第20話 死闘
鬱蒼と生い茂る樹木の間を駆け抜けてきたのだろう。頬には枝を掠めた傷があり、着物の長い袖も破れている。
それでも大刀を構えながら、
「これは驚いた。よく此処まで辿り着けたねえ」
「儂は、大凡の者より眼が良くての。山育ちゆえ、獣の如く夜目が効く。松明の灯りが、儂をこの場に吸い寄せてくれたわ」
「暗闇の山中で地面に落ちた松明を見つけるなんて……妖怪より妖怪みたいだ。それに登場の仕方も中二臭い。二人で段取りでも決めていたのかな?」
「然に非ず。儂は御曹司を守護する太刀。難局にて太刀を使うは、当然の仕儀よ。なあ、御曹司」
「あ……はい、そんな感じです」
奏は慌てて首肯した。
言えない。
マリア姉が来ると信じていたなんて言えない……ッ!
他にも、なんで座敷牢から解放されたのかも分からないが……奏は空気を読んで、余計な質問を控えた。
「おおっ、獺殿も来ておったか」
複雑な心境を抱える奏を尻目に、朧は獺を見つけて喜んでいた。
「流石は中二病。予想の斜め上を行く。まさかおゆらより早く辿り着くとは……」
「予想通りに動く者など、中二病に非ず。それで……御曹司を拐かす不届き者は、お主で相違ないな?」
「相違ないよ」
「獺殿より話は聞いていたが……確かに中二臭いのう。儂と同類の臭いじゃ」
「それなら朧さんからも口添えしてくれないかな。ボクと朧さんの目的は一致している筈だ。奏様を蛇孕村から連れ出す。秀吉公の御子息を妖怪の呪縛から解き放つ――だろ?」
「御曹司、如何致す?」
「お断りします」
「――というわけじゃ。お主は儂に斬られて死ね」
ニヤリと凶暴な笑みを浮かべると、カチリと大刀の鍔を鳴らす。
「
「それがどうした?」
「――えッ?」
「何か誤解しておらぬか? 儂は御曹司の従者。然れど
戸惑う奏に背を向け、朧は躊躇なく断言した。
「せ……せめて針を抜いてください! 動けないんです!」
「経穴を射貫かれたか……針を抜けば、邪魔立て致そう。御曹司は、獺殿と検分でもしておれ」
「そんな……」
傍若無人な物言いに、奏は言葉を詰まらせる。
「折角の立ち合いに水を差されては適わぬ。手出し致せば、動けぬように手足を斬るぞ」
「方便……ですよね?」
「方便? カカカカッ、方便とな。丁度良い機会じゃ。儂の本当の目的を教えてやる」
背後に立つ奏に話し掛けながらも、
「儂の目的は、無限に続く斬り合いじゃ」
「――ッ!?」
「無限に続く斬り合いこそ、儂の望む生き方。御曹司の側におれば、
全身から強烈な殺気を放ち、
剥き出しの闘争心は、根源的な殺戮衝動に根付いたもの。もはや経緯など関係ない。今は亡き主君の下知も頭から飛んでいる。渡辺朧という武芸者は、ただ眼に映る敵を斬り捨てるだけの剣鬼と化していた。
「いやはや噂に違わぬと言うか……持ち主を守る代わりに、人の世に災いを齎す妖刀。奏様には不要だね」
「何を申す。三十三歳よりマシであろう」
「ふふふ。随分と威勢が良いね。でも体調が良くなさそうだなあ。死力を尽くした立ち合いの直後という感じだ。大丈夫かなあ?」
「気遣い無用。立ち合いに支障はない」
獰猛な笑みを浮かべるが、万全の状態とは程遠い。
少し前に殺され掛けたばかりで、夜闇の山中を十町も駆けたのだ。それでも闘志が疲労を吹き飛ばす。
「蹴鞠の
獺がぼそりと呟くと、
「符条さん……ワザとかい?」
「隠す事はなかろう。立ち合えば、すぐに分かる事だ」
妖怪と獺の遣り取りを見ながら、朧がクククッと嗤う。
「蹴鞠の
爛々と輝く双眸が、
多くの者は、蹴鞠と言えば、公家が嗜む雅な遊びを連想する。然し現実の蹴鞠は、そのような生易しいものではない。戦争で勝つ為に編み出された武術だ。実際、鎌倉期や室町期の武士達は、突撃の拍子や陣形の組み方を蹴鞠から学んでいた。
蹴鞠を家業とする
