走れば、室町将軍家も彼らに倣う。三管四職さんかんししょく政所執事まんどころしつじ御台所みだいどころや女房衆。畿内の寺社も米の買い占めに乗り出した」

「……」

「然し悪魔崇拝者共の目論見は外れた。飢饉が予想以上に長期化し、誰も米を手放さなくなったのだ。当然と言えば当然だが、深刻な米不足の時に銅銭を蓄えても、腹が膨れるわけではない。『銭高米安』が『銭安米高』に転じ、米と銅銭の兌換が難しくなる。米を買い占めていた悪魔崇拝者共は益々米を売り渋り、米の入手が困難になった」

「分限者の買い占めと売り渋りが、市場から米を奪い去った。飢民に粟粥を施していた理由はそれですか」

「勿論、単純に米より稗粟の方が、安く大量に仕入れられただろう。然し百貫を百万貫に増やした処で、悪魔崇拝者共が米を売るか……私にも分からん」

「それでも統治者なら、一人でも多くの民を救う為に、全力を尽くすべきです。それすらできないなら、統治者は民から見捨てられます」


 奏が決然と言うと、獺も静かに首肯した。


「お前の言葉は、政の本質を示している。たとえ室町将軍家が時衆を利用し、自分達にとって都合の良い情報を広めても、民は統治者の行動を『監視』している」

「……」

「悪魔崇拝者という言葉は知らなくても、当時の人々は理解していたのさ。足利将軍家が民から富を奪い取り、欲深い者共が富の偏在を生み出し、飢饉が起これば民を見捨てる。斯様な者共に誰が従う」

「君・臣・民の繋がりが絶たれる……」

「特に鄙の状況は、悲惨という他ない。颱風で家屋を薙ぎ倒され、河川の氾濫で田畑は壊滅。運良く被害を免れた田畑も、旱魃で収穫が見込めず、餓死者は増える一方。加えて疱瘡や赤痢が蔓延し、体力の落ちた村人が次々と死んでいく。京で餓死した難民も哀れだが……鄙の村落に比べれば、百貫でも銭を出すだけマシ。僅かでも粟粥を食わせてくれるだけ、鄙の村落よりマシなのだ。当然、室町将軍家や分限者に対する怨嗟は、諸国に伝播しただろう」

「民の怨嗟……」

「徳政一揆という形で、怨嗟を示す者もいただろう。然し大半の民は、身近な権力者に怨嗟の声をぶつけたのだ。『米(資産)を吐き出せ』と」

「……」

「村人の怨嗟が名主に。名主の怨嗟が地侍に。地侍の怨嗟が国衆に。国衆の怨嗟が守護代に。守護代の怨嗟が守護に。守護の怨嗟が三管四職……室町将軍家に向けられる。その結果、何が起こるか……」

「飢饉は大乱を起こす。応仁の乱の勃発……」


 奏が暗い声で呟いた。

 戦争の所為で飢饉が起こるのか。

 それとも飢饉が戦争を引き起こすのか。

 どちらも有り得るが、応仁の乱は後者であろう。足利将軍家の拙い政と度重なる飢饉で日ノ本の供給能力が壊滅寸前に追い込まれ、総需要も大幅に減少した。

 直ちに財政出動を行い、総需要不足乖離デフレギャップを克服。日ノ本の供給能力の回復に努める。それが国家運営の王道であろう。然し悪魔崇拝者に支配された室町将軍家は、大規模な財政出動を拒み、日ノ本の民を見捨てた。


「興福寺大乗院第二十代門跡――尋尊じんそんは、応仁の乱が起きた理由を説明できないそうだが……私は説明できるぞ。飢饉に苦しむ民の怨嗟が、室町将軍家の派閥争いを煽った。斯波しば氏や畠山氏はたけやまの家督相続問題。細川ほそかわ氏と山名やまな氏と伊勢いせ氏の対立。次期将軍職を巡る争い。理由は何でも構わない。大規模な合戦が起これば……米が食えれば、それでいい」

「統治者の無知が招く『緊縮財政』。大凡の民を貧困に追い込む『格差拡大』。外貨に目が眩んだ『自由貿易』。諸人を分断に導く『報道管制』。富の偏在を許す『市場原理』。悪魔崇拝の八大罪の内、五つを揃えている。此処まで来ると、手の施しようがありません」


