4日目! ファンタジーの雷対策

 本日は『ファンタジーの雷対策』です。

 このコーナーは、テンプレートを中心に、よりリアリティを増すためにどうしたらいいか、というより俺氏が納得いかんところに理屈をつけるシリーズで、異論は認めます。


1)前説

 吾輩は常々疑問に思っていた。ゲームやらラノベではサンダードラゴンといった存在があふれているわけだけどね。あのさ、雷直撃したら死ぬだろうよ。どうやって勝つんだよ、こんなの。

 なお、この場合アンペア数が低いとかそういう話は前提としていません。何故ならドラゴンのほうも殺すつもりで出してるのだろうから低出力じゃ意味がない。つまり高電圧の雷対策の話だ。

 ということで今日は雷の性質について考えてみたいと思います。そういえばステータスでよく聞く耐性値。炎耐性とか雷耐性とかあるけれど、あれは体表面か何かが魔法的な力でコーティングされているものなのかな。

 毒耐性とか慣れでなんとかなるかもしれないものを除き、素体で考えれば、肉体がまさに肉である以上、素体の力で炎を防ぐことはできないと思われるのだ。

 それでだな。結局その身に直撃を受けると人は死ぬ。だから、方法は2つだ。地球世界の技術を前提にするなら、落ちても大丈夫な装備をまとうか、落とさせないか。


2)落ちても大丈夫な装備をまとう。

 ゲーム的に言えば防御力の高い装備をまとう、になるのだけれど、実際に雷を相手にするならば、防御力など意味がない。例えば鋼の鎧なんて通電が良すぎて裸以上にダメージを負うかもしれないし、隙間があればそこから通電する。防護には全身に雷が入らない物質を纏うしかない。

 雷をなんとかできる物質とは、簡単に言えば絶縁体だ。絶縁体を纏うのだ。

 よくある絶縁体としてはゴムなどがあげられるけれども、果たしてゴムで防げるのだろうか? そのためには絶縁破壊を考えなければならない。


 絶縁破壊というのは、絶縁体にかかる電圧が一定以上になった場合、絶縁体が破壊されてその性能を失い、電流が流れる現象をいいます。つまりそれぞれの素材に電気に耐えられる閾値というものがあり、それを電圧が超えてくると通電して被弾する。


 雷の電圧は約1億ボルトといわれています。

 そして天然ゴムの絶縁耐力、つまり絶縁破壊電圧は1~2万ボルト/mmくらい。絶縁破壊電圧というのは絶縁物を挟んだときに通電する電界強度をいいますが、つまり1ミリの絶縁物を挟んで電圧をかけた場合にどのくらいの電圧に耐えられるかという計算です。

 つまり1ミリで1~2万ボルト耐えるわけで、1億ボルトを耐えるためには天然ゴムで5000~10000ミリ、つまり厚さ5~10メートルの被覆で覆わないと雷対策としては不完全です。


 ……それで戦うのは無理でしょう。

 プラスチックや樹脂などのゴムより絶縁性能の高い素材もありはするのですが、それでも雷の前では誤差レベルに無力です。なので地球の絶縁素材では異世界で太刀打ちできません。

 けれども雷自体を操るサンダードラゴンや雷系統のモンスターであれば、おそらく高い絶縁性能を誇る皮革を有している可能性があるのかもしれません。また、日本にはない絶縁性能に優れた特殊な素材、完全絶縁素材なんかもあるのかもしれません。なのでサンダードラゴンを倒すにはサンダードラゴンの革を手に入れるという鶏が先か卵が先かという事態に陥りそうです。 

 とりあえず、地球の技術ではどうにもならなさそうです。


3)雷を落とさないようにする

 案外この方法が楽かもしれないと思っている。

 そのために雷の性質を考えてみましょう。

 雷とは何か。一般的に、ちょっとでも高くて細くて突き出た場所に落ちる、といわれますが、それには理由があります。

 雲、とくに雷を生み出す積乱雲というものは、上下に大きく広がっています。そもそも雲とは海や地面の湿気が太陽光で温められ、気化して上昇してできあがります。そして空というものは高いほど寒い。空に上るにつれてどんどん水滴が氷になり、重くなって地面に向かって落ちていく。ここで上昇する氷と加工する氷がぶつかり、静電気が発生、もう少し詳しく言えば小さな水滴にプラス電荷、大きな水滴にマイナス電荷が帯電する。そうすると静電気誘導(自由電子が移動し、電荷が偏る)の効果により、雲の下の方がマイナス電荷に帯電し、地表と雲の上の方にプラス電荷に帯電する。