現代風に訳すと、『蹴鞠は、軍隊に囲まれても突破する事だ。武士の鍛錬に役立つ。頭の回転が速く、身体の動きは軽く、足捌きは自由自在。しかも病気にならない』というふうになる。
即ち蹴鞠の名足とは、戦場格闘技の名人という事だ。
悪魔的な武威を撒き散らし、朧の周囲が陽炎の如く揺らめく。おゆらとの立ち合いを中断した所為で、殺戮衝動を持て余しているのだ。誰かを斬り殺さなければ、無差別に他人を襲いかねない。
「おゆらさんが来るまで時間が掛かるし……ボクも中二病の端くれだ。一対一は嫌いじゃない。でも朧さんは、蹴鞠の極意を見せるほどの相手かなあ」
「――ッ!?」
仰天したのは、朧だけではない。
奏や獺も同様である。
武芸者の朧も、見た事も聞いた事もない武具だ。
「……薙原家伝来の妖術か」
「いや、違う。
朧の疑問に獺が答える。
慌てて奏が、その先を引き継いだ。
「マリア姉が暇潰しに開発した玩具です。確か微細動合金という特別な鉄で鍛えた刃で、少ない力で動かせるように改良したとか……」
「微細動合金は、人の眼に見えないほど小さな粒の集合体だ。一つ一つは小さな金属の粒に過ぎない。然し所有者の脳内で発生する微弱な稲妻を読み取り、その形態を自由に変化させ、ボクの思い通りに動かす事ができる。奏様の言う『小さな力』というのは、曲がり刃を動かす動力の話だね。背中の
一応、マリアから説明を受けていたが、うろ覚えの奏の代わりに、
「三年前にマリア姉がくれたんですけど、僕の手に余るから……御屋敷の蔵に押し込めておいたんです。いつの間に……」
「ボク好みの
うねうねと八本の白刃を動かしながら、
「先ずは肩慣らしだ」
八本の白刃が夜気を斬り裂き、一斉に襲い掛かる。
朧は体捌きで白刃を躱す。
白刃は地面に突き刺さり、真槍以上の貫通力を見せつける。
恐るべき曲がり刃の切れ味。
だが、それ以上に驚かされたのは、八本の白刃を躱す朧の体捌きだ。「太刀を太刀で受けてはならぬ。避け能う攻めは避けよ」と言われたが、半ば強弁だと捉えていた。然し変幻自在に動く八本の白刃を前に、朧は大刀で受け払おうとせず、黙々と体捌きだけで躱している。
その姿は、マリアの巫女神楽とは異なる。
長い髪や長い袖をひらめかせ、野性味溢れる乱舞に興じていた。争い事が苦手な奏も、朧の戦う姿に心が躍る。
「まさに獣の如き身のこなし。それに朧は多対一に慣れている。この状況が続く限り、手傷を負う事はなかろう」
獺が冷静に解説する。
鬼神の如き身体能力や
剣術の技倆は、勅使河原と互角か、彼の方が一枚上手だろう。ただ身体能力が異常に高く、疲労を補う闘争心と苦境を挽回する想像力を併せ持つ。
実に厄介な中二病だ。
大刀を振るう隙を与えない限り、朧から攻め込まれる事はないが、膠着状態を続けるのも癪に障る。
「少し朧さんを甘く見ていたかなあ。でも曲がり刃は、地味に
「――朧さん!」
「存じておるよ」
奏の悲鳴を受け流し、後ろに振り返る事もなく、くるりと後方に宙返りした。
それも身の丈に届くほどの高さだ。
後ろから迫り来る白刃の群れを跳んで躱し、朧は後方へ着地した。
奏も中二病同士の死闘に呑まれていた。
渡辺朧という武芸者は、これほどの実力を秘めていたのか……ッ!?
肉体を蝕む激痛すら忘れて、朧の戦いぶりに魅了される。
武芸者とは、戦場という血腥い舞台で殺し合いを披露する役者であると、彼女は断言していた。随分と物騒な物言いだが、今なら彼女の言葉も理解できる。
奏や獺は、朧の戦いを見物する観客に過ぎない。
これほどの強さを有しているのであれば、
「朧さんの実力を過小評価していたようだ。鬼神の如き身体能力と実戦経験に基づいた先読み。これは仕方ないなあ。蹴鞠の極意を見せるしかないなあ」
一般的に蹴鞠で使う鞠は、鹿革を
「――アレはッ!?」
取り出された球体を見つめ、奏は驚愕の声を上げた。