 奏は指折り数えて溜息をついた。


「『全体主義』と『選民思想』と『罪務省』が欠けた事が、せめてもの救いか……まあ、八大罪が全て揃うと、日ノ本の民が一人残らず滅びるらしいからな。五つで済んでよかったかもしれん」

「……」


 奏は眉を顰めて、獺の戯言を咎めた。


「ともあれ、東方も西方も京に陣取り、短期決戦を目論むも失敗。町合戦まちいくさを続けながら、敵の補給を断つ為、京から畿内に戦火を広げた。足軽は乱取で兵糧を調達し、京師で焼き働きを始め……応仁の乱は、だらだらと十一年も続いた。両軍の総大将も停止ちょうじする術を持たず、細川ほそかわ勝元かつもと山名やまな宗全そうぜんは隠居。二人とも同じ年に死んでいるから、主君押込しゅくんおしこめから謀殺されたのだろう」


 主君押込とは、家臣が主君を廃立する事だ。

 中世の武家社会に於いて、主君と家臣の関係は絶対と言い難い。相互利益に基づいて主従関係を結ぶ為、家中の意志を無視する主君は、衆議により廃嫡される事もあった。

 細川勝元や山名宗全の場合は、双方の家臣団から応仁の乱の責任を押しつけられて、隠居に追い込まれた挙句、後腐れのないように殺されたのではないか。

 獺の推論だが、奏も同意見である。


「十一年に及ぶ大乱で、花の都は灰燼に帰した。日ノ本の民の資産は増えたか? それとも減ったか?」

「……日ノ本の民の資産が増えました」

「理由を訊こう」

「合戦を肯定する気はないですけど……合戦は銭を動かします。武具や兵糧の調達。要害や軍道の普請。家臣に与える恩賞。投資を怠ると、戦には勝てません」

「……」

「特に兵糧。両軍併せて十万近い兵が、京師に居座り続けました。足軽の乱取だけで、兵糧の不足を補える筈がありません。おそらく米を買い占めていた者達が、慌てて東方や西方に供出したのでしょう。欲深い悪魔崇拝者達も、銅銭や米を抱えて死ぬつもりはなかったんですね」


 奏の推測が正しいのだろう。獺は何も語らず、室町将軍家の皿から銅銭が一枚浮かび上がり、日ノ本の民の皿に移動した。室町将軍家の皿の銅銭は二枚。日ノ本の民の皿の銅銭も二枚。


「誰かの赤字は誰かの黒字。誰かの純負債は誰かの純資産。故郷を蹂躙された都人みやこびとは哀れですけど……室町将軍家の内部抗争のお陰で、室町将軍家の資産が京師の民に流れます」

「室町将軍家の資産が減る理由は、他にもある」

「?」

「十一年も合戦を続けた結果、京師の知識人や技術者も鄙に逃散したのだ。応仁の乱が終結した後、室町将軍家も秩序の安定に努めるが、都の復興は遅々として進まない。一方、飢饉で荒廃した鄙は、京より招いた知識人や技術者の力を借りて、供給能力の回復に成功した」


 再び室町将軍家の皿から銅銭が一枚浮かび上がり、日ノ本の民の皿に載せる。室町将軍家の皿に乗せられた銅銭は一枚。日ノ本の民の皿に載せられた銅銭は三枚。


「これより先は、誰もが知る通りだ。細川政元が下克上を起こすも、室町将軍家の資産を増やす事はできず。京師の土倉も衰退。三管四職も政所執事も没落。公方も逃亡と帰洛の繰り返し。三好長慶が『スマム』の翻訳書と『三好経世論』を出版した時には、もはや手遅れという有様。室町将軍家第十五代将軍――足利義昭が京より追放されて――」


 室町将軍家の皿から最後の銅銭が浮かび上がり、日ノ本の民の皿に移る。


「室町将軍家は高転び」


 室町将軍家の皿には、銅銭が一枚も残されていない。日ノ本の民の皿には、三枚の銅銭が載せられている。


「感想は?」

「悪魔崇拝者の末路……で済む話じゃないですね。あまりに多くの民が死に過ぎました」


 奏は沈痛な面持ちで告げた。

 因みに室町時代の幕府法は、徳政令や撰銭令など、政所関係の立法が多い。年次の明らかな四〇九条の内、三分の一ほどが徳政に関する事柄。土倉酒屋の営業や役銭。借銭や質物に関する法令を含めると、全体の半数に上る。次に多いのが、六十五ヶ条ほどもある手続法、証拠法。寺社への規制が三十五ヶ条。撰銭令が二十五ヶ条。禁制が十五ヶ条。安堵の手続きが七ヶ条。その他は、政所などの職掌の規定や人員に関する事柄だ。

