23ー3…2…1…ー
―2020年11月4日15:15― 桜奈の死まで74時間37分
ブォ――ホゥ―
街中ではあまり強くなかった風がここでは山間ということもあり強く吹きか開けている。
背の高い木々に囲まれるここは秩父市にあるアスレチック施設だ。ここでは5種類の体験ができ、僕らがやるのはそのうちの二つ。今は一つ目の橋を渡る体験をやっている。橋は100mほどの長さで、板が大きな隙間を開けて作られその間隔は等間隔ではなくどんどんと中心に向かって広くなっている。
「高いね!思っていた以上に怖い!影くん怖くないの?」
美少女が笑いながら怖いと言っているその画が恐怖だよと言ってやりたい。僕らは距離を離して桜奈が先に橋を渡っている。
「確かに命綱つけてるって言っても怖いね。さっき係の人が言ってたけどここは地上から54mの高さらしいよ。落ちないようにね」
「大丈夫だよ。さっき影くんが私の綱を念入りに調べていたんだから」
そう、僕は桜奈が今日死なないとわかっているが一応確認しておいた。だからこそ、ここに来るまではあまりの乗り気ではなかった。今は来てよかったと思えるけども、昨日桜奈に埼玉に行くと言った時にここに来たいと言われたときは嫌だった。
専用のベルトを着けている桜奈は初めてなので僕は写真に収めておいた。
「あぁ!!」
スマホの画面からリズムよく進む桜奈が消えた。絵であれば縦軸に平行な数多の線が桜奈の体に沿って引かれているような素早さをもって桜奈の片足を落とした。
命綱によって助かっているようだがすねたような顔をしている。たぶん僕がけらえらと笑って見ているからだろう。助けてよとも言わずに僕のほうを眼差しだけで訴える桜奈は落ちてもやはり可愛かった。
「はいどうぞ」
ゆっくりと歩いて近づき手を差し出すと拗ねたようにそっぽを向いて僕に拾われる。途中桜奈の力が強まった気がしたが気のせいであろう。
パシャッ
そっぽを向く桜奈も珍しいので僕はこれも記念に写真を撮っておく。強くも痛くないたたきを食らうがノーダメージだ。
ちょっとだけ寂しそうだったのでここからの40mは寄り添って歩いて行った。
ただ歩くだけのアクティビティだが疲れるもので僅かに休憩をとってから僕らは次なる体験をする。
次はこのアスレチック施設の名物であるバンジージャンプだ。高さ50mからのバンジーは非常に恐ろしいものがある。
「3…2…1…バンジー!」
前にいる大学生くらいのお客さんも泣きながら落ちていった。
「怖そうだね!」
さっきも思ったが美少女が笑いながら怖いって言ってる画がホラーだ。
「本当にやるの?」
「もうお金払ったんでしょ。やるよ二人バンジー」
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