予想以上の速さで迫り来るが、所詮は鞠に過ぎない。
朧が左腕で弾き飛ばそうとすると、
「――朧さん! 避けてください!」
奏の声に反応して、朧は咄嗟に上体を反らした。
銀色の球体が乳房の上を通過し、後方の樹木に激突。耳を聾する破壊音を響かせ、金属の塊は樹木に食い込み、太い幹を薙ぎ倒してしまった。
「……なんじゃ、アレは?」
上体を反らした姿勢で、朧が眼を丸くする。
樹木を破壊するほどの重量と硬度を誇る球体が、脚力だけで飛ぶ筈がない。これもマリアが開発した玩具か。
「
傍観を決め込む獺が、ぼそりと低い声で答えた。
「蹴鞠玉……アレは蹴鞠に使う鞠なのか?」
「一向に蹴鞠が上達しない奏の為に、マリアが開発した玩具だ。重量設定記憶合金で錬成されており、普段は鞠の如く柔らかくて軽いが、所有者以外の物体が触れた刹那、重量記憶合金が空気流に漂う微弱な稲妻を吸収し、一時的に重さと硬さを鉄の塊と同等に変更させる。つまり必勝蹴鞠玉の所有者と蹴鞠をした者は、無事では済まないというわけだ。お陰で奏と蹴鞠をした際、私は右足を骨折した」
「あの時は、何も知らなかったんです! マリア姉が『この鞠を使えば、必ず蹴鞠で勝てる』と言うから、先生に相手をして貰っただけで――」
「とにかく危険物に指定されて、屋敷の蔵に封じ込めていた筈だが……」
「コレも蛇孕村を出る時に頂いたのさ。ボクも詳しい原理は知らないけど、必勝蹴鞠玉の所有者――ボクと奏様以外の者が触れたら、遊戯の玩具から危険な武具に早変わり。実に派手で
「……邪鬼眼蛇女め。次から次へと珍妙な物を造りおって」
むくりと上体を戻した朧が、忌々しげに悪態をつく。
「蹴鞠玉の真価はこれだけじゃない」
樹木を打ち砕いた蹴鞠玉が勝手に動き始め、蹴り飛ばされた時と同じ速さで、背面から襲い掛かる。朧は重心を崩しながらも、華麗な側面宙返りで躱してみせた。
標的を外した蹴鞠玉は、蹴り飛ばした本人の
「所有者が蹴り飛ばした蹴鞠玉は、何もしていなくても所有者の許に戻るんだ。蹴り飛ばした時と同じ速さでね」
「次は全力で蹴る!」
楽しそうに叫びながら、蹴鞠玉を蹴り飛ばす。
先程の一撃とは、速度も威力も段違い。銀色の球体が巨大化して見えるほど、恐るべき圧力で迫り来る。しかも大きさが異なるとはいえ、弓矢と同等の速さで飛んでくるのだ。
威圧感を覚えながらも、朧は紙一重で蹴鞠玉を躱す。
咄嗟に身体を反転させて避けるも、朧の美貌に冷たい汗が滲む。両者の間合いも、三間から五間に離れていた。
「どんどん離れていくなあ。ボクの蹴鞠玉に怯えているのかな?」
「
朧は傲岸な態度で首を鳴らし、朧は大刀を下げた。
「それに速さには、儂も自信がある」
背後で蹴鞠玉が大木に穴を空けた刹那、朧は紅の疾風と化した。一瞬で間合いを潰し、曲がり刃の包囲を潜り抜け、
単純な速さ比べなら、武芸者の朧が圧倒的に不利である。振り上げた大刀が、無防備な頭部に吸い込まれる直前、戞然と金属音が鳴り響いた。
「凄いなあ。間合いを空けていなければ、斬り殺される処だったよ」
弓手の龍腕で唐竹割を受け止め、
「それも蛇女が開発した玩具か?」
「コレは自前だよ。龍腕って言うんだ。
「何が龍腕じゃ。鷹の脚の剥製を蛇の鱗で装飾しただけであろう」
「その通り。でも朧さんに会話を楽しむ余裕なんてあるのかなあ?」
「――ッ!?」
八本の曲がり刃が、朧の身体に襲い掛かる。
無闇に接近し過ぎた。
とても全ての攻め手は躱せない。
左右から六本、頭上から二本。
全身を斬り裂かれながらも、蹈鞴を踏んで後退する。
さらに夜風を突き破るような勢いで、背後から蹴鞠玉が速度を緩めずに飛んできた。
後方を確認する余裕はない。朧は蹴鞠玉を躱し損ねた。長い袖を巻き込み、身体が独楽の如く回転し、仰向けに倒れ伏す。
「――朧さん!?」
