エピローグ
ー命の音ー
―2025年11月3日―
目が覚めると僕が寝ていたのはあの自然の中にある弓道場の芝生の上だった。暖かい日差しはいつもより強く僕をさしている。壁にかかった日付付きの時計を見ると今は11月3日の9時54分。僕は弓道着は着ているが弓は近くに落ちていなかった。
僕の生活感あふれるスペースに向かえばタイムリープで撮った
吹っ切れたわけではないので感情に反して涙が流れる。桜奈の死を受け入れたがそれをなかったように生活するわけではないので思い出を作ったのに泣いてりゃ本末転倒だ。
フゥ――――
無意識に思いっきり息を吐いて笑う。そうしないと思い出の中の桜奈が消えてしまいそうだったから。
僕が一人でそんなことをしていると外で車が動く音が聞こえる。窓からのぞいてみると父の会社のトラックが一台。プログレス護送用とでかでかとラッピングされているので間違いないだろう。
「影二元気か?」
急に現れて言った父は僕の中で何か心の変化をあったことを察したように話しかけてきた。内容的には僕をそろそろ下界に帰したいというもので勿論僕は是と答えた。
帰るといっても僕は一人で帰りたかったので荷物をトラックに積み込むと片道3時間半ほどかかる道のりを歩いて帰った。自分でもわかる以前とは違う軽い足取りでだ。
道中紅葉の美しい公園があったので僕は足を休めようと立ち寄る。田舎の公園ということもあり人は数えるほどしかない。僕はベンチに座って持ってきた72枚の写真を思い出と照らし合わせていた。
「……また会いたいな」
無理とわかっていてもそんなことは思ってしまう。
「ねぇねぇおにいちゃん遊んで!」
「こーら、お兄さん困ってるでしょ!すいません。」
ベンチに座って写真を見てたそがれている僕に声をかけたのは5歳くらいの女の子とそのお母さんらしき人だ。お母さんは丁寧に頭を下げている。
「いえいえ、全然お構いなく」
「このおねーちゃん、
「みく?」
「そう!わたし、
その子を見れば桜奈の生き写しに見える顔を持っていた。僕は思わずフッと笑ってしまう。未来ちゃんと遊んだ後には僕は記念にと二人で写真を撮った。
もし神様というものがいるのならば人をより良い方向に導くために苦労するのだろう。
あぁ、今日も今日とて僕は生きている。思い出の積み重ねが人を作り上げているのだろう。人は簡単に死に、残された人間には何も残っていないように映る。だからこそ今日というこの日を、今の瞬間というこの一瞬を聞き逃さないように生きるべきなのだろう。
あぁ、命の音を聞き続けることは最高だ――。
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