 足利尊氏以降、特に足利義持と足利義教は、室町幕府法の整備に腐心していたが、商品貨幣論を信じ込んでいる為、総需要不足デフレ生産費用増大型供給能力不足コスト・プッシュ・インフレが長引いた。徒に徴税権力を強めただけで、室町将軍家の資産が増えたわけでもない。寧ろ日ノ本の民より先に、室町将軍家の資産が尽きた。室町御所は雨漏りを直す余裕もなく、灯りをともす油に事欠く有様だった。


「日ノ本の最大の不幸は、室町将軍家という上古じょうこにも例がない『小さな政府』が、応仁の乱から百年近くも続いた事だ。有事に対応できないばかりか、悪魔崇拝者や戦国大名に利用される」

「……」

「『小さな政府』ほど、悪魔崇拝者に都合の良いものはない。東では『新浪』が、『永楽銭が足りない』と騒ぎ立てる。西では『西村』が、『宋銭が足りない』と騒ぎ立てる。全国各地で銅銭どうせん泡詐欺バブルが起きても、『小さな政府』に悪魔崇拝者を止める力はない。室町将軍家が撰銭禁止えりぜにきんしを定めても、悪魔崇拝者は気にも留めん。銅銭どうせん泡詐欺バブルで儲けた銭で村落の債権を買い取り、強引に土地を奪い取る」

「……」

「困窮する村落は債務を返済する為、近隣の村同士で争う。挙句の果てに、戦国大名が村争いに介入してくる。室町将軍家に銭さえ渡せば、官位(諸国の統治権)を授けてくれるからな。戦国大名が鄙の土倉や有徳人から銭を借り、好き勝手に侵略戦争を始める。これでは、乱世が終わらない」


 獺は感情を込めずに、戦国時代の悲惨な実情を語る。


「乱世を終わらせる為には、『大きな政府』を創るしかない。日ノ本の民の寿と碌を安堵する政府。三好長慶然り織田信長然り豊臣秀吉然り……形は違えど、租税貨幣論を理解した者達は、『大きな政府』の創設を目指した」

「……」


 暫時、両者の間に奇妙な沈黙が流れる。

 奏は黙考しながら、『三好経世論』の写本を見下ろす。

 三好長慶は、自著で『悪魔崇拝者は、見つけ次第手討ちにすべし』と説いていた。初めて読んだ時は、「随分と過激な事を書いているな」と驚いたものだ。然し今なら、長慶の気持ちも理解できる。

 長慶が生きていた頃、室町幕府は悪魔崇拝者だらけだった。

 出世と銭儲けしか頭にない吏僚や政商が幕府を牛耳り、大衆媒体が堂々と嘘八百を並べ立て、日ノ本の秩序紊乱ちつじょびんらんを助長していた。

 悪魔崇拝者は、神国日本を汚す逆賊である。

 一人残らず根絶やしにしない限り、日ノ本に静謐は訪れない。

 中二病の長慶が、斯様に思い詰めても無理はない。勿論、悪魔崇拝者を殺し過ぎれば、生産と所得と支出を担う日ノ本の民が減少する為、結果的に経済成長率も伸び悩むが……それでも悪魔崇拝者を生かしておくなど、中二病の美意識が許さなかった。

