17ー心理テスト3ー
—2020年11月4日11:43— 桜奈の死まで102時間9分
「凪恒二さん!お久しぶりです!」
偶然と旅館で影二がぶつかったのは声優の凪恒二さんだ。とてつもないカッコよさを放って旅館のマークが入った浴衣を着こなしている。これが凪と同じく身長170㎝弱の影二ならば浴衣に着させられているという表現になりそうなくらいに難しそうな浴衣をだ。
「君は…誰だっけ?」
凪と影二は鏡写しの様に顔にしわを寄せ、同じように左右に頭を傾けている。横にいる桜奈が影二の耳元で何かを囁くと影二は自身の頭の後ろに手を回して白い歯を見せながら照れ隠しの様に笑った。
「すいません。会ったことはありませんでしたね」
僕がそう言うと白い右手を桜奈に向けて差し出す凪。それを見て影二が般若のような顔に変化しているのは言うまでもないだろう。桜奈と話を弾めて楽しそうにしていればどんどんと薄暗い紫色のオーラが漏れ出して可視化できるようであり、それに気づいた桜奈は乾いた笑いで凪と話し始めていた。
「君は会ったことなかったっけ?」
凪さんが実に気に食わない。顔に出ていたかはわからないがムカつくことに話を振ってきやがった。
「いや、僕はあなたに合ってないと思いますよ??それよりも俺の彼女にべたべたしないでもらえますか??あと、なんであなたはここにいるんですか??」
もっと言いたいことはあったが理性がそれを良しとしなかった。ぎりぎりの状態だ。それなのに凪のやつは笑ってやがるもんで僕は一周回って冷静だ。
「なに笑ってんですか??」
「いやいやごめん。その権幕が学生時代のすごくいい友達を思い出させてさ」
「そうですか??」
「君と会ったことがあると思ったけどその人と似てるだけだね。よく見たら顔の作りが似てるね。もしかして君って苗字渉だったりしないかな?まぁそんなわけないよね」
忘れていたがこの人は兄の事知っていた。ついでに兄さんがこの人のことを嫌っている理由をなんとなく理解した。考えていると頭の芯から冷えていって冷静になっていった。
「僕は渉です。」
「え!?」
「だから、僕の名前は[わたり]です。」
凪さんは口をつぐんで顔を前に出し、目玉も前に出ている。そして、そのあとすぐに菩薩のような顔へと変わっていった。悟りを開いたような顔をするなと口に出しても返事はない。その横で桜奈はそのギャップに右手でグーを作って小さく笑っていて可愛かった。
廊下のど真ん中で話していて、あまりにも邪魔になっていたので凪さんを連れて僕らの部屋で話すこととなった。
部屋は12畳の和室で、それに合わせて入り口の反対側には障子を挟んで細長いフローリングの空間がある。フローリングの上には背の低い机、それを挟んでこれもまた背の低いアームチェア。奥の面はガラス張りで前面から光を取り入れられる設計になっている。
「二人の時間を邪魔しちゃってごめんね」
「いえいえ。桜奈も僕もあなたのファンですからうれしいですよ。それに兄さんの友人に粗相はできませんよ」
影二は歯ぎしりしながらも話している。
「それでなんで凪さんはここにいるんですか?」
「明日前橋市でイベントをやるから前乗りしてるんだよ。そういえば来週上田に行くんだけど二人もイベント来てよ!」
桜奈が目をキラキラさせている中、影二はきっぱりと「その日は上田に戻らないので無理です」と断った。
凪は凹んだような表情を見せるとそれじゃあといった具合に話し始めた。
「二人に頼みたいことがあるんだけど、日曜日に話すことの相談に乗ってくれないかな?相談といっても話の内容として変でないかを確認してほしいんだけどどかな?」
影二が桜奈の顔を見ればコクコクと二回うなずき、二人は話を聞くことを了承した。
「ありがとう。じぁあ話すね。
今日は本当に呼んでくださりありがとうございます。いや~、上田はいいところだよね!戻ってきたいと常々思っていましたよ。そんな時にこのようなお話をいただいて大変感謝しています。関係各所の方々、ありがとうございます。でね、今日はね皆さんと心理テストして、それについた話をしようかな、なんて思っているんですよ。」
ごそごそとスマホを取り出してメモを見ているようでこの場所が信州上田だと錯覚するくらい台本通り喋っている。
「じゃ、さっそく始めましょうか。
では質問です。あなたの最愛の人が罪を犯し、死刑宣告をされました。そして、あなたが殺し方を選ばなくてはなりません。最愛の人は恋人でも家族でも、あなたが最愛だと認定できる人なら誰でもいいです。その場合どの殺し方を選びますか?四択ですよ。
① 浸死 出口のない水槽に放り込みます
② 服毒死 トリカブトをすり潰して煎じたものを飲ませます
③ 縊死 ひもで首を絞められます、現在日本で行われている死刑方法ですね
④ 震死 雷に打たれて死ぬことを指しますがここでは高圧電流を流します
因みにどの執行方法でもあなたが手を下すわけではありません。さぁ、どれか選んでください。時間は30秒とりましょう。」
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