day4
21ー秩父ー
―2020年11月5日8:11― 桜奈の死まで81時間41分
昨夜と打って変わって一面の窓から光を存分に取り入れている。朝日は降り注いでいた。
僕らは朝食をビュッフェ形式でとって出発の準備をしていた。
「今日は埼玉に行くんだよね。猫カフェだっけ?」
「そうだよ!写真で見たんだけど、中でもスコティッシュフォールドって種類の最近生まれた猫がいるんだけどマジでかわいいの!」
もふっ
「私的には影くんと一緒ならどこでもいいんだよ!」
「ありがとうね。気持ちは伝わるけどいきなり抱き着かないでよ」
今朝から桜奈のスキンシップが多い。これもその一つ。その証拠に朝一で唐突にキスをされた。別に嬉しいから良いんだけども人前ではやめてほしいと桜奈に伝えるも笑って返された。
「だって今日影くんが着てるパーカーの触り心地いいんだもん♪」
今までだったら抱き着くまで終わりだったが、今日はきれいに整えられた髪を僕にこすりつけて匂いを押し付けてくる。
距離が縮まったのは嬉しいことだがここからの4日間が辛そうだ。
―2020年11月5日11:22― 桜奈の死まで78時間30分
一般的な街並みに一般的な通行量。THE普通の町。
ここは秩父市。僕らは150分という長い時間をかけてやってきた。
「なんかここは見栄えがパッとしないね」
苦い顔で言っているが僕と同じことを考えていたみたいで少しほっとした。バイクを近くのパーキング場に停めて目的地の猫カフェ「らくらく~ん」に向かっていた。
歩くこと数分。到着したのだがどうやら不穏な空気をまとっていた。
近づいて確認すると扉にかかっている猫の看板は[closed]の文字を表しており、そこ下にはA4の紙が貼りつけてあった。内容を確認すると達筆な文字ででかでかとこう書いてあった。
『<お知らせ>
11/4(水)~11/7(土)の間私用の為連休なります。
迷惑をかけますがよろしくお願いします。 店主』
思わず桜奈と目を合わせる。
「え!?」
「え!?」
面白いことに声も合った。
「私用の為って一番面白い休み方じゃん」
「そうだね。せっかく来たのに休みなんて悲しいわ。死ぬほど働いてほしいよ」
僕らがちょっとだけ落ち込んだその足で踵を返そうとしたその時、僕の眼には一つの鮮やかに彩られたのぼり旗が目に入ってきた。
『ちっちゃなハムスター』
文字と共に可愛らしい絵が刺繍されたのぼり旗だった。お店としては小動物カフェだ。思わずくすっと笑ってしまう。
「そんなそっちがダメならこちらへどうぞみたいなことある!?」
桜奈も気づいたみたいで僕と同じようにくすくすと笑っている。
「ほんとだね♪」
僕らはそのままのテンションで吸い込まれるように小動物カフェ「ふれあいはりねずみ」に入っていった。
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