13ーあれ?ー
—2020年11月2日13:07—
僕らは今第二物理室にいる。他には誰もいないので二人きりの教室だ。
「わぁ!おいしそうなお弁当!儚香さんの料理おいしそうだね!」
「美味しいよ、どれか食べる?」
「じゃあこの卵焼きちょうだい♪」
「じゃあ、どうぞ」
「どうぞじゃなくて……」
桜奈は口を開けて待っている。あー、あれだ。幻の存在だと思っていた「あ~ん」てやつだ。本当に二人きりでよかった…。
「おいしいね!」
目を輝かせてこんなことをいうものだから見てるこっちが恥ずかしくなる。
「影くんは今日の朝どうしたの?」
話そうと決めたもののなかなか切り出しにくく尻込みしていたが桜奈からその話題を振られたため正直動揺している。
フォッフ―――
僕は大きく深呼吸をして話し始めた。
「桜奈、真面目に聴いてほしいんだ。一切嘘はついていないから信じてほしい。僕は未来からやってきたんだ。もう既に十数回のタイムリープを終えていて………」
桜奈は話の序盤は笑って茶化すなどしていたがかくかくしかじかと僕の話が進むにつれて顔から【笑】の文字は消えていった。
「それで今朝なんだけどこの時間軸に来た時に耐えられなくなって気づいたら街中を走っていたんだよね。それでそのままの勢いでスタバに入ったら声優の凪恒二さんがいて、わずかな時間だけど話してたから学校に遅れた。でも凪さんと話してわかったんだ、僕は何度でも桜奈を助けて一緒に幸せになるってね。」
「ありがとう。……ありがとう」
たった二言、されど二言。この二言で透き通る深海にいる僕をわかりやすく引き上げてくれる。
「影くんは頑張っててくれたんだね。今日の影くんはいつもと違うな~と思ってたから合点がいったよ」
「そう言ってもらえるのは嬉しいな、違和感があったのは意外だけど」
そこからの話は早かった。僕らは11月8日19:52という運命の刻を乗り越えようと協力して努力した。そしたら案の定救うことができてしまった。しかもあっさりと…………
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