「大丈夫。裂傷は全て浅手。蹴鞠玉も掠めただけ。朧さんはぴんぴんしているよ」
「……対手に手傷を見透かされるというのも、癪に障るのう」
血塗れの朧が立ち上がった。
全身に無数の裂傷を受けたが、傷は浅く出血量も少ない。問題は蹴鞠玉だ。軽く袖を掠めただけで、全身が蹴鞠玉の勢いに巻き込まれ、無様に転倒してしまった。
直撃は拙い。
頭部や胴体への直撃は、致命傷になりかねない。
「……成程。龍腕で接近戦を制し、中距離戦は曲がり刃の連続攻撃。後退する者は、必勝蹴鞠玉で仕留める。どれも中二臭い武具だが、戦い方は理に適う。この戦い方を続けていれば、確実に朧は体力を消耗し、曲がり刃を避ける事すらできなくなる。渡辺朧の命運、此処で尽きたか」
「――先生ッ! 馬鹿な事を言わないでください!」
真面目な少年が
「コレだ」
「「コレ?」」
二人と一匹は、言葉の意味が分からずに尋ね返した。
「あれ? 知らないのかい? ハットトリック宣言だよ」
「知らぬ。儂はバトルモノばかり読んでおった」
「ボクは熱血スポ根モノばかり読んでいたからなあ。その違いかなあ」
「先程はポストを掠めたという処かな? ボクも中二病だからね。勝ち方には、ボクなりの拘りがある。朧さんの身体に蹴鞠玉を三発ブチ込み、最後は龍腕で顔を引き裂いて殺そう」
余裕の勝利予告という処か。
対する朧も、ニヤリと口角を吊り上げる。
「ならば、儂も予告しておこうか。先ず自慢の必勝蹴鞠玉を斬り裂き、曲がり刃も一本残らず切り捨て、龍腕も粉々に叩き潰し、最後にお主の命を貰う」
どれだけ窮地に陥ろうと、絶対に自信を失わない朧。それどころか、喜んで自分の命を対価に危険な賭けをしたがる。
中二病を拗らせていない奏は、彼女達の価値観が理解できない。
それにバトルモノやら熱血スポ根モノやら聞いた事もない専門用語が飛び交い、二人の会話からも置き去りにされている。おそらく兵法の極意について話しているのだろう。門外漢ゆえに口を挟む事もできず、己の未熟さを悔やむばかりだ。
「どちらが
「勝負」
睨み合う朧と帑亞翅碼璃万崇。
帑亞翅碼璃万崇は、蹴鞠玉を右足の爪先で軽く蹴り上げると、大袈裟な所作で前方に蹴り飛ばした。
速度・威力共に、先程の全力に匹敵する。
だが、朧も一流の武芸者。
同じ技に二度も冷や汗を流すような醜態は晒せない。
たとえ弓矢に匹敵する速さでも、大きな球体であるがゆえに、飛び来る飛び道具を視認する事は可能。朧の動体視力と空間把握能力があれば、毫秒の差で躱しきれる。それは先程の攻防で実証済みだ。
だが、朧が身を屈めた刹那、
「――ッ!?」
蹴り出された蹴鞠玉が、中空で小刻みに揺れながら霞んだ。まるで蹴鞠玉が分裂したかの如く、左右に鮮明な残像を生み出し、眼前で軌道を変えて落下した。
「――ぐうッ!」
不規則に変化した落ちた蹴鞠玉が、朧の左太腿に直撃した。
蹴鞠玉が太腿の肉を抉るように食い込み、前方へ倒れ込みそうになるも、地面に左手をついて立て直す。
「無回転……鞠を揺らして落とす蹴鞠の妙技だ」
高速で胸元に戻る蹴鞠玉を受け止め、
「早くも一点目。その脚では、飛び跳ねる事はできないなあ。次は趣向を凝らすか……」
今度は右脚の上に載せた蹴鞠玉を、ふわりと浮き上がるように蹴り上げる。
「ほーら、
高く飛んだ蹴鞠玉は、美しい放物線を描いていたが、
「少し狙った場所からズレたなあ。その分、朧さんに動いて貰おう」
独り言を発するなり、
朧は必死に立ち上がり、襲い来る白刃に備える。
左三本の白刃が、朧の左側頭部と左腕と左脚の皮膚を斬り裂く。右三本の白刃は、一本を大刀の柄で受け払い、一本は強引に右膝で繰り返す。喉を狙う三本目は、後方に飛び退いて躱した。
「ふふふ。蹴鞠玉は躱さなくてもいいのかな?」
「――ッ!?」
咄嗟に上を向くと、二本の白刃が視界を封じていた。
目隠し……ッ!?
