22ー小動物のピピちゃんー

  カラカラン

 扉を開けると軽快な鐘の音が僕らをお出迎えした。

「いらっしゃいませ!二名様ですね!」

 ゆったりとしたテンポが遅めの曲が流れている店内。ケージに入った小動物に三面が囲まれている店内には中央に6つの丸いテーブルが並べられていた。ネズミっぽいのからカメまで沢山の種類の小動物が僕らを迎えていた。僕がそわそわしているのはもちろん、繋いでいる手から桜奈も落ち着きないのが伝わる。

「こちらへどうぞ!」

 案内されたのは入って右奥側のウサギコーナーに一番近い席。

「言っていただければお手に取ることもできますよ」

 お店のロゴが入ったエプロン姿のお姉さんは手首を曲げて手の甲を口に当てて笑いながら言っている。気づかなかったが無意識に僕は座るとあまりの高揚にきょろきょろと周りを見回していた。

 僕が思わず視線を逸らすと女の子の顔をした桜奈が何かの動物を出すことを頼んだようだ。

  ガチャガチャン

「どうぞ!ネザーランドドワーフのピピちゃんです!」

 小動物が手のひらの上にこんもりと乗ってる店員さんの声。桜奈が頼んだのは小ウサギだった。茶色の毛並みに真っ白なお腹。丸々と太っててピンと立っているちっちゃい耳が可愛らしい。

「うわぁ」

 店員さんの手から桜奈の手にピピちゃんが移された。目をキラキラさせている桜奈も小動物みたいなカワイイ美少女なのでカワイイ人が可愛いものを抱いているこの空間はかわいいで溢れかえっている。癒されすぎて幸せだ。

  ンン!

「耳が垂れた、耳が垂れた!」

「影くん、すごいにやけてるね。ピピちゃんも撫でられて嬉しそうだよ」

「嬉しい。鳴き声もかわいいね」

「さっきから可愛いしか言ってないじゃん」

「そうだっけ?」

「そうだよ。IQが3になってるよ」

 自分でも顔がふやけているのはわかっているがこの微笑みを止められない。桜奈の手に乗ったウサギは人に慣れているようでそこから離れることをしない。

「桜奈も触る?持つよ」

「ありがとう。じゃあお願い」

 手渡されたピピちゃんは人肌のような暖かさで気持ちがいい。特にお腹に熱が集まっているようでほっとするあったかさ。お腹が柔らかいのでぷにぷにっとした感触も心地よく僕にとっての最高峰のサンクチュアリと言っても差し支えないだろう。

「小動物ってもしかしたら世界救うんじゃない?」

「今更~。影くん気づくの遅いよ~」

 酒でも入っているのかと思うほど桜奈もクシャっとした顔になっていた。

 幸せな時間は過ぎ、ここでお昼をとると時間は2時ちょっと前になっていた。

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