 長慶の気持ちは理解できる。

 共感もできる。

 然し支持できない。

 賛同もできない。

 悪魔崇拝者といえども、同じ日ノ本の民だ。如何なる理由があろうと、同胞を粛清してはならない。やはり高野山へ追放が妥当であろう。


「此度の問答は終了だ。次は蛇孕村の話をしよう」

「蛇孕村の供給能力が高い理由ですね」

「加えて薙原家の高転びについてだ。覚悟はいいか?」

「はい――」


 奏が決然と答えると、獺の姿が霞の如く消えていく。

 現実世界の奏が、目を覚ましたのだ。




 後醍醐院……後醍醐天皇


 乗数効果……一定の条件下に於いて有効需要を増加させた時、増加させた額より大きく国民所得が拡大する現象。国民所得の拡大額÷有効需要の増加額を乗数という。


 交鈔……金王朝と元王朝が発行した紙幣。当時の世界通貨である銀と兌換できた。


 二十万貫の回賜金……現在の価値で二十億円


 およそ十五万五二〇〇貫……約582t。銅銭一枚がおよそ4g。


 景徳鎮……中華人民共和国江西省東北部に位置する地方都市。古くから陶磁器の生産地として有名で、唐渡りの陶磁器を景徳鎮と呼んでいた。


 梅園石……中華人民共和国浙江省寧波市郊外に分布する凝灰岩。日本に石造工芸の材料として輸出された。用途は灯篭、狛犬、船舶用バラスト。


 粗利益……売上から仕入れ値を引いたもの


 北山殿……花の御所。鹿苑寺ろくおんじ金閣。


 相国寺……永徳えいとく二年(西暦一三八二年)、足利義満が花の御所の隣接地に一大禅宗伽藍を建立する事を発願。竣工したのは、十年後の明徳めいとく三年(西暦一三九二年)である。応永六年(西暦一三九九)に建てられた七重大塔は、応永おうえい十年(西暦一四〇三年)に落雷で焼失するも、全高三六〇尺(109.1m)を誇り、日本で最も高い木造建築物だった。


 インバウンド……外国人観光客にお金を落として貰う事。現代の日本では、それ以外の意味はない。


 トリクルダウン……「富裕層が儲かれば、お金が流れて貧困層も儲かる」という主流派経済学者が考えた妄想


 争論……裁判の民事訴訟


 澆季……道徳が衰えた末世


 総需要不足乖離……デフレギャップ。本来の供給能力(実質GDP)が総需要(名目GDP)を上回る時、本来の供給能力と総需要の差を指す。総需要が本来の供給能力を上回らない限り、総需要不足から供給能力不足に変わらない。


 基礎的財政収支黒字化……税収・税外収入と国債費(国債の元本返済や利子の支払いに充てられる費用)を除く歳出と収支を黒字にする事。歳出を切り詰めて、税収を増やす事。非営利団体の政府を黒字にする為、民間や海外の赤字を増やす事。特に意味もなく国民を貧乏にする事。


 公方……征夷大将軍


 祈年穀奉幣練……平安時代から室町時代に掛けて、その年の豊作を祈り、伊勢神宮・賀茂神社・春日神社など、近畿の有力な二十二の神社に奉幣した儀式。足利尊氏、足利あしかが義詮よしあきら、足利義満は信仰心が薄く、国家的な宗教行事を重要視していなかった。


 応永二十六年……西暦一四一九年


 生産性……労働や資本など、生産要素の寄与度。或いは、資源から付加価値を産み出す際の効率の程度。生産性=アウトプット÷インプット=付加価値÷従業員数=(人件費+利益)÷従業員数。


 運上……荘園収入を遠隔地から中央の領主に貢納する事


 土倉酒役……京の土倉や酒屋に課せられた税。麹屋も税を課せられていた。


 地下人……一般庶民


 分限者……富裕層


 報道管制……悪魔崇拝者の信奉する八大罪の一つ。大衆に虚偽の情報を伝達し、報道管制を除く七つの大罪を浸透させ、人類を貧困に導いて滅亡させる。連日連夜、大量に虚偽の情報を発信する為、不特定多数の者を洗脳し、破滅的な行動に追い込む。


 応永年間……西暦一三九四年から一四二八年


 地子銭……京都の住民に課せられた税


 苫小屋……苫葺きの粗末な小屋


 侍所……鎌倉時代、室町時代に於いて軍事・警察を担う組織


 文安四月七日……西暦一四四四年五月八日


 神人……古代から中世の神社に於いて、社家に仕えて神事、社務の補助や雑役を行う下級の神職や寄人


 総需要不足螺旋……デフレスパイラル。デフレーションが延々と続く事。政府が財政拡大に踏み切らない限り、国民が全滅するまで終わらない。


 全体主義……悪魔崇拝者が信奉する八大罪の一つ。権力者(強力な徴税権力を持つものや莫大な債権を持つもの)に反対する存在を認めず、個人が権力者に異を唱える事を許さず、延々と『選択と集中』を繰り返し、人類を貧困化させて滅亡に導く。簡易に説明するなら、『一人はみんなの為に。みんなで一人をぶち殺せ』という主義。『全体を救う為に、少数が犠牲になるのも止むを得ない!』と喚きながら、全体を縮小させていくので始末に負えない。