二本の白刃が左右に開くと、顔面の手前に蹴鞠玉が出現した。
鉄球並みの硬度を誇る蹴鞠玉が、朧の眉間に直撃。猩々緋の着物を纏う女武芸者は、無数の血の帯を伸ばしながら、力なく仰向けに倒れた。
「――朧さんッ!?」
「……大事ない。この程度でくたばりはせぬ」
朧の返事を聞いて安堵するが、楽観できる状況ではない。
「凄い石頭だなあ。大凡の者なら頭蓋骨が陥没している処だよ。でもボクの姿が見えているかい? 脳を強く揺らされて、どろどろに視界が歪んでいる筈だ」
左太腿に受けた負傷は、単なる打撲では済まない。大腿骨に亀裂が生じている筈だ。それに無数の裂傷が血液を奪い、蹴鞠玉の直撃で脳震盪を引き起こす。
次の一撃は躱せない。
「二点目も取れたけど……もう勝負は終わりかなあ。残念な終わり方だなあ」
「安心致せ。お主を殺す瞬間まで楽しませてやる」
広言を吐きながら立ち上がるものの、誰がどう見ても死に体。足下も覚束ない様子で、眼の焦点も定かではない。
やがて満身創痍の朧は、大刀を鞘に収めた。小刀を抜いて正眼に構え、左手を刀身の
朧らしからぬ防御の構え。
奏は唖然とするが、獺は心当たりがあるようだ。
「……蹴鞠玉を受け流すつもりか?」
受け流し。
剣術で最も危険な技だと、朧から教えられたばかりである。拍子が合わなければ、斬り合いの最中に刀が折れてしまうからだ。
うまく鎬で受けたとしても、刀身が曲がるかもしれない。
鍔迫り合いも滅多にやらないというから、一か八かの賭けみたいなものだろう。そして中二病の武芸者は、命懸けの博打を好んで打ちたがる。
「朧さんは本当に面白いなあ。受け流しの成功率を上げる為に、使い勝手の良い小刀に持ち替えたのか」
「……早く打ち込んでこい。お主の思い違いを正してやる」
がくがくと両脚が震えているが、傲然とした態度は変わらない。寧ろ自信だけなら、立ち合いの前より増している。
「それでは遠慮なく……普通のインサイドキック」
再び
朧は小刀を構えて身を退くが、全く違う方向に飛んでいく。
蹴鞠玉の行く先を視線で追うと、
「――がふっ!」
蹴鞠玉は、朧の背後に立つ奏の顔面に命中。どばりと鼻血をぶちまけると、凄まじい速さで所有者の許に戻る。
「奏様――ナイス・ワンツー」
最初から奏に叩きつけ、反射した蹴鞠玉で仕留めるつもりでいたのか。
奏ならば、本気で蹴鞠玉をぶつけても、普通の鞠と同じ柔らかさに戻るだけ。鼻血が出るほど痛いが、手傷と呼べるほどではない。
「童のお手本になるようなバイシクルシュート」
爽やかに言いながら、巻き込まれた蹴鞠玉を中空で蹴り飛ばす。
さらに速度を増した蹴鞠玉は、小刀を構え直した朧の美貌に直撃。折れた刀身が宙を舞い、朧の身体は後方に弾き飛ばされた。
「――朧さん!」
鼻血を垂らしながら、奏は悲鳴を上げた。
高速で戻る蹴鞠玉を胸で受け止め、
「受け流しは失敗。ボクの勝ちだ。まだ息があるなら、龍腕で止めを刺して――」
突然、
「クククッ」
地の底から響くような笑い声を漏らし、むくりと朧が立ち上がった。
「生きてたんですか!?」
「勝手に殺すな」
朧は小刀の柄を捨てて、大刀を抜き放つ。
「でも直撃した筈……?」
「斬り流しだ。私も初めて見た」
朧の疑問に、
「武芸者の間では、神業と称えられるほどの高等技術だ。打突の速さと刃筋を読み切り、敢えて打突に逆らわず、刃筋を立てて受け止める。打突の押し出す力を利用し、刃を当てて引く事で、対手の武具を切断する。それを飛び道具相手に見られるとは……」
獺は感嘆の息を漏らした。
包丁でも日本刀でも変わらない。刃物とは、押して引けば斬れる物だ。蹴鞠玉が押してくるなら、小刀を引き下ろせばよい。
言葉にすれば簡単だが、技の難易度は受け流しより遙かに上。実戦で斬り流しを成功させた武芸者など数えるほどしかいまい。
「いやはや凄いなあ。斬り流しなんて、ボクも初めて見たよ」
左右の龍腕を叩き合わせながら、朧の業前を称賛する。
「繊細な技術は苦手での。小刀が折れてしもうた。然れど捻くれ者ゆえ、受け流しを期待されると、それ以上の技を見せたくなる」
妖艶な美貌を汚す血を左手で拭いながら、朧はニヤリと嗤う。
素直に受け流した方が、遙かに容易で負傷もせずに済んだろう。小刀を犠牲にする必要もなかった。それでも己の美意識を貫き、不条理を喜んで受け入れるのが、中二病の本分である。