 その電荷が大きくなり、引き合うことによって放電するのだけれど、雲中のプラス電荷とマイナス電荷の間で発生するものが雲放電(雲間に横走とかする雷)、雲中のマイナス電荷と地表のプラス電荷の間で発生するものが地上に落下する雷だ。

 ということは、発想としてはプラスとマイナスの電荷が引き合わないようにする、あるいは自分たちとは異なる地点で引き合わせるという方法が考えられる。


 ではその前に、雷がどのように落ちるかを考えてみよう。

 雲の中で発生したマイナス電荷が地表に向かってふよふよと降りてくる。これをステップトリーダーという。その先端が同じように地上からふよふよと立ち上がっていたプラス電荷と結びつき、ステップトリーダーが通ってきた放電回路を通じて雲に打ち上げられる。これをリターンストロークというのだけれど、これがいわゆる雷で、閃光と電流値が最も高く、速度も光の半分程度に至る。

 つまり雷というのは落ちるものではなく登るものなのである。


 という理解を前提に、引き合わないようにするにはどうすればいいかを考えよう。

 近辺のプラス電荷をなくせば、マイナス電荷と結びつくことはない。けれども電子というものは地表及びその近くの空中をふよふよ漂っているものなので、自分の周りだけ取っ払ってもすぐにプラス電荷が漂ってやってくる。

 これが例えば新しい電荷の流入を防ぐことができる場所であれば、湿度を上げるだとか、アースを取る(接地する)とか、イオナイザーでコロナ放電するとか色々方法があるだけれど、おそらくもともと雷が落ちるようなところでは切がなく、無意味だと思う。プラス電荷がない状態を保ち続けることは難しい。

 ところで現代にはPDCE避雷針というものがあり、それは大気に接する上向きの表面をマイナスに荷電させることによって、雲から降りてくるマイナスの電荷とくっつかないようにするものだ。けれども異世界ではその製造は不可能だと思う。


 では異なる地点で引き合わせる方法。これがいわゆる避雷針というやつだ。

 避雷針はより高いところに電気を通しやすい物質、導体を置き、地表に電気を通すものだ。最も電気を良くて通すものは銀だが、地球では銀は高いので銅が使われることが多い。だいたいの金属というものは電気をよく通すので、その中でより通すものを使用するのがよいでしょう。

 方法としては、予め設置しておくのがよいと思われます。

 例えばサンダードラゴンをおびき出して狩るのであれば、その予定スポットに人の身長より高い避雷針を罠として複数設置し、その安全圏の中から絶縁体を矢じりに用いた弓矢やスリングで攻撃する、あるいは返し付きの矢で射て引きずり下ろし、金属製ではない武器で倒すのがよいような気はします。

 問題はボス部屋などで待ち構えている場合。

 その場合はもう避雷針をその場で作るしか無いと思う。

 おそらく雷は静電気を纏いまくったサンダードラゴン又は雲などの雷発生源から生じるはずなので、その場で持ち込んだ避雷針を組み立てて設置するか、その雷発生源周辺で落雷が完結するように避雷針になるような物体、たとえば槍などを投擲するしかないのだろうか?

 いずれにせよ通電率の良いものを持つこと自体が被雷の可能性があるため、リスクが高いのだ。うちのノーマルエンドは狂ラックのキャラというある意味チートで被雷の可能性をクリアしたのだけれど、即雷撃(直接ではなく副次的に生じた雷撃)で死にかけてる。

 現地で避雷針を立てる場合は、それがサンダードラゴンに壊されないような機構を作る必要もありますから、研究が必要ですね。

 

4)それ以外の方法

 皆様の世界に魔法はございますでしょうか。

 魔法というものはげに便利なものでございます。なにせその定義はみなさまご自身でできるものですからね!

 そこで抜本的な解決方法を考えましょう。これまでは魔法を使わず現代技術でなんとかしようという試みでした。けれども魔法があれば違います。雷事態を打ち消すことができます。例えば風魔法雷雲の近くで同じように雲をわかせ、あるいは摩擦を引き起こしてプラスの電荷を大量に発生させれば、おそらく雷はそちらに落ちるでしょう。あるいは雷雲の湿度を上げ、マイナス電荷事態をなくす方法も考えられます。

 魔法ってなんて便利なんでしょうね? もちろん魔法が何に干渉するのかという理屈は腕の見せ所です。


 そんなわけで、第4回目は雷対策について考えてみました。次は何にしようかな。リクエスト歓迎です。

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