 選民思想……悪魔崇拝者が信奉する八大罪の一つ。自分達は神(悪魔)に選ばれた民、或いは人種と思い込み、他民族や他人種を迫害・弾圧し、最終的に全ての民族を滅亡に追い込む。息を吸うように人種差別を行い、息を吐くように民族浄化を行う。特定の民族を滅ぼす為、特定の民族の女性を誘拐し、他民族の男性と強制的に結婚させて、強制的に他民族の子供を産ませる。


 罪務省……悪魔崇拝者は信奉する八大罪の一つ。この世全ての悪。


 嘉吉の乱……嘉吉元年(新暦一四四一年)に播磨・備前・美作の守護――赤松満祐あかまつみつすけが、室町幕府第六代将軍――足利義教あしかがよしのりを暗殺し、領国の播磨で幕府方討伐軍に敗れて討たれるまでの一連の騒乱


 京都七口……京都の七つの出入り口


 棟別銭……家屋の棟単位で賦課された租税


 段銭……臨時課税。国家的行事や寺社の造営や合戦など、臨時の支出が必要な時に地域を限定し、民から税を徴収する。


 津料……港に於いて停泊する船、或いは積荷に対して賦課・徴収される通行税


 関銭……関所を通過する者から徴収する通行税


 長禄三年……西暦一四五九年


 寛正二年……西暦一四六一年


 三管四職……室町幕府の官職である管領と侍所の所司(長官)に任命される家の事。三管領が斯波氏、細川氏、畠山氏。四職が赤松あかまつ氏、一色いっしき氏、山名氏、京極きょうごく氏。


 管領……室町幕府に於いて将軍に次ぐ最高の役職。将軍を補佐して幕政を統轄した。また幕臣の筆頭として、足利将軍家に於ける重要な儀式(元服・就任・任官関係)に参列して行事を執り行った。


 侍所……鎌倉幕府と室町幕府に於いて、軍事・警察を担う組織


 政所執事……室町幕府の財政と領地に関する訴訟を掌る職制。政所の長官。伊勢氏。


 御台所……日野富子


 国衆……室町時代の在地領主。戦国時代になると、守護大名の支配が衰微した地域で、国衆は城持ちの独立領主として存在し、やがて大部分の国衆は戦国大名の家臣団に組み込まれた。その一方、守護大名を凌ぐ勢力を持った国衆は、三好氏や毛利氏、尼子氏、長宗我部氏、龍造寺氏、田村氏のように戦国大名となる者も現れた。


 守護代……鎌倉時代と室町時代に守護の下に置かれた役職。室町時代に入ると、当初は守護の一門やその傍流、或いは重臣、または守護国内の有力武士(国衆)が任じられた。次第に世襲化していくと、守護に代わって実質的統治者と変わる。守護代は室町幕府より守護の白傘袋しろがさぶくろ毛氈鞍覆もうせんくらおおい、及び塗輿ぬりこしの格式に次ぐ、唐傘袋からかさぶくろ、毛氈鞍覆、及び塗輿の使用が認められる格式を与えられ、国衆よりも一等高い地位にあった。

 越後の長尾ながお氏、越前の朝倉あさくら氏、尾張の織田氏、阿波の三好氏、備前の浦上氏、出雲の尼子氏のように、守護代が戦国大名化した事例もある。


 町合戦……市街戦


 政所……室町幕府の財政と領地に関する訴訟を掌る機関


 手続法・証拠法……権利義務関係の実質的な判断の基準(実体法)と区別される、裁判で裁判所や当事者が遵守すべき手続きや証拠に関する法。現代であれば、民事訴訟法と民法の区別など。


 上古……歴史書で遡れる最も古い時代


 新浪……悪魔崇拝者。架空の人物。


 西村……悪魔崇拝者。架空の人物。

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