「心の底から尊敬するよ。朧さんは中二病の鏡だ。でも限界が近そうだなあ。太腿の骨が折れて飛び跳ねる事もできず、頭蓋にも亀裂が生じている筈だ。挙句の果てに、出血多量で満身創痍……とても戦える状態じゃないよ」
「試してみるか?」
ふんと鼻を鳴らし、
朧の動きに八本の白刃が反応した。一気呵成に躍り掛かり、朧の身体を貫いた……と奏と獺には見えたが、朧の姿が消えている。
「――どこだッ!?」
「やはりお主は思い違いをしておる」
上方から声を掛けられた。
朧が二本の曲がり刃の上に立ち、
垂直に五尺以上も跳ばなければ、到底真似できない芸当である。
「お主は武芸者を甘く見ておる。先程から骨が折れたやら血が出たやらと騒いでおるが、この程度の手傷で戦いを続けられぬのであれば、大凡の民と何も変わらぬ」
「――ッ!?」
「
曲がり刃の上に乗り、朗々と講釈する。
「畢竟、武芸者は肉体を鍛え上げねばならぬ。膂力や耐久力や持久力。打撃に耐える身体の強さも必要じゃ。『手足の骨が折れたから戦えぬ。血が出過ぎたから戦えぬ』では話にならぬ。武芸者失格じゃ」
しかも具足を纏わずに、関ヶ原合戦を生き延びたのだ。朧の肉体の強さは、常人とは比較にならない。
「それともう一つ。太刀は如何なる物も斬り能う。速さと刃筋が合えば、鳥居の柱だろうが、当世具足であろうが、硬くなる鞠であろうが、ヌルヌルと動く刃であろうが……全てを斬り裂く」
斬――と下段に斬り払うと、足場にしていた二本の白刃が斬り落とされる。ふわりと着地する朧。切断された白刃の先端が、蛇の頭の如くのたうち回る。
「――うおっ!?」
残された白刃で左右から同時攻撃を行うが、朧の動体視力は曲がり刃の速さを上回る。右腕で一本を弾き上げ、右肘で脇腹を狙う白刃を叩き落とし、大刀の柄で三本目を受け止める。間髪を入れず、弓手から襲い来る二本の白刃を切断。下段から迫り来る白刃を右足で踏みつけた。
「あと四本」
右上段の二本を斬り下ろす。
「あと二本」
返す刀で右下段の一本も斬り落とす。
「あと一本」
朧は上体を捻りながら躱し、踏みつけた最後の曲がり刃を斬り払う。さらに
「がらああああッ!!」
「ぐふっ――」
強烈な身の当たりを受けて、
朧は瞬時に間合いを詰め、大刀を振り上げた。
「三十過ぎて
「――朧さん!」
奏の声が、朧の動きを止めた。
「
「同じ事を二度も言わせるな。儂の邪魔を致せば、脚を斬るぞ」
「今すぐ切断してください。それで朧さんの気が済むなら」
神妙な面持ちを崩さず、凜とした声で言い放つ。
「彼女には、他にも訊きたい事があります。死なせるわけにはいきません」
「……それは下知か?」
「下知です」
「左様か。ならば、是非もなし」
不機嫌そうに言い捨てながら、朧は大刀を引いた。
奏は安堵の息をついた。
「命拾いをしたのう。御曹司に感謝致せ」
(♯∩$Σ∧¥$¥♯Σ――――ッ!!×100000)
意味不明な怪情報が、朧の頭の中で反響した。
十万を超す銅鑼が脳内で反響するような衝撃。
意識が混濁しても佇立していたが、朧の右手から大刀が落ちた。
「切り札は最後まで残しておくものさ」
のんびりと立ち上がりながら、
「一体、何が起きたんですか!?」
「『
「御名答」
二本の龍腕を叩き鳴らし、獺の推論を肯定した。
「『
「田中家の使徒は、数十名の歩き巫女に情報を送信できる。その気になれば、一人の歩き巫女に数十の情報を送信できる。でもボクは、田中家の当主を務めた使徒。他とは違う」
「……」
「ボクは十万の脳に情報を送信できる。一人の脳に十万の情報を送り込めば、相手は前後不覚に陥る。十万を超す叫声は、精神を打ち砕く雑音。一瞬で意識を奪い取る」
左右の龍腕を掲げて、
「そんな……僕が止めたから」
己の甘さに愕然とする。
真剣勝負の最中、思わず私情を挟んだ所為で、朧を窮地に追い込んでしまった。
「――先生! 今すぐ針を抜いてください!」
「獺に無茶を言うな」
一人と一匹の遣り取りに、
「ふふふ。奏様が気に病む事はない。この立ち合いを終わらせるだけなら、いつでもできた――というだけの事さ」
爽やかな笑顔で奏を慰めると、今にも倒れそうな朧に向き直る。
