第2話 中二病の日本史
中二病を知らずに、日本の歴史を語る事はできない。
中二病の起源は、南北朝時代まで遡る。
身分や出自に囚われず、奇抜な衣装で身を飾り、自由奔放に振る舞う無法者。下克上を肯定する者達は、室町幕府を創設した
室町幕府から弾圧された婆娑羅者が、本格的に中二病を拗らせたのは、婆娑羅禁止令の公布から二百年後。
島津半島の
当時、将軍は京都を離れていた。
その場に同席を許された
ザビエルが献上した品々は、将軍家を追放した長慶が狼狽えるほど、古今に例のない珍品ばかりだった。
さらにザビエルは、南蛮諸国で流行の音楽を演奏した。
後の世に
ザビエルは謁見を終えると、忽然と京都から姿を消した。
然しザビエルが残した珍品は、日本の文化人に多大な影響を
京都や奈良や堺の富裕層が、南蛮諸国の珍品を競い合うように買い集め、武家屋敷や寺社仏閣が渡来品で溢れた。蒐集家や知識人が
加えて南蛮文化の影響を受けた技術者が、見様見真似で異国の珍品を模倣し、渡来品に負けない名物を造り上げた。
例えば――
手先の器用な技術者が羽ペンを改良し、筆先の柔らかい万年筆を造る。万年筆を購入した絵師が、舶来の書籍や絵画に対向する為、旧来の絵本を新しい道具で描き直し、木版印刷の技術で大量に出版。これが富裕層の間で飛ぶように売れた。
誰もが知る
他にも
当初、
室町幕府を滅亡させ、畿内に新政権を樹立した信長は、
歴史に名を残す偉業と言えるが……中二病に話を戻そう。
時代の変化に伴い、婆娑羅者と
然し中二病の語源は、未だに解き明かされていない。
将軍に命を狙われた長慶が、室町御所に両手の中指を立てたという説。東大寺の大仏を焼き捨てた
他にも様々な学説が存在しており、根拠のない与太話を含めると、枚挙に
諸説入り交じるも、中二病の本質は『
戦国時代の地下人の生活を記した『繁殖期』には、中二病の言動が羅列されている。
「今川義元は俺の嫁!」
「武田信玄×
「【朗報】竜宮城発見! 浦島太郎『玉手箱は開けねーよ』」
「【悲報】
「震えて眠れ」
などと意味不明な供述をしており、
然し弱肉強食の戦国時代を牽引したのが、中二病である事も否定できない。
本能寺の変で信長が横死した際、中国大返しを決行した
信長や光秀と親交を深めていた吉田兼見は、『
一方、秀吉に臣従したばかりの
一部の
おそらく当時の人々は、中二病に畏怖と憧憬を抱いていたのではあるまいか。現代人には理解しかねるが、だからこそ興味深い題材である。
冗長な前置きは、これで終わりを迎える。
これから始まる物語は、度し難いほど中二臭い女達が、一人の少年を巡る殺し合い。
その顛末である。
天文二十一年……西暦一五五一年
足利親子……第十二代将軍家の
同朋衆……将軍や大名に近侍して芸能、茶事、雑役を務めた
筑前守……三好長慶の
塩硝……黒色火薬の原料
企鵝……ケープペンギン
象……インドゾウ
虎……アムールトラ
京師……首都。日本の京都。
地下人……庶民
応仁の乱……室町時代の
応永元年……西暦一四六七年
文明九年……西暦一四七八年
会合衆……豪商連合
徳政……債務返済の免除
租税貨幣論……通貨の成り立ちや通貨の定義に関する学説の一つ。「通貨とは、政府の徴税の対象物である」という考え方。
精選条々……通貨の兌換比率を定めた制度
楽市……徳政や徴税の免除と引き替えに、特定の地域に富裕層(経営者)と貧困層(労働者)を招く政策。他の地域から有形無形の財産を奪う政策。
楽座……座とは、平安時代から戦国時代まで続いた商工業者や芸能者による同業者組合の事。貴族や寺社に上納金を払う代わりに、営業や販売の独占権、
高圧経済……租税貨幣論に基づいて
織田信孝……織田信長の三男
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