「然し凄いなあ。気絶しても立ち続けるなんて。その闘志に敬意を表し、一撃で楽にしてあげたい処だが……僕の龍腕は護身用の武具。あまり殺傷力は高くないんだ。申し訳ないけど、嬲り殺しで我慢してくれ」
朧を嬲り殺しにすべく、龍腕の鉤爪を振り抜いた。
だが。
手応えがない。
「――ん?」
頓狂な声を発した後、前を向いて瞠目する。
「あらら。舌を噛んだのか」
「かなり痛いがの。気つけに良いのじゃ」
朧は口から血を吐きながら、よろよろと後退する。
続けて追い討ちを仕掛けようと、馬手の龍腕が美貌に迫る。だが、踏み込みきれずに、鉤爪が朧の鼻先で止まった。
次の刹那、異変が起こった。
忽然と龍腕が伸びたのだ。
「――なにイイイイ!?」
咄嗟に上体を仰け反らせるも、両足に力が入らない。
朧は姿勢を維持できず、仰向けに倒れるしかなかった。
龍腕の直撃を免れたものの、左頬から赤い滴が零れ落ちる。
「……管槍ならぬ
「ボクの言葉が聞こえていなかったのかな? もう一度言おう。切り札は最後まで残しておくものだ」
地に伏した朧を見下ろし、
原理は管槍と変わらない。
袖の中で可動式の管を握り、自在に間合いを調整する。
尤も管槍と異なり、
然し朧が立ち上がろうとすると、不意に両膝から力が抜けた。反射的に前方へ両手を伸ばし、地面に倒れるのを防ぐ。
「毒か……」
急に目眩に襲われ、全身に苦痛の汗が滲む。
猛烈な吐き気が込み上げ、四肢の先端に痺れを感じる。
これが朧を動かし続けた理由――激しい戦闘で心拍数を上げ、血液の循環を速め、全身に毒を巡らせる事が、
「殺傷力が低いから、鉤爪に毒を仕込んでおいたよ。残念ながら、『これは痺れ薬だ。もはや指一本動かす事もできまい』みたいなオチはないよ。間違いなく致死性の猛毒だ」
残酷な現実を突きつけ、朧の腹部に蹴足を打ち込む。
「がはッ――」
「これは先程のお返し」
朧の美貌を鉤爪で掴み、無理矢理立たせて死相を確認する。
「――
「う~ん。やっぱりボクの方が――」
馬手の龍腕が、朧の肝臓を抉り抜く。
さらに左右の龍腕が無数の残像を描き、
「派~手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手派手――」
朧の身体をズタズタに引き裂いていく。
「と~ても派手だあ」
朧は大量の血液を撒き散らし、再び仰向けに倒れた。
口から血泡を吐き、苦悶の悲鳴すら発しない。
「朧さん……」
「予告通りに始末できて満足だ。これで邪魔者も消えた」
「さあ、奏様。ボクと一緒に福岡へ行こうか」
「常盤は……常盤はどうなるんですか!?」
「奏様と一緒に暮らして貰いたかったけど……余計な事を知り過ぎたからなあ。座敷牢で一人暮らしかなあ」
「結局、常盤も手駒の一つに過ぎないんですね……」
奏は唇を噛み締めると、
「純粋無垢な奏様。これが最後の助言だ。知る事は責任を負う事。伝える事は責任を分け合う事。覚悟を持たない者が、誰彼構わず情報を広める事は、罪悪の拡散と同義。薙原家で情報を支配してきたボクの戒めさ」
純朴な奏に忠告しているのか、思い込みの激しい常盤を哀れんでいるのか……どちらとも受け取れる言葉だ。
「
嬉しそうに笑いながら、軽快な足取りで近づいてくる。
血が滲むほど、奏は唇を噛み締めた。
これは当然の結末なのだろう。
中二病など夢のまた夢。
命の恩人を助けられず。
守ると決めた少女も救えずに。
強者の望み通りに頭を垂れて、己の意志すら持たず傀儡の如く生きていく。それが奏に残された唯一の道なのだろう。
「……そんなの全然、面白くない」
それは静かな言葉だった。
然し明確な決意を秘めた言葉であった。
「僕は認めない! 何もしないで諦めたら後悔しか残らない!
「……中二臭い口上よの。お陰で眼が覚めたわ」
いつの間にやら、朧が大刀を構えて立ち上がる。
「――朧さんッ!?」
「驚いたなあ……」
「なんで生きているのかな? 人を三度は殺せる猛毒だよ」
「生来、毒や薬が効きにくい体質での。命を落とすまで、もう暫く掛かりそうじゃ。カカカカッ……ごほごほッ!」
朧は血を吐いて、咳き込みながらも嗤う。
どうして、そこまで戦い続けるのだろうか?
恩人から与えられた使命だから?
斬り合いを好む武芸者だから?
それとも中二病だからか?
とにかく奏の理解を超えている。
「もう止めてください! これ以上動いたら、本当に死んでしまいます! 母の下知は、僕が撤回します! もう戦わなくていいんです!」
「先程の口上は
「それは……朧さんの命と引き替えにできるものでは……」
「儂を信じろ」
決然とした言葉が、奏の言葉を封じた。
「命の遣り取りで死ぬるは本望。太刀には、太刀の本分がある。折れて朽ち果てるのも覚悟の上。儂に本分を全うさせよ」
己の死地を定めた朧は、満足そうに嗤う。
「三十三歳。弓手に五歩進め」
「んー?」
「その位置では、御曹司を巻き込みかねん。弓手に五歩進め」
半死半生の女武芸者が、人差し指で弓手を指した。
「ああ、朧さんから見て弓手か」
朧は上体を丸めて、地を這うような姿勢を取る。炯々と輝く眼で対手を睨みながら、空いた左手で地面を掴む。
「覇天流秘太刀――虎ノ爪」
朧は掠れた声で言い放つ。
喋るだけでも苦しそうだ。
「最終局面で必殺技……良いなあ、そういうの。喜んで付き合うよ」
対する
致死性の猛毒が体内に入り込み、対手の余命は残り僅か。抑も疲労の極地で、奥義を放てるかどうかも怪しい。
さらに情報はないが、秘太刀の太刀筋は読めた。
全身の力を溜め込み、一気に解放――爆発的な速度で間合いを侵略する。それなら勢いを殺さない刺突しか考えられない。
対手の行動が読めれば、受け払うのも容易な事。胴を隠すように龍腕を交差させ、防御の姿勢を取った。龍腕は十手の代わりも務める得物。大刀の切先を受け払い、喉を抉り取れば、
凄惨な笑みを浮かべる朧は――
身体の震えを抑え込み、火矢の如く前方に飛び出した。
「消えた――――ッ!?」
初動から超高速に達した朧の動きは、符条の眼では捉えきれず、大仰に絶叫を発した。
驚愕したのは、
「――なんとッ!?」
この先は、一瞬の出来事である。
突如眼前に血塗れの女武芸者が出現し、思わず驚愕の声を発したが――朧は大刀を担いでいた。高速移動から急停止する脚力は認めるが、わざわざ減速して片手斬り。これでは逆効果だ。急停止などしないで、速さに任せて刺突を繰り出した方が、
弓手の龍腕を上げて、斜めに角度をつける。
これで打突の刃筋が狂う。
簡単に受け払えるだろう。
何かおかしい。
対手の眼前で放たれた打突。
――しまったッ!?
朧の思惑に気づいた時には、弓手の龍腕で大刀を受けていた。
大刀の刀身は、瞬時に掌の内で返される。
つまり峰打ち。
鋼鉄の鈍器と変わらない。
高速移動から急停止するだけの脚力が残されているなら、人を弾き飛ばすだけの膂力も残されているだろう。
――弾き飛ばされる!
馬手の龍腕も用いて抵抗するが、とても踏ん張りきれない。
「がらああああッ!!」
裂帛の気迫を込めた咆吼。
大刀の刀身が砕け散り、二本の龍腕も粉々になった。
仰向けで受け身を取り、起き上がろうとした刹那、どんと腹部に誰かが乗り掛かる。
朧だ。
転倒した
「これが虎ノ爪か……」
「虎はの。爪で引き倒してから、獲物に牙を立てるのじゃ」
超高速の歩法で先の先を取り、対手が防御の姿勢を取れば、片手の横薙ぎに変更する。単純な腕力勝負に持ち込み、対手を力ずくで転倒させる。先手を取られると、横薙ぎは左右に動いて躱せない。後方に下がろうとすれば、超高速の刺突で貫き倒す。即ち防御と回避のどちらを選んでも、先の先を取られた時点で勝敗は決する。
テイクダウン(相手を倒す)。
マウント・ポジション(馬乗り)。
ギロチン・カット(首斬り)。
合戦の倣いを極限まで突き詰めた技術。
それが覇天流の秘太刀――虎ノ爪だ。
「死ぬ前に言い残す事はあるか?」
「……一度でいいから、日本代表に選ばれたかった」
「待って――」
奏が止める間もなかった。
硬い石で顔面を叩き潰す音が、何度も響き渡る。
耳を塞ぎたくても、両手が動かせない。眼を瞑る奏の頬に、はらはらと涙が伝う。胸の中で様々な感情が絡み合い、心が麻の如く乱れていた。
死んだ筈の知己が、再び現れて命を絶たれる。
これほど酷い結末があるだろうか。
暫くすると、顔面を砕く破壊音が止んだ。
朧は石を捨て去り、ふらふらと幽鬼の如く奏に近づく。
「大事ないか、御曹司……」
消え入りそうな声で言うと、奏の右隣に倒れ伏した。
「――朧さん! しっかりしてください!」
涙ながらに、奏は視線を向けた。
朧の肌は青白く変わり、意識を喪失している。しかも四肢の先端が、小刻みに痙攣していた。医術に疎い奏でも分かる。毒物の末期症状だ。もはや朧が助かる見込みはない。それでも中二病なら、命が燃え尽きるまで抗おう。形振り構わず、無様に足掻く。最後の瞬間まで諦めなければ――
ぼろぼろと涙を流す奏の前に、
「すでに決着はついていたようね」
天下無双が悠然と佇立していた。
十町……約1.08㎞
名足……名人
鞠足……選手
一丈……約3m
三間……約5.4m
五間……約9m
五尺……約1.5m
長柄……長槍
太刀打……槍の穂先から
水月……
身の当たり……体当たり
二間……約3.6m
三間……約5.4m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます